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放課後の竜機士  作者: 榊出
第一章:初めの一歩
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プロローグ

 とりあえず始めて見ました。しばらくは不定期で更新になります。

「……ハァハァ……なんとか生き残った……」


 敵の第一波を退けた陣営で、若い兵士は陣営に設置された防護柵にもたれかかって、荒れた呼吸をしながら手に持った槍を抱えながら座り込んだ。

 周りを見回すと埃っぽい戦闘後独特の喧騒の中、各所から部隊の隊員確認の点呼や色々な声が聞こえる……。


「レーヴェ伯の部隊はどうなった?」


「……おい、槍の予備は無いか?」


「各部隊の動ける伝令兵は急いでこちらに集合せよ!」


「リーガス第四小隊の旗はどっちだ?」


 そう言った雑多に飛び交う声の中に、聞きなれた声で自分の名前を呼ぶ声が聞こえた。


「キャリガン!キャリガンは居るか!?」


 若い兵士は、乾いていたのどの渇きを潤そうと水筒に伸ばした手を止め、自分の名前を呼ばれた方に返事をする。


「はいっ!こちらにっ!」


 キャリガンの返事を聞いて、こちらに向かって歩いてくる部隊長に立ち上がろうとすると、部隊長は手でそのままで良いと合図をした。

 そして、キャリガンの側まで歩いてくると正面に座り込む。


「あぁ……ひでぇ目にあったなぁ……怪我はどうだ?」


 同郷で歴戦の部隊長は兜を脱ぎながらキャリガンに聞く。


「私はたいした事は無いのですが……ソニエとミークが医療部隊の方に下がってます」


 キャリガンは擦り傷程度だったが、歩けないほどの負傷し、担架で搬送されていった同じ部隊の戦友たちの事を報告する。

 部隊長はキャリガンの報告を聞くと腰に吊っていた水筒の水を一口飲む。


「……そうか、あの状況で救援が来なかったら危なかったな」


「ええ……周りの敵の数がかなり多くて……救援に来てくれた竜機兵が手練で助かりました」


 キャリガンは先ほどの戦闘で、敵に包囲され苦戦していた自分達の救援に駆けつけてくれた黒い竜機兵の獅子奮迅な活躍を思い出す。

 その竜機兵は今まで見たことのある国軍や領軍の貴族や騎士の物とは違い、派手な装飾がほとんど付いていなかった。色も黒地で地味だが軽やかに動き、盾を装備せずに東方風のカタナで敵を切り裂いていた。

 竜機兵とは全長10メルドほどの(大体10メートル)の巨大な人型の兵器で、古くからこの世界の天敵と言われる「甲蟲」と呼ばれる大型の外骨格と関節を持つ節足動物に対抗する兵器である。小型の甲蟲類は1メルほどで人間でも対抗する事も出来るが、大型の甲蟲類は10メートルを超えるものも居る。

 ただ、強力な兵器であるが、購入が困難なのと維持が高額なため配備数はあまり多くはない。

 キャリガンが首を廻らすと、陣地内に他の竜機兵に混ざって、その黒い竜機兵が片膝を着いているのが遠目に見えた。


「……あちらに居ますね」


 キャリガンの目線の方に部隊長が目を向ける。


「あの竜機兵はたしか……最近この辺りに来た商隊所属の竜機兵だ」


「キャラバンの竜機兵ですか?」


「要請されて参加してるのか傭兵契約かはわからんが、救援に来てくれて正直助かった」


 キャリガンが目を凝らして居ると、黒い竜機兵の操縦席から自分と同じぐらいの黒髪の若い男が地面に飛び降りるのが見えた。若い竜機士は竜機兵の側に駆け寄ってきた女性となにやら話しているのが見える。


「……さて、敵の第二波が来る前に休憩と部隊の再編だ。まだ時間はあるからお前も他の連中と合流後、装備の点検と食事を取っとけ。部隊はウチの部隊旗の下に集合させるのでそっちに来い。敵の規模からするとまだまだ戦闘は続きそうだしな……」


