跳躍事故
深海魚はお好き?
ツァンは走っていた。
トーストを口にくわえ、死に物狂いで走る。
ツァン「遅刻だけはやだ~!!!!」
ツァンは普段寝起きが悪い。
だからいつも強力な目覚まし時計をセットしているのだが...
ツァン「(なんで今日に限って忘れるのよ~!!!)」
そう、昨日のキスのせいで調子が狂ったのだ。
ツァン「今度会ったらぶん殴ってやるんだから!!!」
*********
??「思っていたより追っ手が早いねぇ~♪こいつは逃げ甲斐がある」
遊斗は軽快なステップで逃げ回っていた。
遊斗「ある程度スピードを出て来たことだし...この辺でずらかりますか♪」
遊斗は時間跳躍をしようとしていた。
ある程度のスピード、角度、環境により使える能力で、時間に摩擦を起こして時間軸をずらしてその隙間に逃げ込む...泥棒に相応しい技だ。
遊斗「行くぜ!必殺!
時間跳や―」
が、交差点から女の子が!!!!
遊斗「わああああああああああ!!!!
どけ~!!!!!」
ツァン「!!!!」
遊斗とツァンは激突した拍子に次元の裂け目に飲み込まれた...。
*********
ツァン「ん.....」
目を覚ますとそこはいつもの交差点ではなく、一面緑の森だった...。
ツァン「ここはどこ...?」
??「イテテテ...時間跳躍にミスっちまったか...はぁ...罰が当たったかな...」
隣を見るとなんと昨日会った青年だった。
ツァン「あ、アンタは!!!」
??「おっ!昨日の可愛い娘ちゃんじゃん!」
ツァン「か、可愛い娘ちゃん!?(ボッ)」
青年は呑気にドロップ缶からドロップを取り出すと口に含んだ。
??「そういえば、君の名前は?」
ツァン「知ってどうすんの?」
??「君を守るためさ。
何しろ外は物騒だからね♪」
ツァン「!!!」
気がつくとツァンたちは人の大きさ程ある巨大なハチに囲まれていた。
ツァン「ひいっ!!!」
??「俺の体に隠れな!!」
ツァンは慌てて青年の背中に隠れた。
ハチの一匹が口から光線を放つ。
対する青年はホルダーから小さな棒を取り出すとクルクルと回してビリヤードのキューの大きさに拡大すると片手で回転させて光線を防いでしまった。
??「余裕♪余裕♪」
ツァン「(強い...)」
??「次はこっちのターンな♪」
青年はビリヤードを打つ構えをとる。
先端に光球が発生すると勢いよく突いた。
球は雷を発生させながらハチを切り刻み、全滅させた...。
??「お茶のこさいさい♪」
ツァン「アンタは...何者なの?」
??「俺か?俺は『太陽 遊斗』。
よろしく♪」
ツァン「桜城 ツァンです...。」
遊斗「ここは一旦引き上げよう。
きりがない!!」
遊斗はツァンの手を掴むと大急ぎで走った...。
ツァン「(初めて...異性に手を握られた!)」
遊斗は勢いよくツァンの手を引くと背中に捕まらせて両手を開ける。
ホルダーから二丁銃を取り出すと振り向き様に撃った。
銃口から出てきたのは弾丸ではなくプラズマを発生させた光の球!!!
雷のストレートボールが追ってきたハチを貫通した。
遊斗「仕方ない...ここは一つ!」
遊斗は舐めていたドロップを地面に吐いた。
直後!激しい閃光が走り、ハチの視覚を潰した。
遊斗「今のうちに!!」
*********
ツァン「はぁ...はぁ...はぁ...」
なんとかハチから逃げ森を抜けたはいいが、今度は広大な荒野が広がっていた。
ツァン「もう!遊斗のせいなんだからね!!!
学校、遅刻しちゃうじゃない!!!」
遊斗「...残念なお知らせだ。」
ツァン「?」
遊斗「俺とツァンはこの世界に永住することになったらしい。」
ツァン「はあ?」
遊斗「俺は時間跳躍という超能力を使おうとして失敗した。
これに失敗したら最後、巻き込まれた人も含め...一生不老の身になって生きなきゃいけない。
そして、永久に訳の分からない世界をさ迷うことになる...。」
ツァン「最悪!最低!!!
ああ!もう!ボクの花のハイスクールライフがあああああ!!!」
ツァンはうずくまって泣いてしまった...。
遊斗「確か...そうだ!
あれ!あれ!!」
遊斗はいきなり走り出した。
ツァン「ちょっ!待ちなさいよ!
