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The Hole  作者: 黒漆
4/13

地界の教誨 前

 神父の体に馬乗りになった男はナイフを閃めかせて首の上を横に振り抜いた。

 割れた喉から血が吹き出し、神父は喉を押さえるも溢れる血が気管に詰まる、ショックで口を数度開閉させ、すぐに痙攣を引き起こして目から光が失われていった。

 男の火傷、ケロイド状の肌の上には降りかかった赤い血が艶かしい光沢を放っていた。


 ウィリアムは窓から街の姿を見下ろしていた。

 汚れた街並み、錆び付いた車、マンホールからたつ白い湯気、そういった景色を眺めると、心が安らぐからだ。

 「ウィル、また街を眺めているのね。そんなにこの街が気に入っているの?」

 リヴはウィリアムにさして興味もなさそうにそう聞いた。会うたびに繰返される決まりきった問いかけだった。

 「何故だろうね、私はこの雑然とした風景が、自分の故郷の景色よりも落ちつくんだ」

 変わらない返答にリヴはため息をついた。

 「変わらないわね。あなたも、私も。この街は変わり始めているっていうのに」

 ウィリアムは振り向き、事務机に片手をつく。

 「変わらないものなんて何もないさ。私も君も、変わらないように見えて、少しづつ変わっている」

 リヴは言葉を無視するように、たたまれたジャケットの中からタバコを取り出して火をつける。

 事務机の上の灰皿にはウィリアムの吸いかけのタバコが灰を落とそうとしていた。


 ウィリアムが経営している探偵事務所兼住居に二人はいた。

 普段と変わりのない朝の始まり、開業して三年、ドラマのような殺人事件に絡むこともなく、ただひたすらに雑事をこなすだけの仕事。

 ウィリアムの仕事と言えば盗聴装置の発見、詐欺行為や不貞行為の立件補助、時折行方をくらます未成年やペット探しくらいなもので、浮気相手や交際相手、そうした者たちを尾行し、日常を探る事が唯一、探偵らしい仕事と言えた。

 申し訳程度の金で、自分でこなせる範囲の申し訳程度の仕事をする。それでウィリアムは満足していた。

 街での聞き込みを続けるうちに、市警とも顔なじみが出来た。そのうちの一人がリヴだった。

 彼女は同じアパートメントに住み、署に通っている。

 恋人ではなく、お互いに割り切って付き合っている。

 酔ったリヴをアパートメント前で拾い、勢いで体を重ねて以来、時折、そうした行為を繰り返す事が日常化していた。


 リヴはタバコの灰を一度、灰皿に落とすと聞いた。

 「それで、今あなたはどんな調査をしてるの?」

 タバコを口にくわえ、ウィリアムは椅子に腰を下ろす。

 「情報をただで譲れと?」

 口角を上げ、半分程笑いながらウィリアムが答えるとリヴは応じるように笑い、すぐに相槌を返した。

 「ふん、あなたの情報を欲しがるほど、私達は無能ではないわ」

 「冗談だよ、今は少し割のいい仕事に噛んでいる。人探しさ、ジェイソン・ジェイン氏の息子さんを探している。あてはあるんだが、探し出せる見込みは少ない」

 リヴは驚いたような表情をわざとらしく浮かべた、意外だという意思表示らしい。

 「J・J氏ね。へえ、結構な大物じゃない」

 「ところがね、彼はどうやら私以外にも多くの探偵を雇っているようだ。この間、酔いどれロブに行方を知らないかと聞かれてね」

 ロブは半アルコール中毒の男で、二人の住む界隈では役立たずで知れている男だった。仕事よりも酒で飲んだくれている時間の方がながいような男だ。

 「ああ、あの間抜け。ふうん、随分と見境がないみたいね」

 「どちらにしても、厄介な仕事のようだ。しかし、私も暇だから。少し腰を入れて仕事をするつもりだ」

 「あなたは少し欲張ったほうがいいのよ。そうすれば、こんな場所からすぐに出ていけるのに、それに探偵を気取るなら少しは殺人事件でも調査してみたら。少しくらいの情報は提供してあげるわよ。ほら、いま新聞を賑わせている神父殺人でも」

