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放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
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第三話

 俺は自分の名前を名乗ると、どういった状況であれ、面倒を見てくれた礼を言った。

 アイアンクローは喰らったけれど、それ以上危害を加える事は無さそうだ。

 大人の女性の方がコクヨウさん、そして耳の長い女の子の方がサクラさんと言う名前らしい。

 姉妹だと思っていたのだが、二人は親子で、この家は二人だけで住んでいるらしい。

 詳しい話は向こうで茶でも飲みながら話をしよう、とコクヨウさんが提案してくれた。

 俺がベットから降りて、コクヨウさんに着いていこうとすると、サクラさんがびっくりして真っ赤な顔をした。

 ……誰が脱がしてくれたのか、俺はパンツ一丁だった……。

 …………恥ずぃ。







 部屋においていた服に着替えると、サクラさんが家の中を案内してくれた。

 家は晴香が観ていた、イギリスかどこかの眼鏡をかけた魔法使いの少年が出てくる映画に出てたような古い感じだ。

 トイレは汲み取り式で、風呂は無いようだ。

 最後にリビングにらしき大きめな部屋に案内される。

 暖炉とか初めて見た……。

 そして、部屋の中央にある、四人がけのテーブルでコクヨウさんと差し向かいで話を聞く。

 サクラさんはお茶を入れてくれてるのか、台所ぽい所の方に向かった。


「……まれびとですか?」


 ちゃんと言葉が伝わっているのか、聞きなれない単語だった。


「おう、小僧の様に異世界からこの世界に飛ばされて来た連中は「まれびと」と呼ばれておる。まぁ客人って意味じゃな」


 自己紹介したのに小僧って……。


「……はぁ」


「この世界はな、太古の昔より何度かまれびとが来ておる」


 映画とかゲームみたいだなぁ。

 俺みたいなのが何人も来てるのか、じゃあ帰れるかも?

 とりあえず聞いてみよう。


「で、俺は帰れるんでしょうか?」


「んーむ……正直に言うとわからん。そもそも、まれびとは現象なのか、誰かが呼んでるのかさえわからん」


 ……えぇ?


「もし、誰かがまれびとをこの世界に召喚したのなら、逆に送り返す方法があるのかもしれん……。ただ、何かしらの自然現象の場合はお手上げじゃな」


「……マジすか……」


 ……どうしよう……帰れないって。どうしたら良いんだ?。

 ……俺は、こんなコンビニもテレビも無さそうなヨーロッパの田舎みたいな所で、一生暮らすのか?。

 俺は天井を見ると普通の家にはあるものが無い……電灯が。

 ……おいおい、それどころか、電気も無いんじゃ?。

 ……農業とか、するのか……?。


「お、お茶をどうぞ」


 死刑執行を言われた気分で黙ってると、サクラさんが雰囲気を読んでくれたのか、絶妙なタイミングでお茶を持ってきてくれた。


「……ありがとうございます」


 サクラさんにお礼を言うと、ちょっと気分を変える為に湯気の出ている木製のカップから一口飲む。


「これって……麦茶?」


 てっきり紅茶だと思ってたら、それはホットだったが飲みなれた麦茶だった。

 サクラさんに聞くと彼女は頷いた。

 コクヨウさんも麦茶を一口飲む。

 ……ちょっと落ち着いた。


「……まれびとは土地や家畜ごと来る場合もあるし、異世界からさまざまな文化や芸術、技術を伝来することもある。まぁそれがこの世界に良いか悪いかは別としてじゃ」


 まれびとが何かしら影響しているって事もあるのか……。

 麦茶とか香りも味も一緒だし。


「土地ごとですか……人数は?」


「聞いた話では村ごととかあるのう……」


 ……村ごとって。


「それに、この世界は人間にはちと厳しい世界じゃ。先人の人々も、現在の人々も、まれびとがもたらせてくれたモノで生きながらえておるヤツらも多い……」


「……俺はこれからどうしたら良いんでしょうか?」


 こう言う事をコクヨウさんに聞くのは筋違いかもしれないが、実際問題、話を聞いても状況が飲み込めていなかった。


「……ふむ」


 コクヨウさんは立ち上がると・……。


「……フハハハハッ!。よくぞ、わが召喚に答えてくれた、勇者トールよ!。そなたはこれから悪の魔王を討伐するの旅に出るのじゃ!。討伐のあかつきには金銀財宝と、そこにおるサクラ姫を娶らせようぞ!!」


 って、ノリノリで言いだした。


 「……娶らせるって」


 俺はサクラさんの方を見ると、真っ赤な顔でうつむいている。


「……とまぁ、魔王とかおらんから冗談じゃが、小僧さえよければ、この村でサクラと所帯を持ってくれてもかまわんぞ」


 「……所帯って」


 俺はなんだか申し訳無い気分でサクラさんの方を見れなかった……。

 コクヨウさんは椅子に座りなおすと、麦茶を一口飲む。


「ま、放り出す事も無いし、好きなだけこの家に居てくれてもかまわん。小僧がどうするにしても、しばらくは泊って行け」


 俺はこれからを考える時間も必要だし、まだまだ話を聞かないとよく分からない。

 俺はコクヨウさんの好意に素直に感謝する。


「……ありがとうございます」


 気が付くとそろそろ夕方なのか、日が陰ってきた。


「では、食事の用意をさせていただきますね」


 サクラさんがそう言って台所に向かう。

 コクヨウさんは次は俺の事の教えろと、色々質問をしてきた……。







 部屋が暗くなると、電灯では無く、何か光ってるモノが天井部分で浮遊してた。

 食事は、ぼそぼそしてるパンとシチューだったが、光る物体が気になって、正直あまり味はわからなかった。

 食事の後、サクラさんからランプの使い方と聞き、色々疲れたのと、考えをまとめたかったので、晩飯の後は、二人に声をかけて最初に寝ていた部屋で休ませてもらった。







「異世界って……夢じゃ無いよなぁ……」

 虫の声とカエルだと思われる声が聞こえる部屋で、ベットの上に寝転び色々考えているうちにいつの間にか眠ってしまった……。






 ……俺のレオリースでの最初の夢は……イイ笑顔のコクヨウさんにアイアンクローされる夢だった…………。



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