置いてかないで!!!」
ツァンは涙目で後を追った...。
遊斗「これこれ♪」
ツァン「これって...神殿?」
遊斗「女神は一度だけ微笑んでくれた。
こうして跳躍を失敗して果てない旅人となった人間に馬を持たせるために...」
遊斗は神殿にずかずかと入り込んだ。
ツァン「ちょっ!待ちなさい!」
遊斗「?」
ツァン「アンタに一回やりたいことがあったわ!」
ツァンは遊斗の顎を拳で打ち抜いた。
ツァン「ああスッキリした♪
さ、行きましょう♪」
遊斗「(なるほど...これがツンデレ...こいつは攻略し甲斐がある...)」
遊斗とツァンは神殿の中に入った。
そこには湖があった。
ツァン「え...?何これ?」
遊斗「大胆分かる。
この暗号のついた石碑がヒントだ。
....やれ、エノク語か。」
ツァン「エノク...語?」
遊斗「ああ、大昔の歴史に消えた言語の一つ。
ヘブライ語より遥かに古い聖なる文字。
解読できるのはエノクだけと言われている....が、俺も勉強したから知ってるさ。」
ツァン「そんなに昔に...」
遊斗「何々...『アトランティスの民にこのアトランティス人最後の兵器を託す』...か。
ってことは間違いない。」
遊斗は真剣な表情をしてツァンに振り返った。
遊斗「この湖には伝説の潜水艦『ノーチラス』が眠っている。」
ツァン「ノーチラス!?」
漫画や映画で見たことあるから知っている。
超合金でできた無敵の潜水艦...どんな攻撃を歯が立たず、鋭利な衝角で船体を切り裂き貫くと言われている鮫のような機械の化け物。
想像の世界でしか存在しないと言われていたそれが今...この下で眠っている...。
遊斗「ん?この文字...なるほど。
アトランティスの民も考えたな。
この石碑そのものがキーボードになっている...。
ってことはどっかに接合部があるはず...。」
遊斗は石に耳を当て、拳で軽く叩いた。
それを色んな位置で試す。
ツァン「アンタの本職って何?」
遊斗「...泥棒」
ツァン「呆れた」
遊斗はしばらくそれを続け...やっと止めた。
遊斗「Bingo(見つけた)」
遊斗はその部分を押すと、石碑は音を立てて開いた...。
中は多くの集積回路が繋がるまるで今のスーパーコンピュータのようになっていた。
遊斗は慣れた手つきでポケットから電子端末機を取り出すとプラグを適当に差し込む。
遊斗「俺が暗号なんざ知らないからって馬鹿にすんなよ...言わないなら聞き出してやる。」
端末機のキーボードを高速でタイピングし、クラッキングする。
遊斗「開かない扉は意地でもこじ開ける。
それが俺の主義でね!!!」
次々と石碑のロックがサイバー攻撃によって壊されていく。
遊斗「残念だったな...お宅らの文明は俺には通用しないのさ...!!!」
最後にクリックすると完全にロックが解除された。
間もなく地響きが起き、それが止んだ後...水面から泡が発生し、湖底から巨大な潜水艦が現れた。
ツァン「すごい...本物の...ノーチラス号だ...」
遊斗「ちょっと失礼。」
遊斗は潜水艦にタッチすると深呼吸を始めた。
遊斗「OK。もう入れるよ。」
ツァン「何したの?」
遊斗「この潜水艦には最後のトラップとしてアトランティス人以外の人間が入ろうとすれば感電死するようにしてあった。
もう大丈夫...俺が...全部...」
遊斗はそういうと倒れた。
ツァン「遊斗!?しっかりしてよ!
アンタがいないとこの船動かせないんだからね!!」
遊斗「悪い...ツァンは俺の言う通りにノーチラス号を操縦して欲しい...」
ツァン「分かった。」
ツァンは遊斗を運び入れる。
ツァン「広い部屋...」
遊斗「多分、操縦室はあの扉だ...ハッチは閉めておいて...」
ツァンは恐らくそれらしいスイッチを押す。
ハッチが閉められ、明かりが灯される。
遊斗を引きずりながらツァンは操縦室に入った。
そこには複雑なスイッチやレバーが並んでいた。
とりあえず、遊斗を助手席に座らせてシートベルトで固定する。
遊斗「まずは...そのスイッチとこのレバーを」
ツァン「うん」
遊斗「触らないで」
ツァンはずっこけた。
ツァン「的確に指示下せよ!!!」
遊斗「そのレバーを引いて!!!」
ツァン「分かった!!」
レバーを思いっきり引く。
するとノーチラス号は動き始めた。
遊斗「後は...その赤いレバーを下に倒せば自動操縦に切り替わる...」
レバーを引くとノーチラス号は動き始め...
遊斗は意識を手放した...。
*********
自動操縦に切り替えたツァンはノーチラス号を探険することにした...。
ツァン「トイレもあるし...お風呂もある...食糧庫には...保存食が詰まってる。
くんくん...大丈夫そう。
それにしても...広い部屋...」
ツァンは操縦室に戻ると椅子にもたれ掛かり、すやすやと眠りについた...。
この不可思議で非現実的な世界の物語が今...幕を開ける。




