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◇旋律と蒼天のブライニクル◇  作者: 天弥 迅
始動
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−天才は何を以って天才なのか⑤−


あっさりと本日の演目は終了し、特に予定もなく宿泊施設に戻った私は今日の出来事を振り返る。


彼等の奮闘は予想以上で休むどころか、余計に気分が高揚して試合を棄権したことが悔やまれる結果となった。


素直に彼等は強い。私が見ていた姿がまるで嘘や演技じゃないかってくらい普段の実力とはかけ離れていた。


いや、実際そうなのだろう。単純に力量を比べる相手がいなかったのもあるが、彼等は欺いていたのだ。自身の実力を。底の力を。


きっとそれを引き出したのはへカテリーナ・フローリア。彼女の更なる真価が皆に火を付けたのだ。だから全力を出して戦い抜くだろう。すぐ目の前に強者が居れば自分の力を試したくなるのは道理。この私もそれに感化されているのだから。


もしダリアス・ミレーユが参加していたとしても、いや私も参加していても優勝を確信出来るかはわからない。


と、本日の試合でまた皆の実力を伺えたのだから多少なりとも観戦した甲斐はある。そして明日はシード戦の試合も見れる為、ようやく彼女の戦いっぷりも拝見出来る。


唯一ずっと気になっていた選手。


シルビア・ルルーシア。


同じ学園にいながら結局今日まで彼女の強さを推し量ることが叶わなかった。問題は推し量れないと言う答えはこれまでにあった記憶がない。少なからずどれくらいの才能や実力があるかは見抜ける筈なのに唯一私に分からない答えを提示させた。


九大貴族の一人であり、【絶対攻略】なんて大層な二つ名を持つ彼女。


きっと明日も楽しませてくれるに違いないだろう。


『おい、気持ち悪い笑い方してるぞ』

『………うるさいわね』


隣にいる青年にも伝わってしまうくらいに意外にもこのアズールを楽しんでしまっているのだろう。


そういや彼も同じ学園の生徒だからシルビア・ルルーシアについて何か分かるのではないか? 観察眼も私と同じがそれ以上のものを携えているし。


軽い好奇心で私は聞いてみた。


『そうだな………正直俺もパッと見た限りじゃそこまで目を見張る気配は感じないが、何か胡散臭いな』

『胡散臭いね………』

『あんたの方が身近で見てるから一番分かるんじゃないのか?』

『分からないわよ』


そう、何も分からない。何も分かっちゃいなかった。寧ろ今更全然彼女の事を知らないのに気付いたくらいだ。精々レミア学園の生徒会長であり、九大貴族であるシルビア家の次女。


そう言えばエイデス機関の一員にまで天才策士として知れ渡ってるとか聞いたわね。


策士か。


『思い出したわ。彼女は単独で反乱分子組織を壊滅させた経歴があったわね………』


それも魔法を殆ど使わずで、だ。どれくらい話が本当なのかも定かではないが、実績はあるようだし尾鰭が付くくらいなのだから全てが虚言の類でもない。


結局何者なのだろうか?


『シルビア家って所から掘り下げても良いかもしれないな』


彼の言う事に納得する。情報が集めるなら先ずは周りからだ。外堀を埋めてから隙間を探して入り込むような。普段はあまりしないやり方ではあるが、気になってしまった以上、明日までに分かる事は調べても良いかもしれない。それくらいなら悪魔を探すよりかは浪費もしないし、多少は気を抜き過ぎない程度には頭も働かせられるだろう。


『まあ、知らないって存在を相手にするのは肩書きが大きければ大きい程厄介だろうな』

『と言うと?』

『ダリアス・ミレーユを思い出せ。死なない理由ってカラクリが分かれば大丈夫だが、分からないってそれは凄い恐ろしい事じゃないか?』

『確かに』


あれも偶然私の魔法の効果から逆算して見つけ出したから分かったものの、あの魔法が無ければ対処のしようがなかった。

が、それは誰にでも当て嵌まるものである。寧ろ当たり前の事を言っているだけにしか思えない。


『向こうはどうだろうな。此方が探りを入れる頃にはもう知られているんじゃないか?』

『どういう事?』

『分かった時には盤上でチェックメイトを掛けられてるって可能性さ。俺はそこに【絶対攻略】って意味が隠されていると考えている』

『攻め手が分からない内に終わっちゃう訳ね………』


それが出来れば誰が相手でも負けない最強の戦法だ。策士って呼ばれるくらいだからそんな策略を張り巡らせた戦い方をするのは十分に有り得るが。


可能なのか?


こんな次の相手が誰かも確定していない勝ち抜き戦で準備期間も少ない状況で?


『当日になってみれば分かるだろ? 彼女が本物か、そうじゃないまた別の規格外か』

『………やっぱ彼女は苦手だわ』


もしアズールに私が参加していてもし一番やりたくない相手を挙げるとしたら真っ先に彼女を指名するのだろう。




「うーん、結局一通り調べて見たけどあまり詳細までは分からないわね」


把握出来るのは家系の歴史やら実績の情報くらいである。元々九大貴族ってのは公開情報が少なく、産業関係で何処に融資しているか、学歴、慈善活動内容や年間の事業予定くらいで内情的なものは一切どこもかしこもひた隠しにしている。隠していると言うよりかは公表してないだけだが。

まあ、神門家にアポ無しで突入した時もかなり未知な情報ばかりだったし、アースグレイ家も同じ九大貴族のオルヴェス・ガルムさんから聞いたのだからかなり懐に潜らないといけない訳だ。何の名家でもない一個人が調べたところで一個人の知識しか得られはしない。

なら彼女も条件的にはーーって彼女も九大貴族なのを思い出して溜め息を吐く。


「実際手合わせしてる姿すら見たことないから本当に聞いた一部の話と雰囲気でしか分からないわね」


それも策士としての振る舞いから来るのだろうか? 生徒会長と言う役割ももしかして情報的な一環で席を置いているのか?


「考えても仕方がないわね」


詰まるところ明日を迎えてからしか分からない事が分かった私はこの辺りで就寝に入る。大分この前の激闘の傷や疲れは癒えては来たが、心労だけはまだまだ回復はしていない。やはり心配事が付き纏うから気を抜くのが出来ない為だ。せめて悪魔が動き出すまでに平時の状態になれば御の字だろう。


と考えながら私の意識はあっさりと落ちた。


よほど疲れているのは言うまでもない。




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