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15話 力の使いどころ

「何か欲しいものとかある?」


たかしさんが、軽く聞いてきた。

その目は、どこか期待しているようにも見える。



(わくわくしている)



「いえ、特に不自由は……」



「そっかー」



目に見えて肩を落とした。



(あ、落ち込んでる)



「ただ」



窓の外へ視線を向ける。



「ん?」



さっきまでの落ち込みが嘘みたいに、

顔を上げる。



「この辺りの方たちは、不便そうだなと」



―――――



「へえ」



タカシは、一度だけ相槌を打つ。



―――――



「高齢の方が多いのに、バスの本数が少ないですし」



室内が言う。



「車も、ほとんど見かけません」



アーシャが付け足す。



「移動手段が、限られているように見えます」


「……なるほど」



タカシは、少しだけ考える。



―――――



「うん、了解」



―――――



数日後。



停留所の前を通りかかったとき、ふと足を止めた。



時刻表に目をやる。



本数は、むしろ減っていた。



その代わり、月曜日と木曜日に便が増えている。



―――――



そのことを報告すると、タカシさんは言った。



「それ、僕がやったからね」



なぜ、と疑問に思った。



本来なら、この問題を解決するなら、

本数を増やすべきではないか。



「なぜわざわざ本数を減らしたんですか。

普通は、こういう時ってバスが出る本数を増やした方が便利になるんじゃ」



「?」



タカシは、少し首をかしげる。



「問題は、バスの本数が少ないことじゃなくて、

必要な時に移動手段がないことでしょ?」



「そうです。ですから――」



「確かに、“数で補う”っていうのは手段の一つではある」



少しだけ楽しそうに、言葉を重ねる。



「ただ、それは大量のリソースを運ぶ時だけだ」



「少ないものを運ぶなら、むしろ時間を固定した方が効率がいい」



―――――



「後は、村の人たちとの話し合いだね」



「集会を開いて、買い物と病院の日にちを

月曜日と木曜日に固定してもらったんだ」



「こういうのって、個人の都合とかもあるから

みんなあまり話したがらないけど」



「話してみれば、案外融通が利いたりするから」



―――――



「大都会とか、人が多い場所なら話は別だけど」



「この規模なら、話し合いで解決できるんだよ」



―――――



「結果的に、月曜と木曜にバスを集中させた」



「もちろん、バス会社も関わってる」



「本来なら、決定に時間がかかるところだけど」



「田舎は、そういうのが早いから」



―――――



僕は、言葉を失った。



タカシさんは、あの謎の力で物事を解決する人だと思っていた。



まさか、こんな形で解決しようとするなんて。



―――――



一週間後。



やることがなく、僕はこの村を観察していた。



以前は、移動手段に困っているように見えたこの村も、



今は少し違って見える。



―――――



平日は、学生の通学と帰宅に合わせてダイヤが組まれている。



テストの日などは、変更も検討されているらしい。



―――――



月曜と木曜は、バスが集中する。



その時間帯には人が集まり、



自然と会話が生まれていた。



―――――



行き先は、ほとんどが同じだ。



スーパーか、病院。



―――――



結果として、小さなコミュニティのようなものができていた。



―――――



ただ、一つだけ。



明らかに見覚えのないものがあった。



―――――



バスの停留所が、大きくなっていた。



いや、正確には――



座敷のような造りに変わっていた。



靴を脱いで上がる形式だ。



―――――



「何ですか、あれ」



「さすが、室内くん。

あれに気づけるとはね」



少し誇らしげに、タカシは言う。



「あれは、田舎の広さを贅沢に使った停留所だよ」



「見れば分かります。

なんであんな感じにしたんですか」



―――――



「バスの本数を減らすとさ」



タカシは、少し楽しそうに話し出す。



「待ち時間が増えるってことはどうやっても避けられないんだよね」



「なら、いっそ、バスを待つところを、心地よく休める場所にすればいい」



―――――



「だから、広くした」



「中でゆっくりできるようにね」



―――――



「冷暖房完備」



「スマホの充電もできる」



「非常用の電話も置いてる」



―――――



「いいでしょ?」



少し得意げに笑う。



「なかなか、悪くないと思うんだけどな」


今日 田舎では

ただ 暇で、バスを待つだけの 停留所は、週に2回仲のいい人たちが 和気あいあいと話す、憩いの場になった。


たかし「なんか、めっちゃすげえことしてーーーー」

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