2話 その名は 小野隆
ある日、世界は驚愕した。
ダンジョンが出現してから、早五年。なぜ存在するのか、誰が作り出したのか、あるいは上位存在は本当にいるのか――そんな議論は絶えなかった。
だがその日、それらすべてに答えを示す“事件”が起きた。
自らを「世界の創造主」と名乗る存在が、突如として世界中に現れたのだ。
それは各国の主要都市、その上空に同時に出現した。
姿は、巨大なローブをまとった“影”。中を覗こうとしても、何も見えない。ただ、そこに“ある”としか言えない存在だった。
ゆえに人々は、それを“影”と呼んだ。
その存在は、まず力を示した。
朝を夜に、夜を朝に変える。惑星の配置を変える。重力の影響を無視しながら、それでも世界を破綻させない。
本来なら0.1でも狂えば成り立たないはずの宇宙の構造を、いとも容易く書き換えた。
さらに、世界各地に金の雨を降らせ、地球上の水を一時的に消し去る。
それでもなお、世界は崩壊しなかった。
その圧倒的な力を前に、人々は理解した。
――これは本物だ。
――この存在こそが、この世界を作ったのだと。
そして、“影”は告げる。
「小野隆。この者に、世界のすべてを与えた」
それだけ言い残し、“影”は消えた。
直後、世界は混乱に陥る。
小野隆とは誰だ。
各国は即座に動き出した。著名人から一般人まで、同姓同名の人物を徹底的に洗い出す。
そして最後に残ったのは――一人。
日本、東京在住。独身。一人暮らし。年齢27歳。
何の変哲もない、ただの男。
だが今や、その男が“世界のすべて”を持つ存在であることを、疑う者はいなかった。
各国は、彼への接触を開始する。




