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放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
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第五話

 一日ぶりに外に出ると、気持ちいい。

 家は草原の小高い丘に建っていて、すぐ隣に畑と森があり、遠目には海が見える。


「……いい所だなぁ」


「はい」


 遠くに家が集まってる所が見えた。

 どうもこの家は、村?町?からはちょっと離れてるみたいだ。

 そちらに向かう広い道の向こう側に海が見える。


「ここは、ラウセス大陸大陸の北東部にある、エルサム王国。リオス伯爵領のドール村です」


 サクラさんは風になびく長い髪を押さえながら、家が集まっている所を指差した。


「ミナセ様は、あちらの海岸で倒れてらしたそうです」


 同じ年ぐらいの女の子に「様」付けは、ちょっとなぁ……。

 サクラさんは、丁寧に話すし、色々世話をしてくれるから「ミナセ様」とか言われると「メイド」ぽい。

 友達とかは「メイド萌え♪」とか居るけど、俺はそういうのに全然興味が無いし、普通に話してくれた方が気楽だ。


「……えーと、サクラさん。ミナセ様じゃなくて徹でいいですよ」


「あ、はい、トール様?」


「いや、様は無しで」


「……と、トールさん?」


「それでお願いします」


 サクラさんと、そんなやり取りをしながら、俺が倒れてたらしい海の方に歩く。


「じゃあ、海岸までお願いします」


「はい」







 20分ぐらいかけて、サクラさんと海岸まで歩いた。

 歩きながらサクラさんに聞くと、どうも俺を見つけてくれたのはコクヨウさんらしい。

 海岸に出ると、300メートルほどの幅の綺麗な砂浜があり、小船が2層置いてあった。

 北の方の海らしく、南国の海とは雰囲気が全然違う。

 異世界の海って言っても、地球の海と変わらないみたいだ。


「……ここに倒れてた?」


 とりあえず砂浜に降りてみる。


「お母様に聞いた話ではそうですね。ただ、服が濡れていなかったので、漂着して来たわけでは無いと思います」


 砂をすくってみると、サラサラの砂地で、倒れていた所はもう解らなくなっていた。


「キャッ」


「おっと」


 その時、俺の横に来ようとしたのか、サクラさんが躓いた。

 とっさに手を出して、サクラさんの手を掴む。


「あ、ありがとうございます」


「大丈夫ですか?」


 サクラさんは恥ずかしかったのか、急いで俺から離れた。

 可愛い子だなぁ……。


「あ、あちらの岬の向こう側に、村の港があります」


 取り繕うように説明してくれる。

 サクラさんが指差した方を見る。ちょうど村の方角になるみたいだ。


「この村はあまり漁業はしていないですけどね」


「魚が獲れないの?」


「いえ、この辺りは麦などを栽培していますので、自分達が食べる分ぐらいですね。魚はたくさんいますよ」


 魚はちょっと食べたいなぁ。落ち着いたら釣りとかしてみよう。

 と、考えてる時だった。


 ……ザバァ!


「え?」


 200メートルほど先の海が盛り上がると、巨大な首が持ち上がった。


「ちょっ!……な、なにアレ?」


 でかい、首だけでも10メートル近くある……。


「あぁ、危険はありません。この辺りに住んでいる海竜ですよ」


 サクラさんを見ると、別にあわてて無いので危険は無さそうだが、結構近く、かなり怖い。


「竜って……異世界凄いな……」


「トールさんの世界には竜は居ないのですか?」


「……居ない、と思う。この世界の竜とは違うかもしれないけど、竜自体は伝説とかゲー……物語とかにはあるよ、実在はしていないんじゃないかな」


 サクラさんの話だと、この世界は竜と人は共存しているらしい。基本的に竜は人を無闇に襲わない。

 それどころか、種類にもよるが、竜車(馬車みたいなものらしい)や農業で使ったりもする。

 あの竜はまだ若い竜だが、500年ほど生きると、上位竜種となり人種より頭が良く、独特の魔法など、さまざまな能力を備える。

 上位竜種は数は多くは無いが、人種を助けたり、助言をしてくれたりする個体もいるらしい。

 地方によっては、信仰の対象で、ある学者は「元々この世界は竜が原住していて、人種はすべて異世界から移ってきた」と言う説を唱えているらしい。

 上位竜種は人間よりも力や知力が強大で、人間からすると「実在する神様」みたいなモノかもしれない。


「……へぇ」


「さて、そろそろ戻りましょう」


 サクラさんは多少打ち解けて来たのか、帰りは色々話をしてくれた。

 サクラさんは「エルフ」って言う種族で、長い耳はその種族の特徴らしい。

 年齢は、俺と同じ17才で。コクヨウさんとは血は繋がっては無い。

 養女って事は、サクラさん的にはあまり気にしていないのか、サクラさんの方から教えてくれた。コクヨウさんの事が好きなのが言葉の端々で分かる。

 この国は17歳ぐらいだと、働いている事は普通らしく、サクラさんはコクヨウさんが産婆をしているので、その手伝いをしているらしい。

 あと、6日に1回、近所の子供何人かに文字とか計算も教えている。

 この世界は360日で一年で、一週間が6日、一ヶ月は5週の30日となり、地球と比べたら覚えやすかった。ただ、曜日ってのが無くて、「何週の何日目」みたいな表現をするらしい。

