第1話、女神降臨ス
「姫様!準備が整いました!」
得意げに胸を張るフクロウの後ろには、気球のような乗り物が存在していた。妾の乗る乗り物にしては幾らか不格好ではあったがコレでしか下界に降りる手段はないとフクロウが必死に言うため妥協することにした。
「では……下界へ飛び立つの!」
「ほー!姫様の御心のままに!」
気合い入れのような茶番のようなやりとりの後に気球は飛び立った。
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「そういえば……。フクロウ、そなたは、その気持ち悪い図体で下界へと降りるつもりなの?」
「姫様!?さすがに酷すぎないです……?」
フクロウはショックを隠しきれない様子で目を見開いている。
まあ、仕方がない。事実なの。妾は優しいので現実を教えてあげただけなの。
しかし、フクロウは「ゴホン」と咳払いをすると、
「ご心配には及びません。ワタクシ、人型になる魔法を既に習得しています。」
と言い、呪文を唱え始めた。
「アウルアウール☆ピーポーピーポー!ヒューマンヒューマーーン!」
唱え始めると周囲が明るくなり始め、最後の「ヒューマーン!」の部分を唱え終えると、フクロウの体は光に完全に包まれた。
ーー光が収まると
そこに立っていたのはホストのような格好に漆黒の髪、とても整った顔立ちの男性がいた。どうやらコイツがフクロウの人間verらしい。
さっきまでのフクロウとは天と地ほどの差がある見た目になぜか少しだけ腹が立った。
「ご指名、ありがとうございま~すっ☆」
妾がイラッとしていることを知らないフクロウがドヤ顔で言い放った決めセリフは妾の寛大な心のダムを決壊させるには充分すぎる威力を持っていた。
なので、
「図に乗るな。なの。」
と、一言いうとフクロウに魔法をかけた。
「ぎゃぁぁぁぁぁ!!」
『ズバババッ』という効果音と共にフクロウは再び光に包まれ、そしてそれが収まるとフクロウは、ホストの見た目のまま、肩に乗るサイズまで縮んだチビキャラになった。
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「姫様!下界に到着いたしました!」
ミネルヴァの左肩にちょこんと乗ったチビキャラフクロウが叫んだ。
「ふぁぁ。ようやく着いたのかしら?
よし!妾の大冒険の、始まりなの!」
意気揚々と気球から飛び降りると、付近は見渡す限りの木々だった。
「ねぇ。妾の大冒険って未開の地を切り開く的な意味で言ったわけではないのだけど……?どうなっているの。フクロウ。」
「ほっほー。それはここが富士の樹海の中だからでございます!」
胸を張って説明するフクロウをジト目で睨んで妾は続ける。
「へー?なぜ富士の樹海に妾を連れてきたの?」
「野生って……いいですよね!ほっほー!」
「……死ぬ?」
「すみません嘘です。気球が人間にバレずに降りることが出来る場所だからです。」
「そうなのね。」と言うと妾はフクロウに強力な電撃系の魔法を浴びせてやった。
……しばらくズバババと言う派手な音と「ぎーやー!」という悲鳴が富士の樹海に響き渡った。
キャラクター紹介!
No.2、 フクロウ
性別、♂(オス)
年齢、?(人間見た目年齢は16歳)
趣味、家事、人間の世界について学ぶこと
備考、古くからミネルヴァに仕えている。
人間の世界については知らないことは何も無いと自負しているが、詰めが甘いのかどこかしら少しずつ間違った知識ばかり覚えている。しかも間違っていると本人は思っていないので自信満々に人に教える。