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◇旋律と蒼天のブライニクル◇  作者: 天弥 迅
始動
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−天才なんてたかが知れている②−


「もうどっちを選択しても難易度は変わらないのかもしれないわね」


色々と腑に落ちない気分になりながら自身も傘をさして歩き出す。

強い雨に街灯も弱々しく見える暗闇の夜の街は人気があまり感じられない中、とにかく先導する先輩の後を追う。少しでも離れると見失いそうなので離れ過ぎずに。


「理想はエイデス機関の連中に外周辺りから起点の場所に向かって包囲を縮めていくやり方を実行して、こっち側で絞った場所で動きを待つのが理想だな」

「何かあっても援軍は素早くたどり着ける訳ね」

「ああ、無闇やたらに探すよりかは効率的だ。人数次第だが、向こう側で何か見つけ出したら数人もいれば対処出来る筈だ。大元を叩くのに比べたら危険性は低い」

「間違いないわね」


ただそれはその場所を明確にしなければ成立しない手だ。大分範囲は狭くはなって探しやすいが、光明巧みに隠している可能性は否定出来ない。

果たしてそれはどこなのか?

いや、これまでの情報を元にすれば大方場所については見当がつく。

そして細身の男性もまた少ない私の説明から同じ答えに辿り着く。

私達は雨が降る夜道で立ち止まり、同時に解答する。


「アズール試合会場ね」

「アズール試合会場だな」


依然に堕天のルーファスと対峙した時の会話ではどうやら魔王復活の為に優秀な魔導師を狙っているようだった。良質な魔力を持つからか何なのかは分からないが、行方不明になった人達の件数を考えるとかなりの礎が必要と考えられる。ならば、魔武闘会が行われるアズール会場を狙うのは必然的とさえ言えよう。出場する選手達も加え、観戦する者達にはエイデス機関の人や各国のお偉いさんを警護する人などあらゆる逸材級の魔導師が一箇所に集まる訳だし、術式の規模も踏まえたら大人数が集まる時期のセントラル全域を利用するのだ。そんな起点の場所なんて中央に位置する会場に決めるのは予想出来る。


押さえる場所がそこなら後は皆既日食の日までにどれだけ仕掛けの存在を見付け出すかだ。多分複数の陣を綿密で高度に隠し、当日を成功させたいだろう。

そこまでの企みは読めた。


「問題はいつ姿を現すか」

「あの見晴らしの良い場所にのこのこ姿を見せるかは疑問だな。観客に紛れるのか、何らかの魔法で擬態するのか」

「………分からないわね」

「後はそもそもがそんなことをしないで何も起こらないまま終わるか」

「いえ、それはないわ」


無言でユリス先輩は自身を一瞥してから再び歩き出す。

言い切れる理由はある。が、中身がとても話せる類いのものではない。それくらい突拍子のない妄想染みていて、下手したら私の頭がおかしくなったとすら思われてしまう。

しかし確かにある女性は言っていた。予見していた。

それは今の所外れてはいない。


ーー見上げる空は昼間なのに暗天になるだろう。


もうあの言葉を聞いてからひと月経とうとしているのだ。

そしてその日とは皆既日食。これだけならば私もここまで断言したりはしないが、未来予知の出来るあの魔女の話には続きがある。


ーー更にその後、世界はかつてない危機を迎えるだろう。


切り分けているのが気になるが、やはり世界を危機に瀕させる事柄なんて魔王の事以外有り得ない。冥天のディアナードの時でさえ予見はしなかった。あれだけの化物ですら世界に歪みを招き兼ねないのに浮上しないなんてやはり今回の件がそれだけ重大なのだ。

カナリア・シェリーは身を以て思い知った経緯もあるからなだけにこの話を信じざるを得ない。

ただ周りからすればそれは狂言にしか聞こえないだろうが。

もしかしたら前を歩く彼ならば信じてくれそうな気もするがーー。


「まあ世界の危機を数字で判断している場合じゃないな。可能性があるなら安心出来るまで尽力するしかない」

「………」


特に問いただしてくる事もなく彼は協力する意思を見せた。

別にそれなら無闇に理由を告げる必要もないか。


「で、先程の続きだが」

「え?」


何とも絶妙な合間で脱線していた内容についてまた話を進め出す。取り敢えずは必ず仕掛けて来る前提な様子で考察するようだ。

と言うことは一体どうやって会場内に姿を現すかだ。自身を自身でないと悟らせて浸入するのはかなり難しい。例え変身しようと姿を視認出来ない魔法を使おうとあの場所で異変を全くないようにするなんて正直私でも自身がない。

もし可能だとするなら一体どんな方法があるだろうか?


