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不死の館  作者: ドラノール
プロローグ
2/4

最悪の出会い

「歓迎するよお兄さん、ようこそ不死の館へ。」


「不死の…館……?」


突然現れた金髪の少年、そして少年の口から出てきた『不死の館』などという聞き慣れない単語、突然現れ勝手に喋り出した少年を前に今の俺はどんな反応を返せばいいのか分からなかった。だが、少年はそんな俺をじっと見ながらやはり俺を小馬鹿にするような態度で話しかけてくる。


「もしかしてお兄さん、意外と怖がりな人??」


「いきなりこんな見知らぬ場所に連れて来られて、しかも見知らぬ人間にいきなり話しかけられたんだぞ?警戒して当たり前だろ??」


少年の突然の質問に俺は心をざわつかせながらも強張った笑顔を作りながら返答する。少年はそんな俺が益々面白いのか笑いながら喋り続ける。


「あははは!怖がってるのは否定しないんだ!!お兄さん面白い人だね。」


「お前に面白いとか言われても全然嬉しくねえよ!それよりお前は誰だ?この口ぶりだと普通の子供にしてはここの事結構知ってそうだよな?」


このままではあいつのペースに載せられ、色々と聞きたいことを聞く時間が遅くなるかもしれない。そう感じた俺は話題をすり替えて少年に質問する。少年は笑顔のまま俺の質問に答える。


「せっかちだねお兄さん。まあいいや、名前ぐらいは教えてあげるよ。僕の名前は赤崎 翔。翔って呼べばいいよ。お兄さんのお名前は?」


名前は別に重要ではないのだが少年は自分の名前を述べた後、俺の名前を聞いてくる。この正体不明過ぎる少年に俺の名前を明かすのは嫌だったが、仕方なく答えることにした。


「阿里谷 拓人……。」


あまり答える気が無かったからとりあえずぶっきらぼうに一言だけ答えておく。だが少年……翔はそんな俺の態度も気にせず喋り続ける。


「ふーん、拓人って言うんだ。いい名前だね。」


「拓人なんて名前がついた奴は、日本を探せばどこにでもいるだろ?お世辞はいいからここが何所か教えろよ。」


俺の言葉をやっと真面目に聞く気になったのか、ここで初めて翔は笑うのをやめた、だが次の瞬間俺に向かって予想外の言葉を放つ。


「教えるつもりなんだけど、少し場所を移してもいいかな?今日は君を含めて三人がここに転送されてたからまとめて話した方がいいと思うんだよね。」


俺はその言葉に驚いて急いで質問する。


「おい、ちょっと待て!!俺の他にもここに連れて来られた奴がいるのか!?」


だが、そんな真面目に質問している俺が面白かったのか再び翔は笑いながら質問に答える。


「くっくくく、そんなに慌てて質問しなくてもきちんと答えてあげるよ。そうだよ、君の他にも今日は二人の人間がこの場所に来てるんだ。他の二人は僕が入ってきた扉を開けて階段を下りたすぐ下の階で僕を待ってるね。」


驚いた、俺の他にもこんな場所に連れてこられてる人間がいたなんて……本当、今日は驚かされてばかりの一日だ、驚かされすぎて頭が痛くなりそうだ。


だが、頭を抱えたくなっている俺を翔は待ってくれず俺に再び喋りかけてくる。


「拓人、じゃあそろそろ行こっか?」


「は?」


突然の翔の言葉に俺は間抜けな声をあげる。翔は一瞬俺の反応にきょとんとした後再び笑い出す。そして少し落ち着いた後、俺に説明をしてくる。


「だから、下の階に人を待たせてるんだってば。さっきの説明聞いてた?そこでまとめて話すって言ったでしょう?だから下の階に行こうって言ってるの、分かった?」


「あっ…なるほど」


確かに人を待たせるのはよくない……下で人が待ってるのなら早めに下に降りるべきだろう。だが………


(こいつに着いて行って大丈夫なのか?こいつ何か妙に胡散臭いし、俺がここにいる事を知ってた奴だぞ?着いて行った先が安全だという保障はないんじゃないか……)


俺が翔に着いて行くべきか悩んでいると、そんな俺の心を見通したのか突然俺に向かって翔は真面目な顔で質問してくる。


「もしかして僕が何かするんじゃないかって思ってる?」


「っ!?」


考えてる事が見通された事に俺は思わずビクッと反応する。翔は俺の反応を見ながら笑顔で答える。


「隠し事が苦手なのかな拓人は?思い切り冷や汗かいてるよ?」


俺はその言葉で初めて自分が翔に少し恐怖してる事に気づく。冷や汗をかいてる事に気付いた俺は汗を拭う。


翔はそんな俺を見ながら喋り続ける。


「別に此処にいてもいいけど、此処にいた所で状況は何も変わらないよ?それにこの部屋の扉は僕が入ってきたあの扉しかないんだ、窓も付いてないし君は遅かれ早かれあの扉を潜ることになる。それだったら僕に着いて来て情報を聞き出す方がいいと思うけど?」


「………」


俺はその言葉を聞いて黙り込む。結局、選択肢なんて最初から存在しない事に気づいてしまったから……


どう足掻いても遅かれ早かれあの扉を開けなければならないことに気付いてしまったから……


その事に気づかされた俺は考え込んだ末、翔に答えを聞かせる。


「分かった、着いて行く。」


簡潔な俺の答えを聞いた翔はニコッと笑う


「うん!じゃあ下の階まで行こっか!二人共、僕達のせいで待ちくたびれているだろうからね!!」


俺の言葉に無駄に明るい声を張り上げ笑顔を向けてくる翔……ただ純粋に嬉しいのかもしれないが今の俺にはその笑顔がただ不気味だった。だが、選択肢を失った俺は翔に従うしかない。自分の無力さに苛立ちながら俺は歩き始めた翔の後ろに着いて行った。

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