 部隊長はそう言うと脱いだ兜を小脇に抱えながら立ち上がった。


「ハッ!」


 キャリガンは部隊長に続いて立ち上がると、敬礼をする。部隊長は他の隊員の様子を見に行くのか歩き出した。

 キャリガンは自部隊の旗を確認すると、助けてくれた竜機兵の方を向き、感謝の気持ちを込めてもう一度敬礼をした。そして横に立てかけてあった自分の槍を掴むと部隊の集合場所に向かって歩き出した……。







「……ふう」


 俺は小さく息を吹くと、操縦桿から手を離し、戦闘後でまだ熱を持っている黒狼を片膝を着いた降着状態にして転倒しないように関節部をロックした。


「思わず全力疾走したけどどうだ?俺の方は特に問題無いが?……出力も反応も予定通り良い感じだな」


 操縦席の後ろ上にある戦術機関士用の席で各部をチェックしてる戦術機関士のサクラに聞いてみる。

 サクラは各所の状況が映っている映像板から目を離すと俺のほうを見下ろして。


「はい!各部に異常は無いです。変な軋みも聞こえなかったし、放熱も問題は無いかと……さすがはシノブさんです。ただもう少し出力系で調整したいところはあります」


 と、報告するとにっこり笑いかけた。

 サクラはこの世界では珍しい黒髪の若いエルフで、少々華奢だがかなりの美少女だ。命の恩人であり、俺がこの世界に来てからの付き合いになる。黒狼の戦術機関士としても精霊魔術師としても腕が良い。


「あと、討伐数ですが、大型1、中型5、小型が15です」


 味方の救援に間に合い、久々の大規模討伐戦に手ごたえを感じながらサクラに答える。


「あいよー、んじゃいったん降りるぞ。大分押し込んだからしばらくは敵は来ないし、今回の報酬の交渉もまだだからな。そろそろ本隊も追いついてくるだろうから立花と調整するか……」


 俺は操縦席から前部にある搭乗扉を開く操作をすると、操縦席への視界を映している映像板ごと分厚い搭乗扉が跳ね上がった。外の涼しい空気と戦場独特のざわめきを感じると、滑り止め用の薄い皮手袋を脱いで操縦席の座席の上に置いた。

 そして狭い戦術機関士のから降りようともたもたしているサクラに手を貸す。


「いつもありがとうございます」


 サクラは戦闘後の興奮なのか少々赤い顔をして俺に抱き付いてきた。俺はサクラを引き離して手をとり、操縦席の方に誘導すると各部を足場にして地面に降立った。

 サクラが操縦席から降りてくるのを待っていると、黒狼の後ろ側から見知った作業用の前掛けをした長身の女性が向かってくるので声をかけた。


「よう、忍。早かったな」


「早かったな……じゃねぇ!徹テメェ、あれほど慣らしながら調子見ろって言ったのに全力疾走しやがったなぁ!」


 忍は俺の方に近づくと怒り出した。

 シャープな感じの美人だが忍の方が俺より身長が高いのでちょっと怖い。


「ったく、駆動系と関節部いじったんだから、通常はゆっくり馴染ませながら調整しないと他とのバランスが崩れるんだぜ」


「……あー、ごめん」


「アタシは好きで触らせて貰ってるけど、何かあった時に怪我するだけじゃすまないかもしれないじゃないかっ!」


 立花忍は黒狼の機兵鍛冶で、今回の戦闘前に交換した筋肉筒と関節部のすり合わせを気にしてるようだ。

 元々、工業高校の機械科の学生で実家が自動車の修理工場をしている関係もあって、竜機兵の整備をやってくれている。

 心配して怒っている忍に俺が謝ったところでサクラが黒狼から降りてくる。


「シノブさん追いついたんですね?他の皆さんは?」


 サクラが俺の横に来て忍に聞く。


「こっちも急いだからね、会長は急な依頼だったんで軍のトップと交渉中。リィラは馬でアタシ達本隊より先行して情報収集。アリアンロッドは修理が間に合わなかったんで、晴香達と本隊で留守番かな。アリスは馬でこっちに来るかも?」