 ウィリアムはそれには及ばないという素振りで首を振り、タバコを(くゆらせ、口から煙をはき出した。

 「私は探偵を気取っているわけじゃあないんだ。この杖は自分への戒めさ、それに好きでここに住んでいる、出て行こうなどとは微塵も思わんよ。それよりも君が情報を洩らしたら規律違反じゃないか」

 ウィリアムの左手には金属の杖が握られていた。

 固く握り締められ、柄の色が銀から鈍色に変わり始めている杖は普段から常用されている様子を伺わせている。

 「私にはその杖が探偵を気取っているように見えるのよ、だってあなた、体のどこも悪くしていないじゃない。それと、あの殺人はもう市警の手から離れているの。もう三人も殺されているから。どちらにせよ関われないなら情報なんて知っていても無いのと一緒じゃない」

 リヴはウィリアムの対面にある椅子に座り、足を組む。それを見ていたウィリアムは、杖を立てかけ、両手を机の上に組んだ。

 「現代のオペラ座の怪人か、随分と大物を引き合いにだしたものだ。明らかな特徴があるのに随分と苦戦しているじゃないか」

 リヴはうんざりした様子で右手のひらを上に向けた。どうやら、それに関わる何かが、過去の嫌悪を思い起こさせる記憶に触たようだ。

 「顔に目立つ火傷を持つ犯人ね。敬虔けいけんな独身の、人生を全て宗教に捧げてきた神父ばかりが狙われる殺人、そこが問題なのよ。911以来、この国は宗教的な要素が絡む事件には慎重にならざるを得ないから、それもあって微妙な捜査が続けられているのは納得できるんだけれど、顔にそれだけの特徴があるのに捕まらないなんて。逃走経路をどうやって得ていると思う?」

 「宗教的な問題、イスラム教徒の犯行ではないか、か。安直な解りやすい犯人を求めようとするお偉い方がいつの頃も存在する、ということか。新聞を見る限りでは、地下を使って逃げているではないかと、推測されているそうじゃないか。指紋はどうなんだ」

 「そうね、開け放されたマンホールがどの件でも残っていたらしいから。指紋は鑑識に回されているはずよ。でも、犯罪者のデータバンクには一致する者はいないようだった」

 「とすると、いよいよ探すあてがないわけか、地下は広大だからな。使われていない路線、下水施設、地下墓地など、複雑に繋がり合っている」

 何気なく応じた言葉が確信に触れたのか、リヴは片目を大きく見開いた。

 「そこよ、あなたは地下の人達に伝手があるのでしょう? あの人たち、独特なコミュニティを形成していて、私達公的機関の人間とは頻繁にいざこざが起きているから、頑なな所があるのよ。私達だって好きでやっているわけじゃあないのにね。あの人たちがもっと協力的だったらこんなに面倒なことにはなっていないと思うの」

 「まあ、彼等には彼等の世界があるんだ。上の世界とは別に、守らなければならないルールがある、君達とは相容れない独自の法律があるんだよ。解った、気が向いたら調べてみるさ」

 ウィリアムはそう言って立ち上がり、コートを羽織ると事務所の扉に手をかけた。それを横目にリヴが興味もなさそうに答える。

 「期待しないで待ってるわ。私は非番だからもう少しここで寝ていくわね」

 椅子の上で背伸びする彼女に片手で挨拶し、ウィリアムは外へと踏み出した。



 地下路線、電車が柱の向こうを走り抜けてゆく、彼と男は電車からは死角になる廃線の上に立っていた。柱の間を光がまだらに照らし出す。車輪が線路に触れ、きしみを上げてカーブを越えていった。

