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◇旋律と蒼天のブライニクル◇  作者: 天弥 迅
収束へ向けて
129/155

−天才じゃ何も変わらない⑤−

ギィ、と遠くから鈍い音が聞こえた。


古いのではなく、それだけの重厚な扉の重さが引き起こす擦れた音だ。ここに集まる様々な罪人達を逃がさないようにするべく意図して隔離させた上で内側から自力で出るのを不可能にした仕組み。魔法や通信を阻害させる為に特殊な結界に覆われ、外部や隣の空間にすら音が漏れないくらい頑丈で分厚い壁に覆われた部屋は物理的な衝撃でも貫かれない。そんな中でも出入りする扉は窓すらなく外部から最上級魔法を撃とうが壊れない代物である。


その為に定期的に巡回をしなければ堕天のルーファスが隠れ蓑にしている事すら気付けないが。


問題は誰がその扉を開けたかだ。


この部屋に居るのは檻で隔てられながらも悪魔と聖剣使いしか居ない。当然収容人物として扱われている記録書が存在したら誰かが気付くし、存在しないなら普通なら無人空間なので素通りされる場所である。


つまり、この場所に誰が居るのかを理解して何者かが様子を伺うべく扉を開けたのだ。


そいつがこの騒動の黒幕ーー。


整えた舞台にようやく降り立つ大トリの役者。


「さあ、姿を現したまえ。貴方がこのエイデス機関内で唯一情報を遮断される条件に当てはまるだけの存在なのだろう? 僕ですら把握していない理由はそんな貴方は僕よりも上の立場であるからだ。なら答えは一つーー」


ゆっくりと差し込む光。朝日が登った証拠だ。


時は大魔王が再臨を許された皆既日食が発生する日。


猶予がもう僅かで、秒刻みも間もなくなる程に切羽詰まった所に現れた黒幕はーー。


「貴方がエイデス機関の頂点だからだ!」


顔を上げ、はっきりと言い放ちながらその正体を目視する。



ーーッ!??


それで自身が驚愕を超え、かつてない焦りの表情を浮かべるとは考えもせずにーー。



「この収容所をどうして政府に任せずにエイデス機関が管理する必要があったか分かるかな?」


ソレは酷く精巧に作られた人形のような面様で口を開いた。


更なる絶望を教える為に。



「単純だよ。私の駒(罪人)を一番安全に守れていつでも行動に移せるからだよ。世界に歪みを生ませる為のね」


「そんな………君はいつからーーッ」


衝撃の事実の姿を目の当たりにして唖然としながら言葉を詰まらせる彼にソレはゆっくりと近づいていく。


尚も話は止まない。


「オルヴェス・ガルム。貴方の支持して動くエイデス機関は所詮この時の為の過程に過ぎない。本当のエイデス機関ーーエイデス教が世界を動かしていく」


初めか、或いは初めなんて存在しなかったのかもしれない。崇高なる義を盾に水面化で暗躍するからこそ必要な正義だっただけ。必要悪ですらなかった。


エイデス機関とは世界の歯車を狂わす者達の隠れ蓑だったのだ。


「そこには扇動者が必要なんだ。貴方と言う正義を掲げてその他を悪に出来る扇動者が」


「私を操り人形にしても聖剣は機能しない。残念ながら聖剣は気まぐれだ」


負け惜しみでしかない。恐らく向こうの求めるものはそこにあらずなのだから。


エイデス機関首位の一人である剣聖の力すら付随された恩恵に過ぎないーー。


「うん、知っている。欲しいのは正義を支持する貴方側の民衆とそれ以外。力はもうじき手に入るのだから」


「大魔王か………?」


質問に笑みで返されるのを肯定と受け止めた彼は心底ゾッとする。


建前の正義を掲げながら大魔王と言う巨悪すら利用するなんて傲慢にも程があり、実現させるには矛盾しか生じないだろう。不可能だと一蹴したい。


一体何が目的なのか?


と、そこへ眼前に置かれる手。魔力を帯びた文字通り魔の手がーー。


「いずれ全てが分かるよ? 剣聖君?」


それが最後の言葉であったーー。





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