 今回の依頼は急だった事もあり、他の皆より黒狼で単独先行したので、安全圏まで追いついてきた本隊の他の仲間の様子を聞く。


「で、黒狼の調子はどうだい?」


「……えーとですね……」


 サクラが俺に代わって黒狼の調子を忍に報告しているのを横聞きしていると、袖が遠慮がちに引っ張られる。


「……ご主人様」


 袖を引っ張られている方に向くと、予想通り情報収集に出ていたリィラが居た。馬はどこかに繋いできたのかリィラしか見えない。

 リィラは俺達の世界の犬に似た獣人で、犬のようなぴんと立った耳と尻尾が生えている。髪の色は銀に近い白色。身長は150センチほどと小柄ながら運動能力はかなり高い。


「リィラ、ご苦労さん」


 俺はいつもしているようにリィラの頭をなでると、リィラは気持ち良さそうに目を細める。


「で、状況はどんな感じだ?」


 俺はリィラの頭をなでるのを止めると、リィラの報告を聞く。


「報告しますです。ラーセルの街のギルドから緊急依頼時に聞いたよりも敵の規模は多いです。敵は中型の甲蟲が多く、味方の竜機兵が集結、展開しないうちに会戦してしまい、戦線が横に伸びた分、手薄になった陣地から見て右翼側が崩壊しそうになりましたです」


 戦場に突入した時に、今聞いた右側の兵士が中型の甲蟲に苦戦してたのを思い出した。間一髪間に合ったのだが、もう少し遅れていれば被害は相当出たと思う。


「ご主人様が突入していただけましたので、右翼側の味方は持ち直し、かなりの負傷兵が撤退する事が出来たようです」


 リィラの報告を聞きながら周りの兵士のほうを見ると、重傷者は後方に下げられたらしく、目の付くところには居ない。


「……続けて」


 見回してた間に報告が止まっていたリィラに報告を促す。


「……はい、現在、敵は5リィ(1リィは1キロ)先の巣を中心に集結中です。味方の竜機兵はこの辺りの領主軍の緊急展開部隊とラーセルの街の守備隊、共に脱落は無しですが、右側の歩兵部隊の再編成にまだ時間がかかりますので、準備出来次第追撃に移ると思われます、です」


「了解、ありがとう。これ食べて」


 リィラの報告が終わると、俺は干しフルーツの入った固焼きしたクラッカーを腰のポーチから出してリィラに渡す。いつもハラペコなリィラはうれしそうに受け取ると、両手で持って食べ始めた。

 俺はサクラと忍の方を向く。二人は大まかな打ち合わせが終わったらしく、忍が黒狼の脚部関節を見ている横で中腰でその様子をサクラが見ている。

 二人の側に歩いて行き声をかける。


「忍、追撃戦用に槍が欲しいんだけど?」


 忍は関節部分を見ながら。


「準備出来てるけど、本隊まで取りに来れる時間はあるか?」


「まぁ、次の指示までまだ時間ありそうだし、一度本隊まで戻るよ」


 と、言うと納得したのか忍はこちらに向き直った。俺はリィラを呼ぶ。


「はひっ」


 口をモグモグと動かしていたリィラに指示を出す。


「リィラ、悪いけど馬取ってきて、忍に渡して。忍はリィラの馬で本隊まで頼む。忍に馬を渡したらリィラはウチの代理として、ココで情報収集と現場での指示をよろしく」


 リィラは指示を聞くと馬を取りに走り出す。それを確認すると、俺は降着状態の黒狼を感慨深く見上げる。


「トール様どうしました?」


 いつの間にか横に並んだサクラに聞かれる。


「いやまぁ、ちょっと今までの事を思い出してた……」


 サクラはクスリと笑うと、俺と同じように黒狼を見上げた……。






 普通の高校生だと思ってた俺、水無瀬徹はこの世界でロボットに乗っている……。



 テンプレ設定満載でスタートですが、インフレチート系主人公が活躍する物語では無く、各得意分野の仲間が協力し、竜機兵と言うファンタジー系ロボを使って行く物語にしたいと思います。


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