八話 絶望と進化。
・・・・・勝てるわけがない、
奴らに対してこう思うのは3度目だろうか、
最初は初めてこの世界に来て悪獣と遭遇した時。
2度目は半年くらい前に由衣とレインで行った第10使団の時、敵団長を見て思った。
そして今回だ。
圧倒な力を前に俺は無力だ。
一年間の修行は意味がなかったのだろうか、
迫ってくる敵を前に俺は死を覚悟し、思わず下を向いた。
「下を向くなぁ!!」
由衣は体を起こして叫び、ゴルゲールに向かって走る。
「シャインフラッシュ!」
ゴルゲールの顔の前に手を出し、激しい発光をさせる。
「!!」
ゴルゲールは目を潰され、足掻きに拳を振り回し、その拳が由衣の顔にはいり、今度は直接、顔に衝撃波を食らった。
ズゥガァァァン!
由衣は壁にめり込むように激突し、地面にうつ伏せになった。
・・・・・・・由衣が…………………死んだのか????
俺が無力だから、弱いから、由衣が、由衣が。
俺は由衣の元へ行かずに、奴を見た。
俺は『自分への怒り』と『奴への怒り』が混じり
俺は思い出す。
「・・・・・・何があろうと、敵を前にして剣を置くな、諦めるな、逃げるな、まだ闘えるのなら、まだ指が動くのであれば、立ち上がり、闘え!」
俺がこの1年で1番印象強かったマルスの言葉だ。
絶対に一生忘れないだろう。そのくらい強い言葉だった。
俺は剣を強く持ち、集中力を更に高める。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「相手がもしも実力が上だったらどうすればいいと言う質問ですか?」
「ああ、どうすればいいんだ?」
「さぁ、全ての攻撃を避ければいいのでは?」
「そんな簡単に言うなよな。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
すべて避けるか……やるしかないか。
「やる気になったようだな。」
「ああ、殺してやるよ。」
俺はそう言い、その場に敢えて立つ。
「どうした?来ないのか、ならばこちらからいくぞ!」
ゴルゲールは俺に突っ込んできて、激しく剣を振るが俺はそれを間一髪で避ける。
ずっとこれの繰り返しだ、
何か、いい案はないのか、由衣は倒れ、独りで何度も考える。
1つ思いついたが、出来るだろうか、だがこれに賭けるないとそう思った。
「シャドーバンプ!」
再び発動し、奴との間を空けた。
由衣は魔法を更に上の段階に上げていたな、俺にも出来るか?
否、やらなければ死ぬ。諦めるな、俺になら出来る、1年何をしてきた?地獄のような修練だろ?
こんな奴、マルスに比べたら全く屁でもない!
「ダークブラインド!」
俺のオーラは更に濃くなり、シャドーミストのように体を覆い尽くした。
これが、一段階上の力?
「ほう、それがどうした?」
ゴルゲールは俺の隙を狙い剣を振り下ろす
ガァギィィン!
俺は反射でその剣撃を剣で防ぐ、衝撃波、来る!
俺は奴の後ろにすぐに回り込む。
ズドォォン!
俺がいた場所には深い穴が空いた。
俺は瞬間で避けることができた。
間違いない、進化した、イメージだけだが、とんでもなく進化できた!
「さぁ、遅いなぁ。」
「くっ。こしゃくな!」
奴は激しく剣を振るが、遅い遅い、
さっきまではかなり早く感じたが、この力は、
体力消費は早いがその分、反射神経、運動速度をシャドーバンプの10倍以上は上げてくれている。
俺の力ではないが、この世界で授かった力だ、どう使おうが俺の勝手だ。
俺は常に先手必勝!
俺は奴の右腕を手始めに切り落とした。
「ぐぅぁぁ!!」
その声を待っていた。これは由衣が最初に吹っ飛ばされた分、
次に左足を切り落とす、これも由衣が最後に吹っ飛ばされた分、
そして、左腕を切り落とす。これは、食われていった人の分、
その時点で、ゴルゲールは8割意識はなかったのだろう、
次に右足、これは特にないか、
最後に首を飛ばし、この周辺は血の海になり、こいつの体の大きさを実感するほど血が出ていた。
俺は嬉しかった、こいつを殺すことができて、
そして、新しい進化に、だが、殺して気が付いた。
由衣はどうした????
頭に瞬間に浮かんだ。
俺は急いで由衣の元へ行く、
頼む生きててくれ、頼む!
俺は由衣の首筋に手をおく、、、
トクン、トクン。
血流だ、由衣は生きている!
回復薬、、あ、さっきのやつで最後。
まずい、由衣の奴もない、止血はしたが既にかなりの血が流れている。
ここからすぐ帰っても、1日はかかってしまう。
回復呪文を使えれば。。
「全く、何て有様かしら、死臭が強過ぎるかしら。」
この声は、ソティ??
「私が来た事に大いに感謝をするのよ。」
ソティは回復薬を持ってきたのだ。
「ソティ!どうしてここに?」
そうだ、ソティはここへ来る理由がない、来るはずのない人物が来てくれた。
感謝どころの話じゃない、大恩人だよ。
「ほら、これをつかうのよ。」
ソティは回復薬を俺に渡す。
「ああぁ!ありがてぇ!」
俺の目の前には女神が居る!
完全に女神だ、それ以外にない!
「ああ、よかった、どうやら渡せたみたいだね。」
遅れて、ソイルが入ってきた。
「あれ?ソイル?」
2人セットは当たり前だが、何故2人がここに来たんだろう。
でも、こいつらのおかげで由衣は完全に助かった。