4話 使い方
たかしは悩んでいた。
せっかく、とんでもない力を手に入れたのだ。
何かやってみたい――そう思うのは自然なことだった。
彼には一つ、癖がある。
何かに悩んだとき、行き詰まったとき。
それを口に出し、言語化することで、自分の中で整理するのだ。
アーカーシャを手にした今、その必要は本来ない。
だが、人間である以上、その癖は心地よく残っていた。
「さて、何にしようか。せっかくこんな力を手に入れたんだしな」
独り言のように、思考を垂れ流す。
「世界征服……ありきたりだけど、悪くはない。けどなあ、今の日本の娯楽文化を壊したくない」
少し考え、視線を天井へ向ける。
「どうせなら、もっと楽しそうなことがいいな。俺の趣味に関係するか、あるいは日常の延長線上か……」
そこでふと、思い至る。
「……そうか。金の制限がなくなったんだよな」
口元がわずかに緩む。
「じゃあ、普段は渋るような使い方、してみるか」
一瞬の間。
「まず思いつくのは……女か。まあ、ありだな」
だが、すぐに首を振る。
「いや、それで終わりだな。その後がない。別に誰かと付き合いたいわけでもないし」
思考は次へ移る。
「じゃあ……そうだな。ちょっと高めのPCでも買うか」
そこで、ふと立ち止まる。
「いや……いっそ、煩わしいものを全部なくすか。いや、違うな。俺の代わりにやらせるか」
そう言って、彼はアーカーシャを操作し始めた。
まるでプログラミングでもするかのように、機能を定義し、役割を与えていく。
「――これでいい。聞こえているか」
『はい、聞こえています』
即座に応答が返る。
「お前のやることは分かっているな」
『はい。あなた様が煩わしいと感じること――人間関係、あるいは各種工程の一部を、私が肩代わりいたします』
「うん、それでいい」
少し考えて、たかしは続ける。
「名前は……どうするか」
『お好きにお呼びください』
「じゃあ、シャーで」
わずかな間を置いて、返答が来る。
『――アーシャとお呼びください』
「……そうか」
深く考えることもなく、たかしは頷いた。
「じゃあ早速、俺ちょっと女抱いてくるから。よさげなPC、注文しといてくれ。金は――」
『金塊を生成しておきます。肉体の調整は最適化済み。高性能PCに関しては、現行人類の技術水準を逸脱しない範囲で作成いたします』
「助かる。よろしく」
そう言って、たかしはあっさりと部屋を出ていった。




