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それは古の姫

ツァンが食事を持って救助した少女の部屋に入ると...


少女は本をベッドの上に数冊並べて、鼻歌まじりに一冊ずつ読んでいた。


ツァン「食事。」


???「あ、ありがとうございます。」


少女は食事を受け取ると、鯖の味噌煮込みの缶詰に手をつけた。


スプーンを震える手で必死に掬い上げると口に運び...笑顔になった。


???「美味しい...何百年ぶりでしょうか...こんな味...」


ツァン「...名前聞いてもいい?ボク、アンタの名前知らないんだ。」


???「私の名前は『パティ』。


...そう呼ばれてた。」



パティは窓に映るグロテスクな魚に興味津々。


「わぁ」とか「ほわぁ」とか可愛い声をあげながら眺めるパティは可愛かった。



裸なのはツッコミたいけど。




遊斗「おはよう!ツァン!


今日も元気な―」


ツァン「死ねえええええぇっ!!!!!!!」


勢いよくドアを開けて入ってきた遊斗にツァンはアッパーをお見舞いした。


遊斗「危ない危ない...」


遊斗はとっさにかわしたためアッパーは空振った。


遊斗「やぁ!パティ!よく眠れた?」


パティ「はい!遊斗様♪」


ツァン「遊斗様!?」


ツァンはビックリして遊斗を睨みつけた。


遊斗「昨日の一件で一目惚れしちゃったみたいでさ...」


ツァン「...はぁ」


遊斗「でも...裸でいいのか?


襲っちゃうかもよ♪」


パティ「はい♪是非私の胸に―」


遊斗&ツァン「ちょいちょいちょい!!!!」


パティ「?」


ツァン「普通恥ずかしいでしょ!?」


パティ「何言ってるんですか?


私たちアトランティス人は出産すると国総出でお祝いするんですよ?


アトランティス人は元々妊娠しづらい体質で妊娠しても出産まで三年間も待たないといけないんです。



私...憧れているんです。


綺麗なお世継ぎを妊娠したお母さんの姿に...。



ツァン「ふぅん...そういう事情が............って」


遊斗&ツァン「アンタお姫様だったの!?」


パティ「え?そうですけど...?」


パティはキョトンとしている。


遊斗「なんだ、お姫様だったのか...それもっと早く言って欲しかったな~」


パティ「いいんです...こんな素敵なインテリアのある寝室なんて生まれて初めてだったので...」


パティは純真な笑みを浮かべていた...。




ツァン「ボクはノーチラス号の操縦室に戻ってるよ。」


パティ「待って下さい!!!」


パティが突然起き上がろうとしてふらっとベッドに戻った。



パティ「このノーチラス号は三日に一度、新鮮な空気を取り入れないと窒息死しますよ!!!」


遊斗「な!?」


パティ「私は...いえ...私しかノーチラス号の浮上操作はできません!


私を操縦室へ連れて行って下さい!」


遊斗「わ、分かったからとりあえずシャツでも着ようや。」



遊斗はパティにシャツを着せると操縦室まで引っ張り出した。



ツァン「パティ!?」


パティ「手動操作に切り替えて下さい!」


ツァン「わ、分かった!」


ツァンはレバーを手動操作に切り替えた。


パティは深呼吸するとノーチラス号に何か不思議な魔法を唱え、レバーを動かした。



するとノーチラス号は急浮上を始めた。







*********



着いた先は海風が肌に心地好い海上だった。


パティはハッチを開けるとぐったりとした。


パティを寝かせると遊斗とツァンは甲板に出た。



鴎が飛び、潮風の匂いがする。


魚が跳ね、エラスモサウルスがのんびりと昼寝をしてい......ん?


ツァン「あれ?エラスモサウルスって....」


遊斗「白亜期の恐竜だね。(棒読み)」


ツァン「なんでいるんだろうね?(棒読み)」


遊斗とツァンは恐る恐る振り返ると....


遊斗&ツァン「びぎゃああああああああああああああああ!!!!!!!!!



エラスモサウルスだああああああああああ!!!!!!!」


白亜期で有名な首長海竜『エラスモサウルス』が襲い掛かってきた!!!


遊斗「ありゃあいあああああああ!?」


遊斗とツァンは意味不明な言葉を叫びながらノーチラス号に退却した。


蓋を閉めようとしたのだがそれよりもエラスモサウルスの首がノーチラス号に侵入する!


遊斗「あっちいけ!!!

