十話 使える力と使えない力
俺達は生きて帰ることができた。
1度は諦めた、死を覚悟した。
でも、由衣が俺を成長させてくれたんだ。
由衣のおかげだ。
俺は怒りで次の強さを手に入れた、それで奴を殺せた。
それだけ、でも、この1歩は凄まじくおおきい。
「輝?どうしたの?」
「いや、ちょっと考え事をな」
「考え事?なに?」
「その内色々はなすさ」
少しはぐらかす感じで会話をおわらせた。
「そっか、」
・・・・俺は、由衣の事が好きだ、好きになっていた。
「お帰りなさい」
「お帰りなさいませ、ヒカル様、ユイ様。」
レインとマルスは門の前で出迎えてくれた。
「うん、ただいま。」
「ただいま!」
俺達は馬に乗りながらそう言い、領内にはいった。
・・・マルスは俺たちをジロジロと見る。
「ヒカル様、ユイ様、強くなってますな。」
マルスは一目見るだけで強くなったと言ってきたので、
流石だな、と俺はそう思った。
「相手はかなりの強者だったのでしょう、ヒカル様は1度絶望を味わったようだ、またユイ様は死の淵に追いやられたようですな。」
これもまた、的確に当ててくる。
なに?心でも読めるの?悟りなの?
「はい、俺は諦めかけました、剣も置こうとしてしまった。」
「そうですか、ですが、ここに居るということは諦めなかったのですな?」
マルスは腕を組み、真剣な表情で聞いてきた。
「俺は貴方の言葉と由衣に助けられました。」
あの時、あの言葉と由衣が死にかけたことで俺の何かが外れた、そんな感覚がしたんだ。
「私は心にあることをそのまま言っただけですが。」
それが、凄いのだ、マルスはいつでも自分の騎士道を曲げない、それが憧れでもあるのだ。
「・・・・その言葉は俺を助けてくれたんです。」
そう、助かった。
闘え!!!
と、あの時大声で言われたのを思い出したとき、俺は、鳥肌が立った。
「・・・そうですか、ですが、それではもう強くはなれない。」
といきなり、強くなれないと宣言をされた。
なんでだ?意味がわからない。
「え、何故ですか?」
「わからないのですか、ではお話致しましょう、私と貴方では自身が持つ騎士道の心得が違うということです。」
「騎士道の心得が違う?」
まだ意味がわからん。
「私は貴方に私の剣を教えてきた、だが、貴方は自分の道を貫いた、私は剣の事だけを考え、それをレイン様だけに使うときめた、だが、貴方はユイ様、レイン様、その他の人々のために使うと決めた、これが貴方と私の違いです。」
「つまり、考えが違うのにいつまでも私の真似をしててどうする!ということです。」
また鳥肌が立った。力強く、心に響く声だ。
こんな人が学校の先生をやったら、俺はずっと着いていくだろうな。
とふとそう思った。
「わかりました、でも!あの言葉だけは、絶対に忘れない。」
忘れたくても忘れられないだろう、俺の脳裏に焼き付いているからだ。
「ふむ、では、自分の道を歩き、強くなりなさい。」
マルスはそう言いながら、後ろを向き、屋敷に入っていく。
その姿は陽の光があたり、凄くかっこよかった。
「輝〜!」
由衣はレインとの話が終わると、俺を手で招き、呼んだ。
「はいはい今行くぞ〜」
俺は小走りで由衣の元に行く。
「輝?あの時のやつ出来る?」
あの時のやつ??
ああ、あれか、出来ると思うが。
「ああ、多分出来るぞ、」
じゃあ、見して!とか、言うんだろう。
「じゃあ、見せて!」
ほら、当たった。
「はいよ、じゃあ、いくぞ、ダークブラインド。」
・・・あれ……なんも起きね。
「どうしたの?なんも起きてないよ?」
「ダークブラインド!!」
・・・だめだ、1ミリも強くなった感じがない。
「だめだね、何でだろう。」
由衣は少し残念そうに俺を見つめる。
「悪いな、なんか出来ねーわ。」
「うんん、大丈夫だよ!」
「由衣は出来るのか?」
「シャイニング・フォース!」
由衣の体を光が覆う。
出来ちゃってるじゃん。。。。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
なんでだ、俺のダークブラインドが発動できない。
まさか、あの時だけの必殺技!見たいな?
それって、ド〇ゴン〇ールのスーパーサ〇ヤ人が二回目から使えません!ってくらいきついぞ。
最悪だ。
有り得ないだろ、あの時限定って、それじゃあ、この先の強敵とは戦えないのか?
由衣はしっかり進化出来ているのに、俺だけ置いていかれるのか?
だめだ。それじゃあ、あの一年前に戻るだけだ。あの力は絶対に使えるようにしないと。。。
俺はこの日からまた熱が入った。