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作者: kkk
掲載日:2025/11/24

駅前のベンチに腰掛けて、木村は今日も人を眺めていた。といっても、決して怪しい趣味があるわけではない。


眠そうにコーヒーを口に運ぶサラリーマン。

鞄を傘代わりに小走りする女子高生。

電話をしながら、涙をこらえる若い父親。

のんきな鳩におびえる幼い子ども。


そんな姿が、どうしようもなく愛おしかった。


木村は鞄の中からスケッチブックを取り出した。

白い紙の上には、この街の日々の断片が生きている。彼は今日も、人を描く。


ある日の夕方、木村は泣いている少年に出会った。

ランドセルの肩ひもをぎゅっと握りしめて、悔しさと悲しさをどうしていいかわからない表情だ。


「どうしたの?」


できる限り優しい声で尋ねると、少年は言葉をつまらせながら答えた。


「友だちが・・・ぼくの描いた絵を、下手だって笑って・・・。」


木村は少年のもつスケッチブックに目をやった。


「その絵、見せてもらってもいいかな?」


少年は迷いながらスケッチブックを差し出す。

そこには、友達3人と笑っている自分の絵が描かれていた。

線は不揃いで、色もはみ出している。


「いい絵だ。」と木村は言った。


少年は驚いた顔をした。「ほんとに?笑わない?」


「笑わないさ。君の絵は本当にいい絵だよ。」


少年は唇をゆがめ、そして小さく笑った。

泣き顔のままの笑顔は、世界のどんな宝石よりきらきらしていた。


「ねえ、おじさんはなんでそんなふうに言えるの?」


木村は少し考えてから答えた。


「みんなとても楽しそうだからだよ。君の気持ちが、よく伝わってくる。」


少年は絵を胸に抱いた。

夕日が差し込み、彼の目の奥できらめく光が、少しだけ強くなった気がした。


「ぼく、もう一回描いてみる。もっとうまく描いて、みんなに見てもらいたい。」


少年が走り去るのを見届けて、木村はまたスケッチブックを開く。

人は今日も、泣いたり笑ったり、すれ違ったり寄り添ったりしている。

その一つひとつが、彼の胸の奥に落ちていく。

彼は人が好きなのだ。


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