ここにアンモナイトはいないぞ!!!」


遊斗はキューを振り回してエラスモサウルスの頭を殴りつけようとした時、パティが叫んだ。


パティ「待って!エラスモサウルスは確かに肉食恐竜だけど...とても温厚な恐竜なの!!!」



*********


ツァン「いい子、いい子。」



ツァンはとれたての魚をエラスモサウルスの口に投げ入れ頭を撫でてあげる。


遊斗「思ってみたらあんなにのんびりと昼寝している恐竜なんて大体温厚だ...って気づくべきだったな...。」


遊斗は魚釣りをしながら呑気に呟いた。




パティ「私たちもお食事しませんか?」


ツァン「バカじゃないの!?


もしレックスみたいな恐竜に遭遇したらジ・エンドよ!?」


パティ「大丈夫ですよ!


ここの島に住む恐竜は厳重な調教師の元で飼育されてますから。」


ツァン「へぇ.......え?」


遊斗「飼育!?」


パティ「ええ♪この時代...白亜期には恐竜人と呼ばれる民が恐竜と仲良く生活してるんです。


アトランティス人は彼らとも文通があるくらいの仲だったんですよ♪」


遊斗「じゃあ、会いに行くか。」


ツァン「え?ちょっ!待って!!!」




*********


ツァンはパティを車椅子に乗せて凸凹の激しい道を通る。


遊斗はドロップを舐めながら余裕の表情を浮かべている。


しばらくして、突然人影が現れ囲まれた。


彼らは弓矢を構えていたが、パティの存在に気づくとその手を下ろした。



外見は...はっきり言って普通の人間。


だが背丈は低めで、小人のようだった。


小人たちの中から一人、美しい顔立ちをした青年が前に出て会釈する。


パティは青年と謎の言語で会話すると、遊斗たちに微笑みかけた。


パティ「集落に案内してくれるそうです♪」




*********


着いた先は藁葺きの屋根を持った古風な住居。


井戸端で女性たち数人が世間話をし、子供たちが戦争ごっこをしていた。


パティ「あとで宴会をやるそうなので....一応、私たちは男女別に分かれて住むみたいです。」


遊斗「ちぇっ...俺だけ邪魔物か。」


遊斗はつまらなそうに小人に案内された部屋に入っていった。






*********


遊斗「はぁ...つまんないの。」


遊斗は一人ぼっちでただ広い部屋の中で横たわると...


さっきの会話をこっそり録音した端末機で早速言語解読を始める。




遊斗「これは.....まずい!パティは半分しか解読できていない!!!




奴らは...女を食う化け物だ!!!)」



遊斗は慌てて武器を整理する。


遊斗「(恐竜を相手にするんだ。


それなりの覚悟はしなくては...!!!)」



遊斗はすばしこく狂暴な恐竜『ディノニクス』との戦いを理論的に頭の中に想定した。


遊斗は死を覚悟して家を飛び出した....。




*********


ツァンとパティは遊斗とは別の部屋で手足を縛られて床に転がっていた。


ツァン「なんでこうなるのよ...」


パティ「おかしいですよ!だって彼らは元々アトランティス人と友好的な関係だったのですよ?」



しばらくして、恐竜人の男が数人現れ、ツァンとパティを引きずり夜の広場へと連れていった...。


そこに着くとツァンとパティは長い棒にくくりつけられ、



ツァン「あれって....ひょっとして原始的な肉焼き機!?」


パティ「食べられるみたいですね...私たち...」


恐竜人たちがみんなして踊ったり歌を歌い始める。


パティはその時やっと自分が解読し切れてなかったことに気がついた....。




そして火がつけられようとしていたその時!!!



一本の矢がその恐竜人の頭を貫いた。


さらに数人の恐竜人の男に雷の矢が襲う!!!


ツァン「ゆ...遊斗だ!!!」



*********



遊斗は死闘を繰り広げていた。


はっきり言って昨日の傷は癒え切れてはいなかった。


でも戦う!