「少し順序を逆にして考えてみようか」

「逆?」

「失敗するにはどうすればいい?」


面白い考え方だ。普通は成功する為には若しくは失敗しない為にはを模索して決めるが、この場合はまた意味が変わって来る。まあそれも踏まえての成功への道筋にするから結局は過程の一つではある。

つまり失敗する方法が分かればそうしないようになんてある意味当然の考えだ。

だから一回最初から無理だと決め付けて思考を疎かにしないでいこう。多分穴があるのだと彼は言いたいのだろう。


先ずは視認させない透明になるような魔法を使って身を隠して入り込む案。

単純な浸入としては難易度は低い。だが浸入してからの滞在は困難を極める。幾ら視認出来ずとも気を配れば見抜ける人材は多数いるのだ。特に当日はアリスさんも見張りに入るだろうし見落とす筈がない。結果、失敗する。

ここから失敗しない立ち回りをするには皆既日食ギリギリに会場外から飛び入りして魔法を使うしかない。ただそれは術式の準備が事前に済んでいないとすんなりとはいかない。直前になって使うならある程度の時間を必要とする可能性があるからその瞬間を絶対に周りが無視はしない。だから予め浸入してバレないように準備するしかないのだ。

なら準備は数日前から施しておくのはどうだ? いや、不正防止の為に毎回試合前には入念に会場内の確認をすると聞いている。多分それで発覚するだろうからやはり現実的じゃない。

結局視認出来ない手段には成功する条件は整わない。仮にそんなやり方事態が非現実でこちらもごめんだ。

次に変身して紛れる方法。

正直これも大体が前者の内容に重なる。ただ、変身魔法の場合は高度な力量の場合は見抜けにくい。前にあった魔天のエルドキアナにもいっぱい食わされた。違和感なく紛れたらかなり厄介だ。怪しいと意識しなければ分からないのが利点である。しかしこの場合は浸入するまでが大変なのだ。会場に入る前に一人一人を確認するやり方が主だからそこを通過していくのが問題。会場内に入れる人物は一般枠は少ないし、後は出場校の学生の一部、または教師陣。そして各国の主要人物達くらいだ。そこを全て把握してアズール当日までに誰かを抑えて変身しないと駄目だ。かなり手間が掛かる上に動きが制限される。怪しいと意識されたら駄目だから変身した人に成り切った行動が必要。特に個人で会場内に入る人物はまずいないから少なからず誰かと一緒にいる。故に個人でこそこそ動いていたら容易にバレる。

だけどーー。


「それだな」

「まさか………」


考えていなかった訳じゃない。しかしユリス先輩の予想に従うならば中々な事案だ。

何故ならーー。


「きっと裏で手引きしてる奴がいる。しかも人間側の方でな」

「待って。それじゃあ………」

「基本的な警備体制とか進行は筒抜けだろうな。向こうにはかなりの部分まで把握されていると考えたら良い」

「かなりの大問題ね。裏切り行為で世界を敵に回すつもりかしら?」


いや、実際世界を敵に回している裏切り者は存在する。まさかこの件を手引きしているのと封印を弱めた者は同一人物なのだろうか?

