竜の彼とのこの状況(3)
部屋は業者が全てやってくれたので、私は自分の手荷物だけトランクに押し込めばいい。
明日の朝、帆波さんが来て一緒にチェックをして完了。
「え~と、冷蔵庫は今のうちに電源落として……あっ、チーズとハムと卵、食べきれないな……残っちゃう」
面倒でつい出来合いのおかずとか買っちゃうし、ここ最近の私人気でクラスメイトと夕ご飯食べてきちゃってたし。
(まあ、私人気というよりガイ人気なんだけど)
クラスメイトに何の感情も湧かないなんて、自分でもドライだな、と思う。
(何でかなー、無視されていた時も特に哀しいとか辛いとか感じなかった……)
自分でも自分は冷めている 性質なんだと改めて知った日々だった。
「ガイ! サンドウィッチ作るから。余っちゃうから食べてよ」
キッチンから、リビングにいるエルガイラに声をかける。
エルガイラはテレビが気に入ったようで、部屋にいるときは地蔵のように画面の前から動かないのだ。
「いらん。飯食わなくても平気だと言ったろう。構うな」
テレビ見てるんだから邪魔するな、って態度。
「残ると困るの! 食べてよ! ついでに食パン買ってきて」
「俺は戦うのための竜であって、雑用するために甦ったんじゃないぞ」
「いいからいいから。あとイチゴミルクも。ガイも好きな飲み物買って」
「欲しくない」
「ガイなら、すぐそこのコンビニまで五秒!」
有無言わさずにカードを手渡すと、渋々だけどどうにか重い腰を上げてくれた。
(ほんと護衛と戦いしかしないな……)
エルガイラと過ごして二週間。
奴は、私のお守りしかしない。
異世界生物もあれから成りを潜めているようで、出現情報が来ない。
このまま出てこなくなれば良いな、と願うけど。
もしかしたら竜が復活したことで、警戒しているだけかもしれない。
今はとにかく目先のこと――私はベランダに出て、エルガイラがちゃんとコンビニで買い物できているか見守る。
私の血と感情を受け取ったことで、彼は今の世界の情報を手に入れたらしい。
生活面は私が経験している情報を元に、今の人間と同じように暮らせるとのこと。
だから私が経験してないことは、自分で学習していかなくちゃならないと話してくれた。
(まあ、十七の小娘の経験値だけじゃ足りないのは否めない)
無事に買い物袋を下げてコンビニから出てきたエルガイラを見て、私は手を振った。




