第二話
……目を開ける前に匂いが気になった。
毎年行っている、かぁさんの田舎の家のような匂い。
……その次に気になったのは音。
自分の部屋と違い、車の行きかう街の雑踏の音では無く、静かな中に鳥の声。
いつもの自分の部屋じゃない?
俺はどこかに寝かされているらしい……。
「っえ?!」
ガンッ!
「っつ?!」
俺が勢い良く飛び起きると、何かに額をぶつけた!
「……いでぇ!」
額をぶつけた痛みで覚醒すると、痛みを感じる額を押さえながら周りを見回した。
見慣れないどころか見た事の無い部屋で、部屋の中は全部木材と石?で出来ている。
「……ん~」
俺の額をぶつけた相手が、寝かされていたベットの横で額を両手で押さえながら悶絶している。
「……あ、ご、ごめん」
とりあえずその女性?に半ば条件反射で謝る。
よっぽど痛かったのか、その人はしゃがみこんで顔を抑えていた。
「……大丈夫ですか?」
俺は心配になって、痛がっている女性に手を差し伸べた。
「…………」
女性は痛みが落ち着いたのか、痛みで潤んだ目で俺の顔を見た。
「…………」
その女性は思ったより若かった。
華奢で身長も低く中学生ぐらいか、俺よりも年下に見える。
腰まである長い黒髪だが、肌の色も骨格も日本人とは全然違う。
顔つきは整いすぎてて、人形のようだったが、痛さで涙がこぼれそうなすみれ色瞳が人形では無く、感情のある人間だと主張していた。
良く見ると、今まで下がってた人間にはありえない長い耳?がじょじょに立ちあがってきた。
一瞬、「病気なのかな?」と思ったが、長い耳があっても彼女の美しさとは関係ない。
服装はちょっとゴワついた感じの緑のワンピースに、白いエプロンをしている。
「……綺麗な子だなぁ」
俺と目が合った女の子に最初に思った事が自然と口から出た……。
「……あっ……だ、大丈夫?」
俺は女の子に見とれて、恥ずかしい事を言ったのをごまかすために、もう一度聞いた。
「●■■ー▲▼↓?」
「▲●↑●■●▲▼ー●●↓?」
「え?」
まいった……。女の子は何かしゃべっているのだが全然わからない。
英語のリスニングすら微妙な俺は、そもそも彼女が何語を話しているのかさえわからない。
「……えーと……」
彼女の声を聞いて困った顔をしていると、彼女は真剣な顔をして急いで立ち上がり部屋から出て行った……。
俺は彼女が出て行った部屋の中を見回す。
俺が寝ていた部屋は、壁は石と木で出来ていて。窓とドアが一つづつ。天井を見上げると、田舎の家みたいに家を支えている木の梁が直接見える。
調度品は少なく、窓側にベットとベットを挟んで反対側に学習机ぽい机。今まで女の子が座っていたその机とセットだと思われる椅子。あとは引き出しの付いた箪笥?みたいな物が一つ。
どう見ても日本の家とは全然違う作りだ。
何でこんな所にいるのか考えると、最後の記憶がバスに乗ってた事を思い出した。
事故で運ばれたかと思ったが、ここは病室じゃない。
「そうだ!晴香は?!」
俺はバスで一緒だった晴香を探そうと、ベットから起きようとすると、足元に畳んで置いてあった制服を見つけた。
「っ!携帯!!」
もしかしたらあの時、制服の上着に入れてた携帯に何かしらの着信があるかもしれない。
俺は制服を掴み取ると右側のポケットに携帯が入ってるのを確認して取り出した。
スリープ状態の携帯の電源を入れると、アラームを止めてなかった表示はあるが、着信とメールは無い。
こちらからとりあえず自分の家に掛けてみるが、呼び出し音すらしない。
故障かと思い、携帯の画面を見ると圏外表示が出ていた。
「……マジかよ」
俺はとりあえず電話を借りようと思い、ベットから降りようとした。すると、今さっき部屋から出て行った女の子ともう一人が部屋に入ってくる。
「・・・すげぇ」
女の子は美少女って感じだったが、もう一人の人は大人で美人だった。
ウェーブのかかった黒髪で、慎重は俺と同じぐらい、さらにスタイルが凄い、歩き方も背筋が伸びててなんか洋画に出てくる女優みたいだ。
よく見ると、カラーコンタクトを入れてるのか瞳が赤い。
二人は俺のことを観察しているのかじっと見ていた。
普通の高校生の俺は、似ていないけど姉妹だろうか?。美人な女性二人に見られて恥ずかしさがこみ上げてきた。
「▽○□□↑○ー△☆↑?」
「●↓■★★▼▼ー●■■ー●▲↓……」
「○ー△△○□▽○□↑」
二人は何かしら短く会話をすると大人の人の方が俺の側まで来て手を伸ばして来た。
俺は緊張して身を竦めると、頭や顔や体をぺたぺたと触りだした。
彼女からは香水とか化粧とかとは違う、ハーブみたいな柔らかいいい香りがする。
納得行くまで触ったのか、彼女が俺から離れる。
彼女が離れた事で緊張を解くと、いきなり彼女は「ガシッ!」っとアイアンクローをかけてきた!。
「……え?…………いででででっ!」
痛い!
俺は訳が分からず、凄い握力をかけてくる手から逃げようと身をよじる。
「……○△▽~○……○▽△~○……」
彼女は何かブツブツと、言いながらギリギリと握力をかけてくる。
「……割れる!割れるって!」
何で俺はこんな所で、言葉の通じない美人にいきなりアイアンクローなんだ?!。と野球部のツレ連中よりも凄い握力で涙が出そうになる。
「…………~△□○○を……授けんっ!」
ミシミシと俺の頭蓋骨が嫌な音が聞こえた気がした。が、彼女はブツブツ言ってたのを気合と一緒に止めると、手を離してくれた。
「……ひでぇ」
俺はあまりの痛みに、ちょっとだけ出た涙をぬぐうと、自分の頭に彼女の指が食い込んで穴が開いていないか恐る恐る確認する。
「……小僧、おい小僧?」」
頭を確認していると、異常は無いみたいだ。
「……はい?え?えぇ?!」
そして、俺はいきなり聞こえた日本語に反応すると、周りを見回した。
「小僧、聞こえるか?儂の言ってる事が分かるか?」
声の聞こえる方を向くと、目の前の女性が話している……。
彼女の口元を見ると、映画の吹き替えのように微妙に話してる日本語と口の動きがずれているように見える。
「わかります。聞こえます……」
俺が返事をすると、彼女は後ろに立っている女の子に「ニヤ」っと笑った。
「どうだ?サクラよ、古い術だが成功じゃな」
「はい、お母様」
いきなり言葉が分かるようになったのにおどろいていると。
彼女は俺の目を見る。
「では、自己紹介と行こうか。儂の名前は黒耀。ようこそレオリースへ……「まれびと」よ、小僧の名前を教えておくれ……」
夜にもう一話行けるかなぁ?
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