 慣れない生臭さ、じめついた空気が男にまとわりつき、汗がじくじくとわきだしている。

 口の中で舐め続けていたナッツ噛み砕き、しびれを切らした男が声を上げた。

 「おいあんた、そろそろ教えてくれてもいいだろう。ここにその、男の子がいるってのか、こんな場所に十年も、嘘じゃあないだろうな」

 男の質問に彼は答えず無言のままだ。

 「おいどうしたんだ、返事をしろ」

 彼は顔の包帯に手をかけそれを少しずつはがして言った。

 「何してる、あんた。それを取り除いて良いのか」

 彼は包帯をすべて取り外すと投げ捨て、振り向く、絶句した男の顔の中心を懐から取り出した銃で撃ち抜いた。



 ウィリアムは街の郊外にある廃ビルの中にいた。

 何年も前に経営者が破綻させて以来、廃ビルになり、取り壊しもされないまま今では浮浪者のたまり場になっている。

ビルの元地下駐車上には、路線トンネルへと繋がる下水道が存在していた。それに廃ビルの中には彼の馴染みの者達が今でも拾い集めた家具に囲まれて生活を続けている。

 彼は予め購入しておいたウィスキーを取り出して、ビルの一角にあるスペースに向かうと、ダンボールの上で横になる男をみつけ、ウィスキーを手渡した。

 「久しぶりだ、皆元気にしているか、ジョー」

 呼ばれた男は体をゆり起こすと、絡み合う髪を片手でかきむしりながらウィリアムの顔を眩しそうに見上げた。

 「おお、久しぶりだな旦那。また浮気調査かい、それともペットの爬虫類でもさがしてんのか、俺たちとしちゃ、またここに旦那が戻ってくれることを期待してんだけどな」

 「今回は少し変わった依頼でね、人探しだ。前にも言っただろう、私はもうここに戻るつもりはない。それに、誰かがお前たちに酒を与える役をやらなければならないからな」

 ジョーはウィスキーを開き、一口含む。するとこれまでの渋い顔を嘘のように晴らしてしみじみと「確かに違いねえ、今日がいい日なのは旦那の御陰だ」と答え、「それで、人探しって一体誰なんだい」と次ぐ。

 「ジェイソン・ジェイン氏の跡取りさ」

 出てきた名前が意外だったのか、ジョーがやや驚いた表情で、「へえ、JJか。息子がいたんだな。でも旦那、あいつは確か何年か前に養子をとったそうじゃないか」と確かめるように聞く。

 「そうだ、妙なのはその点だな。十年も前に誘拐されてとうに諦めていた息子を、この時期に何故探し始めたのか。実は少しジェイソン氏の家政婦にかまをかけてね。どうも、再び脅迫状が届けられたらしい」

 ジョーは顔をしかめて、薄汚れた鼻頭を腕でさすり、少し考えるような仕草をする。厄介な仕事にはあまり関わりたくない、そんな反応だ。

 「なんだか厄介な話じゃあないですか。どう考えても生きちゃあいない息子をそれで探そうとしてるわけですか」

 「脅迫状に現在の息子さんの写真でも入れられていたのか、彼にそのへんを突っ込んだが、どうも煮え切らない答えしか頂けなくてね。その上、警察には知られたくないらしい。きな臭いが、痕跡を見つければ破格の報酬が約束されている」

 報酬という言葉に反応するものの、すぐにジョーは首をかしげてしまう。自分に関わりのない事だと悟ったからだ。

 「はあん。でもそれじゃあ俺はお役に立てそうに有りませんぜ」

 ウィリアムは顔を僅かに歪めると、少し気になることがあってと、先を続けた。

 「いや、その件とは別件でね、少々聞きたいことがある。地下の教会のことを覚えているか」

 少し考える仕草をし、ジョーは顎をさすると間を置いて答えた。

 「ああ、グレイス神父の手作り教会でしょう、覚えてますぜ。作りモンの太陽と月が掲げられてる」

 「私が地下にいた頃には気にならなかったが、どうもあの神父がこの件に一枚噛んでいる気がしてね」

 何か思い出したのかジョーはああそう言えばと付け加える。

 「でも旦那、あの神父、数年前に姿をくらましてます。確か三年ほど前だったか、今じゃあシスターが代わりに布教してるみたいだが、あんな綺麗な顔して訳ありなんでしょうね。可哀想な子だ」

