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放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
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第四話

 ……ブブブブブ……ジリリリリリリリリリリリリリッ!


 ……ブブブブブ……ジリリリリリリリリリリリリリッ!


 …………俺は、いつも目覚まし代わりに使ってた携帯のアラーム音で目が覚めた。

 枕元に置いてあった携帯のアラームを止める。


「……やっぱ夢じゃないか」


 部屋を見回すと、昨日と同じ部屋だ。

 そして、携帯を見ると、やっぱり圏外で、バッテリー表示が半分ぐらいになっていた。昨日聞いた話だと、充電は無理そうだ……。

 もう携帯は使えないと思い、スリープ状態では無く、完全に電源を切った。

 ベットから降りて、寝巻き代わりのTシャツの下に制服のズボンを穿く。

 窓ガラスが無いので雨戸が閉まっている部屋の中は薄暗い。俺は窓の雨戸を開いて外を見た。

 窓から外を見ると、ちょっと風が強いがいい天気で、窓の外に草原と、その奥に森が見える。


「……空気が美味いなぁ」


 林間学校とか野球部の合宿の時に感じた森の匂いがする。

 俺が窓の外を見ていると、控えめなノックの後にサクラさんの「失礼します……」と声が聞こえた。

 俺はドアを開けるとドアの前にサクラさんが居た。


「おはようございます」


「……お、おはようございます。あ、あの今の音は?」


 携帯のタイマーの音かな?サクラさんはちょっと焦り気味で挨拶をしてくる。


「えーと、目覚ましの音だけど……五月蝿かったですか?」


「目覚まし?……い、いえ……あまり聞いたこと無い音でしたので……」


 まぁ、聞いたことが無い人はびっくりするよね。そもそも時計とか無さそうだし。


「とりあえず、顔を洗いたいんだけど、どうしたらいいでしょうか?」


 と、サクラさんに聞くと、「こちらです……」と勝手口?の外にある大きな水瓶に案内してくれた。

 俺が顔を洗い終わると、サクラさんは「……どうぞ」と、布巾を差し出してくれた。通学で使ってたバッグの中にあった、タオルを持ってくるのを忘れてたので、助かりました……。それとタオルとかはやっぱり無いのね……。


