オルゴールの音は●●●●●のサイン
あなたはとても気を使う人でした。
だから亡くなった時もいい季節で。
葬儀の日も秋晴れで、弔問に訪れた人に迷惑がかからなかったです。
暑さ寒さは大変ですものね。
あなたの葬儀から一ヶ月。
大分冷えるようになりました。
そしてあなたが生前修理に出していたオルゴールが戻ってきたのです。
懐かしいですね。
わたくし達が結婚した時に作った、あなたの好きな感謝の歌と、わたくしの好きな愛の歌を奏でるオルゴール。
昔はしばしば聞いたものですが、壊れて鳴らなくなってからは置物と化していました。
それでも見るたびに新婚の頃を思い出したものです。
……あなたはよく言いました。
わたくしのことを鈍いと。
そんな鈍いわたくしでもわかります。
黄泉路への旅立ちが近かったあなたが、わざわざ修理に出したのですもの。
何か意味があるってことくらいは。
ぜんまいを回すと始まる音楽、あなたの好きな感謝の歌です。
続いてわたくしの好きな愛の歌。
三〇年前と変わらない、心に響く音色だわ。
思わず涙がこぼれます。
ん?
音楽が終わった後に、ピンピンピンピンピンと五回ピンが弾かれた音がしました。
何でしょう?
こんな音、昔はなかったです。
修理から帰ってきたばかりなので、壊れているということはないでしょうし……。
……いえ、この音からは意思を感じます。
あなたが何らかの意図を持って付け加えさせたものですね?
自分の死後、必ずわたくしが聞くだろうからと。
うふふ、鈍い君に解けるかと、問いかけられているようです。
ピンピンピンピンピンですか。
『サヨウナラ』のサイン?
それとも『アリガトウ』かしら?
いいえ、違いますね。
何故ならあなたはキザで格好付けで、人に気を使う性格だから。
きっとわたくしが大好きなあの言葉。
でもあなたはなかなか言ってくれなかったわね。
ああ、息子が帰ってきましたか。
「ただ今戻りました」
「お帰りなさい」
「あれ? どうしたのです母上。いいことでもありましたか?」
「そうですね。息子が立派になったので嬉しくて」
「ありがとうございます。でもウソを言ってもわかりますよ」
「えっ?」
「母上のその顔、恋する少女のようです」
まあ、息子ったら鋭いのですから。
あなたに似ていますよ。
ありがとう存じます。
あなたが逝って、わたくしの心に穴が開いていたのです。
でもこれからはいつでもオルゴールであなたの気持ちを聞けます。
あなたの好きな感謝を込めて、わたくしにも言わせてください。
『アイシテル』と。
1000字に収めようと文章を削いでいったら、異世界らしいところがなくなってしまいました(笑)。
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