 「シスターか、私がいた頃には見たことがないな」

 「そうでしょう、俺もこの目で見るまでは信じられなかったんだ。なんでこんな地下にわざわざってね」

 「そこで、教会まで案内を頼みたい」

 「でも旦那、案内ったって、旦那も知ってるんじゃあ」そこで、ウィリアムは目配せをした、合わせていた目線を外し、自分の背後に向けている。それに誘導されてジョーが視線をウィリアムの背後に向かわせると、建物の物陰に何者かの姿が隠れている事がわかる。

 ウィリアムはビルの廃墟に入る前から自分がつけられていることを知っていた。ジョーは一度頷くと、渡されたライトを片手に「じゃあ旦那、行きましょうか」と言って立ち上がり、廃墟の奥へと向かった。


 ウィリアムとジョーは地下の金属はしごを下り、ネズミが走り回る下水の川を横切り、幾度か無人のホームを横切った。やがてそれでも背後からの影が振り切れないことを悟ると、鋭角に曲がる下水通路の先で影の人物を待ち伏せた。

 すぐに現れた影の首を一瞬で片手で押さえ、ウィリアムが杖を横にして壁に押し付ける。

 暴れる気配を見せつつ、結局、影は必要以上の抵抗はしなかった。

 「待って、ウィル。私よ」

 影が息苦しそうにそう声を上げた。

 「なぜ君がここにいる、私の後をここまでつけるなんてどうかしている」

 「貴方はさっき、私に何かを隠していたわね。神父殺人について、何か知っていることがあるんでしょう、だから悪いけれど、後をつけさせてもらったのよ」リヴは明かりの無い不確かな足元を歩いたせいで大部服を汚していた。ウィリアムはそれを見て首を振る。「君はここがどういう場所かわかっていないようだな」

 ウィリアムが言葉を切るとすぐに、下水の暗がりから数人の住民が顔を現した。

 誰もがリヴに対して責めるような、鋭い視線を向けている。

 「なんだ、旦那の知り合いなのか、あんた、ここに知り合いもいないのに女一人でここを歩くなんて自殺行為だよ、ここにゃ俺たちの他にも悪餓鬼やら悪魔崇拝者サタニストなんかもいるんだからな。ここで生活するにゃ、そういったポイントをうまく避けなきゃあならんのさ」

 ジョーは呆れ気味だ。ウィリアムの馴染みだと知って、言ったところで無駄だろうと悟っているのだろう。仕方ないなと言い、ウィリアムは腕を緩めると彼女を開放した。

「ここまで来てしまったんだ。私達の教会を紹介しよう、もっとも、私はもう何年も足を運んではいないがね」

 ウィリアムはジョーにそれじゃあ旦那、俺はどうしましょうと聞かれ、戻ってくれと答える。

 ジョーはまたその内と挨拶を終えると、他の者たちと暗がりに消えていった。

 彼らは光が無くてもある程度の道ならば進むことができた。

 住人達が消えるとリヴに向き合い、ウィリアムは彼女に追求する。

 「さて、なぜそこまで必死になるのか。教えてもらいたいものだ」

 ウィリアムがライトを片手に杖で床を突きながら、リヴの答えを待った。


 リヴは難い表情を浮かべ、言いたくないことを渋々答えるようにして言葉を洩らした。

 「私はあの殺人の一件目に立ち会ったのよ。首を裂かれた神父は、よっぽど苦しかったんでしょうね、見に耐えないほど歪んでいた。誰にもあるでしょう、一度立ち会った事件には最後まで首を突っ込みたくなるものよ。事件から外された日、私は我を忘れるほどの酒を初めて飲んだ。その内、殺人が繰り返されると共通点が見つかり始めた。それがこの都市の地下に関わることだった、だからもしかしたらあなたになら、そう思ったのよ」