どんどん事態は悪い方向に進んでいるような気がしてきた。正に悪魔に魂を売ったなんて言葉がお似合いだ。

だがこれで狙いは自ずと絞れて来る。


「誰かが協力しているなら容易に浸入も難しくないし、身を隠すのも簡単だ」

「だけどその分怪しい人物を調べてして追跡すれば」

「ああ、現段階では骨が折れるが難しい話じゃない。後は袋のネズミだ。ボロは何処かで出す」


大分現実的な視野が見えて来た。数に関しては此方に理がある以上有利に見えている。まあ最初からそうではあったが、明確に見据える場所が判明すれば動きやすい。

それにしてもだ。

やはりこの先輩は頭がキレ過ぎる。私だって頭脳戦に置いてはまだキレる方だと思っていたが、彼はそれ以上に寒気を覚えるくらいの思考力を持っていた。

何も考えていないような虚気味な表情の裏には一体何手先まで読んでいるのだ?

そしてーー。


「貴方はそれだけの価値を持ちながら何で身を隠すの?」

「………」


無言のまま歩き続ける細身の男性。まるで聞こえていない振りをしているかのようだった。

私は尚も尋ねる。


「貴方は何をそこまで恐れているの?」


これだけのキレ者でありながら、恐らくはどんな分野に置いても秀でた才を秘めながらどうして?

全く読めない。そんな意味ではまるであの魔女みたいな印象が付き纏う。冥天のディアナードの戦い以降私の前に姿を見せなくなった彼女。結局何も聞かず終いだった光景が目の前の彼と重なってしまう気がする。

その内夢から覚めたら居なくなってしまいそうで分からないままにさよならしていくような。

何だか怖い話である。

寧ろ恐れているのは私なのか?


「分からないままは気持ち悪いか?」

「まあね、ただわざわざここまで付いて来ているのだからどうしてかってね」

「はあ? そもそも俺があんたに何らかの疑いを掛けられているから交換条件として嫌々協力してるんだぞ?」

「そういえばそうだったわね」

「加えて世界の危機の話をされたら大抵は何とかしようって思うけどな」


正論だ。協力する理由は沢山あるが、協力しない理由は極めて少ない。

しかし彼の場合は世界がどうなろうと関係なさそうにしか見えないのだ。


「ーーまあ良いわ。今はそんな話をしている場合じゃないし」

「ああ、平行線になるだけのーー」

「え? どうしたーーッ?」


途中で話をやめだすユリス先輩はふいに身体を半身にさせる。そしてそこから現れ、前を全く見ていなく傘も差さない女性らしき人物が真っ直ぐに歩いて来る。当然気付くのが遅れた私は何とか避けようとするが間に合わずに肩がぶつかり、身体が僅かに泳ぐ。もう少し当たりが強ければ危うく付近の水溜りに突っ込んでいただろう。

温厚な私でもカチンと来た。


「貴女ッーーって」

「目も暮れずに過ぎ去ったな」

「………何なの?」


かなり失礼な存在の背中を睨む。流石に今のはおかしいだろう。あれで気付いていないのはないからワザとか、悪気を感じていないのか、急を要する案件でもあるのかだ。

どれにせよこの苛立ちが無かったことにはならないが。


「はあ、行きましょう。今のこそ無駄な行為だわ」

「あ、ああ」


立ち止まるユリス先輩を抜いて前に出る。その返事をする彼を横目に見ると怪訝な表情をしていたのに気付いた。

若干歯切れの悪い言い方も相まってどうしたのか?

私は聞いてみようとした。

ーーが。


「………!」


影が揺らめく。蜃気楼か、またら朧みたいに霞むような黒い影は大きいか小さいかで言えば小さい。小柄とも言える人の姿が見えた。こんな真夜中の雨が降るにも関わらず傘も無しにコツコツと長靴の音を響かせながらゆっくりと歩いてくる様子に妙な寒気すら覚える。

雰囲気を例えるなら正に温度が変わったと表現出来た。それくらいに目先に現れた存在の放つ異質さは凶悪そのものであるのだ。

純粋に脅威。間が悪いにも程があると文句を出したい。

街灯を浴びて鮮明になっていく軍服に近い礼装された制服。その軍帽の下にある翡翠の髪の隙間から覗く光る琥珀色の瞳はこの世から逸脱しているような獰猛さを感じさせ、歪む口角は笑みなんて言葉で表すには可愛い過ぎるくらいに不気味。