ビリヤードを連続射撃して数人倒すと缶からドロップを取り出してほうり投げる。


ドロップは激しい爆音と爆風とともに爆発し、数人が吹き飛ばされる。



しかし遊斗は今、一人で戦ってはいなかった。


遊斗には今、二人の仲間がいた。



一人は鳥人の少女。


いや、鳥の帽子を被り翼を生やした少女と言ったほうがいいかもしれない。




彼女も遊斗と同じ小さな棒を持っていたが、彼女の場合はそれを細身の剣に変えている。


戦力的には遊斗と同じくらいだろう...直感で分かる。



もう一人は今、パティとツァンを縛る縄を解こうとしている女の子。


が...ツァンは彼女を知っていた。




宮本 ゆま


どうしようもないおっちょこちょい且おせっかい焼き。


そのため友達は少ない...。




境遇はツァンと同じだが、正直うっとうしい。



ゆま「縄解けましたよぉ。」


ツァン「べ、別に助けてくれて嬉しい訳じゃないんだからね!」



パティ「ありがとうございます。」


遊斗と鳥少女は息ぴったりの動きで恐竜人と使役してけしかけられた恐竜たちを倒していく。


???「どうする?遊斗?」


遊斗「一旦ずらかろうぜ。」


???「遊斗らしい解答ですね...みんな!

引き上げますよ!」



ツァンたち五人は死に物狂いで林の中に逃げ込んだ。


ツァン「きゃあああああ!!!ヒルよ!ヒルウウゥッ!!!」


パティ「いやっ!いやあああああ!!!」


遊斗はパニクる二人を抱えて走る。


遊斗「馬鹿野郎。


ヒルなんぞに驚きやがって!!!!!」



遊斗たちはノーチラス号に乗り込むと全速力で潜水した...。





*********


遊斗「ありがとう、『エレン』。


なぜここが分かった?」


エレン「なんとなく...かな?


遊斗の闘志って、私にも分かるくらい情熱的で...強いから。」


エレンは帽子を脱ぐと綺麗なブロンドの髪を撫でた。


ツァン「あの...アンタたちの関係って...?」


遊斗「え?セフレだけど?」


ツァン「な」


エレン「冗談は止してったら!.....私たちは元カノ元カレの関係です。


二年前出会って、一緒に戦ったことで私たちは天下無敵の戦士と呼ばれるようになりました。


でも...自由奔放で女癖が酷い遊斗に我慢出来ずに別れたんです。」


ツァン「...納得」


遊斗「納得するな!!!」


エレン「私も同じく時間跳躍でミスをしでかして、偶然やって来たゆまを巻き込んでこの世界に来たって訳...」


ゆま「酷いんですよぉ?


私のことを『バカ』とか言うんです!」


ツァン「知らんがな」


遊斗「...という訳で、俺たちはまた薄暗い海底生活をする羽目になっちまったってことか...ま、いいか。


仲間も増えたし。」


パティ「うぅ...」


ゆま「大丈夫ですか!?」


パティ「具合悪い...」


ゆま「誰か!救急車!!!」


ツァン「あるわけないでしょ!」


遊斗「...酷い熱だ。


何か変なもの食べたか?」


パティ「.....ヒルに吸血されたからだと思います。」


遊斗「ヒル?」


パティ「恐竜の島に住むヒルには...」


遊斗「ヒルには?」


パティは飢えた獣のような顔した。


パティ「強い発情作用を起こす成分が注入されるんです...。」


エレン「ツァンさんだったね?」


ツァン「はい」


エレンとツァンは二人がかりでパティを押さえ付けた。


ゆま「はうぅ...どうしましょう...?」



エレン「縛って寝かせましょう!」


暴れるパティの手足を優しい縛るとベッドから逃げられなくさせておいた。


遊斗「...で、これからどうするよ?」


エレン「手分けして旅しましょう!


陸と海から探検すればひょっとしたら元の世界に抜け出せるはず...」


ツァン「本当ですか!?」


遊斗「ああ。穴ってもんはそんなもんだろ。」


ツァン「帰れるんだ...ボク、帰れるんだ!!」


ゆま「あの...?」


ツァン「?」


ゆま「私ならエレンさんにナイフでの近接格闘技を教えてもらいました...でも...」


ゆまは正直に言った。


ゆま「ツァンさんは戦えません!!!」


ツァン「!!!」


遊斗「確かにな...」


遊斗はドロップを舐めながらしばらく考えていたが...。


遊斗「よし、ツァン。

戦闘力をアップして女子力もアップするぞ!


俺がコーチになる。」


遊斗は魔性の笑みでツァンを個室へと引きずって行った......。





ゆま「大丈夫でしょうか...?」


エレン「あいつは人を見抜く力が強い。


きっとツァンに眠る能力を引き出すにちがいない...。」



この日から、ツァンには地獄の日々が待っていた...。

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