 言い終わった彼女の口は硬く結ばれたままだ。

 ウィリアムは固く閉じた口の端をわずかに緩める。暗い坑道のような道筋を照らす、ライトの光が揺れた。

 「成程、君が階段で酔い崩れていたのはその日か。そうならそうと、初めから私に依頼すればいい。全く、君の意地には敬意を表する」

  蒸し暑さでそれぞれの肌には玉のような汗が滲み出ている。 

 「でもウィル、あなたが犯人だって可能性も捨てきれないのよ」

 「それなら私は今、君とこんなところを歩いてはいないさ」

 冗談を交え、二人はお互い普段に戻ったことを確認する。

 「それもそう、けれど。一体どこに向かっているの」

 「先程の説明通り、教会だ。地下の教会、随分昔に酔狂な神父が作った教会があるんだよ。地下の人間のために、だそうだ。しかし、どうやらその神父も今は居ないらしい。代わりにシスターが説教をしていると言っていたな」

 「こんな場所に教会、本当に酔狂ね、でもそれが誘拐とどうつながるの」

 「私は五年前、ここを出るまであしげくその教会に通って引きこもっていたのさ。かつてはここの住人だった」

 「まさか、そんな風には見えないけれど」

 二人が歩きながら話すうち、コンクリートの壁がかびた煉瓦レンガの壁に変わり始めた。どこからか、冷えた風が吹き込み、肌をなでつけた。汗が顎からぬぐい取られ、床へと落ちた。

 「人には歴史があるということだ。触れられたくない歴史も」

 「なら、今回の事件もあなたの知り合いか、あなたである可能性が高いわけね」

 「それは否定しない、私はグレイス神父が怪しいと思っていたんだ。誘拐に関してはね。彼は地下では偽名を使っていた。元は地上の教会で献身的に布教を続けていたんだ。ある事実が発覚するまでは、だがね」

 「事件って?」

 「彼は男を買っていたんだ、それも若い少年を。失職した神父は地に下った、その翌年から男児ばかりが誘拐されている。その中にはJJ氏の御子息も含まれていた」

 「なぜそれを知っていながら」

 責めるリヴにウィリアムは正面から目を合わせ、答える。

 「私はその頃、事件自体を知らなかったものでね、知っていたらなんとかしていたさ。ところが、御子息の誘拐を最後に事件は起こらなくなったんだ」

 「その間に何があったのかしら」

 「さあね、拐った子供がJJ氏の息子だと知って神父に欲がわいたのかもしれない」

 「そのために教会に向かっているのはわかるわ。でも殺人とは繋がらないじゃない」

 「その点は先程ジョーに確認を取った。神父が姿を消したのは四年前、最初の事件が起きたのが三年前だ、それから一年ごとに殺人が起きている。そして大きなポイントが一つ、JJ氏が養子をとったのも三年前、何か意図があると思わないか」

 「面白い符合じゃない、確かに偶然としてはできすぎているわね。それで、あなたはグレイス神父を疑っているのね」

 「そうだ、恐らく復讐と遺産を狙っているのでは、とね」

 「でも、おかしいわ。JJ氏はなぜ息子さんを探しているの」

 「問題はそこだ、君にはまだ伝えていなかったが、JJ氏に脅迫状が送られている。その中身をまだ確認していないものでね」

 リヴは目を見開き、悔しさを露わにして側らの壁を一度叩く。

 「脅迫状、なぜそんな大事なことを私に黙っているのよ」

 「このまま、君たち警察にうやむやにされるのはこちらとしても困るんだ。それに、君もわかるだろう。脅迫状が事件と繋がるとわかれば、君も手出しができなくなる」

 「それはそうだけれど。わかったわ、一先ず教会に行くことが先決ね。それにしても、もっとましな道はないのかしら」

 リヴは汗を拭い、足を上げてヘドロの付いた靴を、顔をしかめながら指さした。



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