「……ありがとうございました」


「……い、いえ……あ、貰います」


 サクラさんに顔を拭いた布巾を渡す。

 ……よく気が付く子だなぁ。

 サクラさんとは、まだあんまり話した事が無いけれど、大人しい感じの子だ。

 サクラさんが「食事の用意をしますね」と言ってくれたので、居間の方に向かった……。







「……おぉ~。小僧、おはよう」


「おはようございます」


 居間の火の入っていない暖炉の前に置いてあるソファーで、本を読んでいたコクヨウさんが俺に気づいて挨拶をしてきた。

 しゃべり方と行動は変な人だけど、やっぱり凄い美人だなぁ。


「よく眠れたか?」


「……えぇ」


 状況を考えると、眠れ無さそうだが、疲れていたのか普通に眠れたし、体調も悪くは無いと思う。

 俺は食卓の方の椅子に座りながら答える。







「……ちょっとコレを見てみ」


 椅子に座ってから、昨日の夜とは雰囲気の違う居間を見回していると、コクヨウさんが俺の前に本を置いた。

 かなり分厚くて重そうな本で、表紙を見ると、見た事も無い文字でタイトルぽいのが書いてある。


「……本ですか?」


「この世界の本じゃ、まぁ読んでみ」


 俺は見た事の無い文字の本を開く、図鑑みたいに白黒の挿絵が入ってる本だ。


「……読めません」


 俺がそう言って本から顔を上げると、コクヨウさんはニヤニヤしながら「まぁ、よく読んでみ」と、もう一度言う。


 「ラ▲ベ●種の■種で▼■ヴェル●ルは高●地帯■生息し……根▲は解熱●用があ▼……」


 ん?最初は見た事の無い文字が、所々読めるぞ……。


「え?あれ?」


 ……ククク。

 俺のびっくりした声に、コクヨウさんはいたずらが成功した子供みたいに笑っている。

 俺はあわてて表紙をみる。「ラ▼セス大陸■薬草●典」と書いてある……。


「……理術じゃよ。まぁ、あと三日ぐらいすると、全部読めるかのう。昨日、施したじゃろ?こう……ガッと!」


 コクヨウさんそう言うと、アイアンクローの手をガッ!と出す。


「……理術?」


 うぇ、アレか……アイアンクローの痛みを思い出す。


「まぁ、詳しい話は後でしてやるが、言葉が分かって文字が読めるようになる術じゃ」


 そういや、昨日感じたコクヨウさんとサクラさんの二人の口の動きの違和感が無くなっている。ちゃんと口の動きと聞こえる声が同じみたいだ。

 すげぇ!魔法みたいなモノか。異世界凄いな。


「……おまたせいたしました」


 俺が理術に感動していると、サクラさんが朝食を持ってきてくれた。

 コクヨウさんとサクラさんはもうとっくに朝食が終わってるらしく、俺の分だけ持ってきてくれる。

 食事は麦を牛乳で煮たお粥みたいで、思ったより美味い。腹が減ってたので、一気に食べてしまう。よっぽど腹が減ってたと思われたのか「おかわりは、いりますか?」とサクラさんが苦笑しながら言ってくれた。

 俺は「おいしいですね」と感想をそえて、おかわりをお願いをした……。







 食後にサクラさんが淹れてくれた、ハーブティーを飲み終わり。これからどうするか考える。

 とりあえず、この家の周りがどんな様子か見たかったので、コクヨウさんに外に出ても良いかと聞いた。

 コクヨウさんは「ちょっと待ってろ」と言うと、居間から出て行くと、何着かの服を持ってきた。


「……小僧これに着替えろ」


 俺は渡された服を、いつもの部屋に戻り着替えた。きちんと洗濯はされているみたいだか、いつも着ている服と比べるとガサガサする。地味な色合いの作業着みたいな感じで、サイズ的にはちょっと大きい。


 俺は着替えると、居間の方に戻る。


「……着替えました」


「ん?ちょっと大きかったか……まぁ似合ってる……か?」


 俺が居間に入ると、コクヨウさんが微妙な感想を言う。

 サクラさんは……。


「……今晩にでも直しますね」


 と言ってくれた。


「さて、サクラ。小僧を案内してやれ、とりあえず家の周辺じゃ」


「あ、はいお母様」


 サクラさんが付いてきてくれるのかぁ。彼女には色々お世話になってるので、申し訳ない。


「それと、小僧よ。もし、村人に会っても、自分がまれびとだと言う事は黙っておいた方がいいじゃろ」


「はい?理由を聞いても?」


 着替えさせたと言う事は、そう言う意味もあるのか。

 あんまり目立つのは良くないのか?。


「ココは田舎じゃから、ばれても大騒ぎになるとは思わんが、権力者は良くも悪くも、まれびとを利用したがる輩もおる。そう言った奴等の耳に入ると、面倒くさい事になるからの」


「……はぁ」


 本当に面倒くさそうにコクヨウさんは言った。

 まぁ、俺は普通の高校生だし、利用しても得は無さそうだけどね。


「ま、小僧は誰か?と聞かれたら「遠方から婿入りに来たサクラの婚約者」って事にしとくかの」


 コクヨウさんはニヤニヤして言う。


「お、お母様っ!」


 サクラさんがまた顔を赤くしながら言う。

 なんちゅー母親だ、婿って……。昨日の夜も「所帯を持て」とか言ってたし……。

 本当にサクラさんには申し訳ない。

 サクラさんを見ると、恥ずかしそうに目をそらされた……。


「と、とりあえず、サクラさんお願いしますね。」


 と、言うと二人で玄関に向かった。



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