 家の家事はほとんどサクラさんがしていて、コクヨウさんは村での相談役みたいな仕事もしているらしい。

 元々コクヨウさんは東方って所の出身で、コクヨウさんとサクラさんの名前とか、文化的に日本に近い感じがする。

 その辺は後でコクヨウさんに聞いてみるか……







 ……そんな話をしていると、家に戻ってきた。

 サクラさんに案内のお礼を言う。


「昼食の用意をしてきます」


 二人で家の中に入ると、居間にはコクヨウさんは居なくて、サクラさんが昼食の用意をしてくれるらしい。


「何か手伝いましょうか?」


「昼食はそんなに手間はかかりませんよ」


「いや、お世話になってるし、手伝いますよ」


 サクラさんには毎食用意して貰ってるので、何か手伝う事は無いか聞く。


 サクラさんは「……んー」と考える。


「……では、薪割りをお願いしても良いですか?食事が出来るまでで良いので……」


 薪割りとかしたことないなぁ。けど力仕事だし、なんとかなるかな?

 俺はサクラさんに巻き割りのやり方を聞く。

 サクラさんと勝手口から家の裏手に出ると、家から少し離れた所に、雨で濡れないように屋根が付いている小さな小屋?みたいな建物があり。結構な量の薪が入っていた。

 その横に、一本の木をぶつ切りにしただけの木材が山積みになっている。

 サクラさん曰く、薪は乾燥させないと使えないので、木材(玉木)を細かく割ってから東屋(屋根だけで壁が無い小屋を東屋って言うらしい)で乾燥・保存するらしい。


「……んしょ、ちょっとやってみますね」


 サクラさんは、東屋に立て掛けてあった長さ80センチぐらいの斧を持つと、玉

木を土台の切り株の上に置き、斧を担ぎ上げる。そして、玉木を何度か斧を切りつけて4分割に割った。

 俺はサクラさんから斧を受け取る。

 お?思ったより重い。

 そして、同じようにやってみるが、結構難しい。

 1回なんかは、勢いが付きすぎて、自分の足を斧で切りかけた。

 サクラさんにコツを聞くと、玉木のが乾燥で割れている所にに斧を入れるのと、斧を握っている右手はあまり力を入れると、失敗した時に自分に斧を当ててしまうので、軽く握るか添えるだけにする。

 ……などを教えてくれた。


「では、お願いしますね。昼食が出来ましたら声をかけますので……」


 と、何度か薪を割ってみると、サクラさんは家に向かったので、薪割りを再開する。







 この世界は、中世のヨーロッパに近いと思う。

 少なくともこの家には、電気やガス水道なども無いし、サクラさんを見ててもそれが普通みたいだ。

 竜とか魔法みたいなのがあるし、今日の散歩でサクラさんが教えてくれた話だと、人間とは違う色々な種族も各自文化を持ち、生活しているらしい。

 俺は全然興味が無かったけど、晴香とか友達が読んだり遊んでた、ゲームとかの「ファンタジー世界」とかが近いかもしれない。

 ただ、ゲームとかだと違って、煮炊きするための燃料でも手間がかかり、薪割り一つでもコツがあ、り体力が必要なのをリアルに感じていた。

 俺は体を動かすのも好きだし、女性二人でこういった生活をしているなら、手伝える事は手伝って行こうと思った。


「……ふぅ」


 薪を割りながら色々考えると、俺は何回か割った薪を東屋に持って行って積むと、汗をぬぐった。

 薪割りは結構な労働で、かなり汗かき、途中から上着を脱いで、上半身裸で割っていた。


「……あ、あの、食事の用意が出来ました。それと、これを使ってください」


 いつの間にかサクラさんが近くに来ていて、水の入った手桶と布巾を渡してくれた。

 俺は礼を言うと、桶を受け取った。

 布巾を濡らして、汗をかいた上半身を拭いていると、サクラさんからの視線に気が付いた。

 サクラさんの方を見ると、俺を凝視していた。


「……えっと、何か?」


「い、いえ何でもありません……すいませんっ」


 サクラさんが真っ赤な顔をして後ろを向き、答えた。

 俺はいつものように、部活でマネージャーの前で居るような感覚だったけど、まぁ普通は年の近い女の子の前で上半身裸はまずいか……。

 晴香にも家で裸でウロウロしてたら怒られるし、考えてみたらサクラさんとは、まだ会ってから二日目ぐらいだし……。

 俺はとりあえず、急いで体を拭くと、服を着た。


「……あーっと、サクラさん、おまたせしました。」


 俺は、着替えるまで待っていてくれたサクラさんに声をかけると、二人で家の方に向かった。



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 出来たら本日中にもう一本行きます。

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