【出来損ない】
綺麗な月夜だった。星の海に輝く満月はまるで何者にも汚されない神聖で美しく見惚れてしまいそうな何かである。
きっとその輝きは自身が見た景色の中で一位、二位を争うだろう。
その並んだ存在はただ一人の少女。
最初は特別なだけの物だと思った。が、それが何故に特別かまでを知るには少しの時間が必要だった。
いや、時間を掛ければ掛ける程に輝きを増していく様を見て俺は惹かれてしまったのかもしれない。具体的に何処が、何がそう思わせるのかは上手くは語れない。しかし磨かれて増す光はいつまでも飽きさせないものを感じさせてくれたのだ。
人を変えるのは難しいかもしれないが、変わっていく人を見れば自ずと自分すら変わっていけそうなそんな希望が抱ける。
本人からしたら些細な事かもしれない。
だが俺には特別以上の眩しさを感じた。
もっと見ていたい。もっと見惚れていたい。
出来損ないの自身に可能性を感じさせてくれるとしたら彼女しか居ないだろう。
世の中には抗えない定めがある。どうしようもなく、最初から最後まで決められていたレールみたいな役割。抗ってどうにかなる以前の問題。ただ、それでも諦めなければ切り開ける未来があるのだと教えてくれた彼女。
未来。
果たして俺にはあるのだろうか?
こんな出来損ないの俺に。
そう耽っているととある語り声が聞こえて来た。
その語り主は問いかけてくる。
俺は問題はないと返した。
首尾よく上々だろう。恐ろしいくらいに上手くいきすぎていて逆に不安すら覚える程にーー。
いや、これは不安ではない。
もし俺にそんな資格があるのだとすればきっとこう抱くべきなのだろう。
罪悪感を。