何より遭遇した瞬間から発する重圧は此方を最大限に警戒させる質の悪さ。

率直な感想を言わせてもらえばどうしてこの状況で自身の前にやって来るのか? だ。


「これはこれは、怪しい人影が見えたから追っていたらーー」


きっと普段から纏う空気がどれだけ周りに害を為すかを意識して考えてない口振りで彼女は愉快げに喋る。

私からしたら先程の苛立ちすら忘れて冷や汗をかきながら身構えるしかなかった。

そんな自身の心中を無視して向こう側の異質な存在は気軽に声をかけてくる。

彼女ーーダリアス・ミレーユは。


「こんな時間に散歩ですかな? 異端の天才?」

「散歩に見えるかしら?」

「ご挨拶ですね。私が何かしましたか?」

「空気が重くなるくらい威圧感を出しといてよく言うわよ」


ついでに異端の天才の呼称も止めて欲しいものだ。

本来なら軽く流して退散したいが、どうも間の悪い時に現れてくれたものだ。明らかにこの状況を言葉では惚けているが、疑ってかかる姿勢を見せている。普通に考えれば怪しまれそうではあるが、気になるのはそれを知ってどう動いてくるかだ。不用意に協力を仰ぐにはリスクがある。

何故ならばーー。


「(確か彼女も一覧に上がっていたわね)」


そう。あの悪魔達を異界に閉じ込めていた結界に綻びを生じさせるのを可能にする力を秘めた容疑者候補なのだ。下手に情報を与えるのは得策ではない。恐らくは犯人ではないだろうが、人格が人格だ。予測出来ない行動をされると迷惑でしかないのである。嫌な近々の再会だ。

故にあまり言葉を語らない姿からどこまで見据えているのか分からないが、ダリアス・ミレーユは此方の様子を観察しながら世間話を持ちかけてくる。


「そう言えば貴女はアズールに出場しないようですね?」

「不満かしら?」

「貴女が出ないなら退屈な試合にしかなりませんからね」

「言うわね。少なくとも私が知る人物達は貴女でも一筋縄ではいかないわよ?」


嘘ではない。実際ついさっきだって甘く見積もっていたへカテリーナ・フローリアの予想外な実力を垣間見たのだ。他にも悪魔と戦い、最後にはトドメの一撃を担った天才も二人いる上にこのカナリア・シェリーですら苦手意識を持つ策士だって存在する。あそこを退屈凌ぎの相手に扱えはしないと私は認めている。

この目先にいる存在を過小評価はしないが、何もそれは自身の周りにだって言えるだろう。

だがそれでも翠の悪魔とさえ呼ばれる彼女は笑う。

眼中にないとでも言うように。


「所詮死線を彷徨った経験もないか、浅い程度のぬるま湯に浸った者の実力なんて知れていますよ。例え魔法が秀でていようが、天器を使えようがそれはあくまで強さの一端を示す証明でしかありません」

「つまり実践経験がない相手は貴女の敵ではないと?」

「まあ多少は生き死の重圧を浴びた強者には間違いないでしょうが、その果てに勝ち取った勝利を得たようには見えませんね」


正直誰が、とは語っていない。なのに彼女は誰のことかすらも全て把握したような素振りを見せるのだ。そしてその考えは遠からず当たってはいる。


「死を覚悟したくらいじゃ生温い。生死を彷徨った末に生き長らえたくらいの生命力を持ちながら何度も立ち向かう屈強な精神を持った蛮勇でなければ私は昂らない」

「………狂っているわね。そんなに私が馬鹿な命知らずだと思っているの?」

「ええ、貴女は人一倍勝利を収める気持ちに比例して死を恐れない狂気に近いものを持っている。私と同じようにね」

「中々心外ね」

「だからこそ残念なのですよ。アズールを辞退するのを」


まるで付き合ってられない会話だった。まさか試合に対してそこまでの気持ちで望むなんて誰も考えていない。たかだか学生の実力を見せる戦いを戦争みたいな悪質なものとして意識するダリアス・ミレーユは自身よりも遥かに狂気に満ちていた。

誰が同じなのよ。一緒にしないで欲しい。

やはりこんな人物と戦わせる訳にはいかない。

絶対に彼女は戦えば殺す気挑む。全てを実践形式に例える狂い者だ。

どうすればこんな破綻した人格になるのだ?

これ以上取り合うには限界を覚えるしかなかった。


「悪いけど貴女が期待するような人間じゃないわ。退屈なら辞退するのを進めるわ」

「そうですね。元々出場する理由もカナリア・シェリーが参加しているからってくらいの理由ですから居ないなら辞退するのも有りですね。私も暇ではありませんから」


意外にも物分かりが良い。まあ元々エイデス機関の首位に入る実力者だ。学生しか参加しない魔導師との戦いなんてお遊戯会くらいな感覚でしかないのだろう。

内心多少ホッとする。

が、次にはズレた角度で面倒臭い話を絡めてくる。


「寧ろ貴女が辞退してまで進める計画に参加する方が何倍も面白そうです」


私が辞退するって意味を何も把握していない翡翠の彼女はそんな風に受け止めるのか。本来の方便としては否定したいが、勘の良さはやはりずば抜けているようだ。

でも惚けるしかない。


「どういう意味かしらね?」

「嘘が下手ですね。いや、駆け引きが苦手なのか? こんな真夜中の雨が降る中、こそこそと活動するのがまさか散歩なんて本気で信じると思っていたのですか?」

「別に貴女に関係ある話じゃないわ」

「さて、果たしてそれは本当ですか? 全く私に、エイデス機関の人物に関与しない事案だと言うのですか?」

「ごめんなさい。今一貴女の語りは要領が掴めないんだけど?」

「やれやれ。どうして皆さんは私を除け者にするのか」


違いますか。とダリアス・ミレーユは雄弁に、饒舌に全ては筒抜けだと言わんばかりに私に笑みを送って答える。


「織宮大尉の計らいが全て私を悪魔から遠ざける為だと気付かないと思いですか?」

「ーーッ」

「この学園大魔聖祭で現れるのでしょう? あの悪魔が」

「どうして………」

「私がただただ指示に従う駒と勘違いしていませんか? ちょっと考えれば分かることです」


筒抜けよりかはお見通しが的を得ているだろう。多分彼女は全く周りから情報を集めないままにこの結論に至っているのだと思われる。流石は戦いの天才と黒髪の青年から称される訳だ。

周囲の状況を見抜く力は紛れもなく本物である。と言うか見るまでもないくらいに想定していた結果なのかもしれない。


「だとして貴女はどうしたいの?」

「決まっているでしょう? 私は戦いたいのですよ。人知を超えた怪物と」

「正直貴女が倒してくれるなら是が非でもないんだけど………」


信用に値するかと問われればそれは違う。が、適任な実力を兼ね備えているのは間違いない。後はどう転ぶかだが。


「おや? 譲ってくれるのですか?」

「私は単に戦いたい訳じゃないわ。守りたいから戦うのよ」


この翠の悪魔とは考え方が根本的に違う。いや、正確には前の私を見ているに近いか?

退屈な日々に持て余す力。闘争心ではないが、挑戦心みたいなのは少なからずあったと思う。ただしそれはもう過去の話。今は新しく見つけた大切なものがある。そんな同じ方針で考えてくれているならまだ譲歩出来る気持ちも出るが。


「あまり簡単には折り合いがつけ難い状況なの。だから貴女は指示通りに動くか待機していてくれる方が不確定要素も減って立ち回れるのよ」

「随分な言いようですね。曲がりなりにもエイデス機関の一員なのですがね」


ごもっともだ。味方陣営を不確定要素扱いなんて失礼に値する。しかし、引き下がってもらうには多少キツめな意見も時には必要なのだ。実際エイデス機関の面々が彼女を戦場に出すまいと色々対策をしているのだ。ここで変に自身の独断で決めるのも何かと不味い。

ただ溢れ出る不気味さは否定しないが、どうしてダリアス・ミレーユをこんなにも蚊帳の外にしようとするのか?

一体彼女に何の秘密があるのだ?

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