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【本編完結】攫われ姫ゼシカの実記 ~攫われる姫に転生しましたがこの国はもう駄目なのでこのまま嫁いで記録官として生きますね!~  作者: 縁代まと
番外編章

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【番外編】オールドミネルバの不死鳥 前編

作中の時期:最終回後

出演キャラ:ゼシカ、アズラニカ、アスター、サヤツミ


簡単なあらすじ:

ゼシカはアズラニカとの息子、アスターを連れて魔王の物置きへ結界の定期チェックに向かいますが……?



 ナクロヴィアでもファルマでも、朝には鳥がさえずり始める。


 違うのは遠くで訓練中のドラゴンの咆哮まで風に乗って聞こえてくるところだけれど、慣れてしまえば心の中で応援する余裕も出てくる。

 カーテンの隙間から射し込む光に目を細めながら伸びをしていると、いつの間にか隣で眠っていたアズラニカも目を開けていた。

 でも今日はいつもよりボーッとした寝起きみたい。


「おはよう、アズラニカ。まだ眠い?」

「おはようゼシカ。いや……少し夢を見てな」


 アズラニカは夢を見ても内容を覚えていないことが多いそうだけれど、どうやら今日は印象に残る場面があったらしい。

 ベッドサイドに腰掛けて内容を問うとアズラニカは少し遠いところを見るような目をした。


「私が幼い頃に父が鳥の雛を拾ってきた夢だ」

「あら、父ってことは……魔王ラジェカリオが?」

「ああ。両手に乗るほどの雛でな、しかし調べてみても種類がわからなかった。視察先で保護したと言っていた気がするが未知の大型鳥類だった可能性がある」


 なんでも雛は成長するにつれ想定していた以上に大きくなり、しかもそれがほんの数日間での出来事だったためラジェカリオは元の場所へ帰したのだという。

 アズラニカは幼いながらも鳥を心配したけれど、その頃にはその辺の野生動物になら余裕で勝てる貫禄があったそうだ。


 それは手帳にも書かれていないくらい短い日常の一幕だった。


 ナクロヴィアには母国では見たこともなかった生物が多く生息しているけれど、ここで生まれ育ったアズラニカでもわからない生き物がいるんだなと思うと意外ね。

 久しぶりに父の顔を見れて良かった、とアズラニカはゆっくりと起き上がる。


 その時、廊下のほうで元気な足音が聞こえた。


「パパ、ママ! ねぼうしてる!」


 水色の髪に水色の目、そして小さな角を持つ少年。

 ――今年で四歳になる私たちの息子、アスターだった。


 今日はオールドミネルバへ親子で向かうことになっている。

 アスターはまだ雪を見たことがないので、話が出た時から終始そわそわしていた。

 時間通りよと笑っても本人は「はやくはやく!」とその場で足踏みを繰り返して急かしている。楽しみすぎてかなり早起きしたみたいね。


 本来の目的はオールドミネルバにある魔王の物置きに張り直した結界の定期チェックだ。

 でも広く、そして様々な文化の入り混じるこの国をアスターにも早い段階で感じてほしくて私から発案した旅行でもある。

 直接見て触れて色んなことを学んでほしいわ。


 もちろん本から得られる情報も大切にしてほしいから、事前に旅の要点やちょっとした雑学を交えた子供向けの冊子をアスター用に作っておいた。

 ……旅のしおりなんて作ったの、いつぶりかしら。私も楽しんで作れた。


 着替えてからはしゃぐアスターに「まずはご飯を食べてからよ」と言い聞かせ、三人で食事をする。

 その途中で髪がボサボサになったサヤツミが加わった。

 なんでそんな髪なのかと思ったら、なんでもアスターと出掛けられるのが楽しみで寝つきが悪かったので気分転換にお城の屋根に寝転がっていたらしい。

 そしてそのまま寝てしまった、と。


「……四歳児レベルなのにやってることが桁違いだわ」

「魔神でも楽しみなものは楽しみなんだ、仕方ないだろ? それよりアスター! 向こうに着いたら色んな店を見て回ろう!」

「うん!」


 アスターは元気に返事をし、サヤツミは更にニコニコしていたけれど直後に「ドラゴンじゃなくて俺が担いでいけばもっと早くに着くのになぁ」と呟いていたので、それは止めておいた。

 移動している間も学びは多いもの。

 ――あれから成長したクランが今でもサヤツミに連れ回された後はぐったりとしているのを見てるせい、っていうのも理由のひとつだけれど。


      ***


 そうして準備も終わり、私、アズラニカ、アスター、サヤツミは移動用ドラゴンの背中に乗って城から飛び立った。


 留守は優秀な宰相たちが守ってくれる。

 ファルマも落ち着いてきたから私が不在でもなんとかなっているわ。

 だから今回の旅行はアスターにたっぷりと時間を割きましょう。


 道中のアスターは水色の目を輝かせてはしゃいでいた。

 どこを見ているか視線で丸わかりなくらいだ。きょろきょろという擬音がとってもよく似合う。


 それでも子供は子供、午後になると突然電池が切れたかのように寝てしまった。


 予想はしていたので用意しておいた専用のベルトで私の体に固定する。

 ドラゴンの上で両手が塞がるのは危ないからとリツェが作ってくれたものだ。古代の神の封印作戦の際にした料理や裁縫の経験から物作りに目覚めたという。

 あの時の経験そのままではないけれど、みんなで頑張ったことを起点に新しいものを見つけたのなら私も嬉しい。


「ゼシカ、しばらくしたら交代しよう」

「いいの? ドラゴンに指示を出すのが大変なんじゃ……」

「賢いドラゴンなら簡単な指示で飛ぶ。むしろ暇なくらいだ。あと」


 魔王としての仕事で構ってあげられないことも多いから、私もアスターと触れ合いたい。そう言ってアズラニカははにかんだ。


 そういうことならお言葉に甘えましょう。

 サヤツミも抱っこしたそうにチラチラと見ていたけれど、彼はベルトもなしにドラゴンの上で真っ直ぐ立ったりするので今は我慢してもらおうかしら。

 大丈夫ってわかってても親としてちょっと心臓に悪いわ。


 そんなこんなで間に休憩を挟みつつ進み、予定通り中継地点で宿をとって休む。

 目的地に近づくにつれ景色は変わり、その都度アスターは物珍しそうにしていた。


 道中で見聞きしたものは私にとっても新鮮なことが混ざっている。

 これは記録官としての血が騒ぐわ。

 今はアスターもいるしメモ程度しか集中して書けないけれど、城に帰ったら一気に纏めちゃいましょう!


 そうして時間は経ち、オールドミネルバの近くまで来たところで――初めて訪れた時とは明らかに違うことに気がついた。

 それはアズラニカにも伝わったようで、私を振り返ってこくりと頷く。


「……気温が高いな」

「やっぱりそうよね、前はこの辺りですでに着込んでたのに」


 季節も似た時期だったのに天と地ほどの差がある。

 これはもしや、とオールドミネルバに到着するなり住民に話を聞くと、不死鳥が完全復活したらしい。


 オールドミネルバの不死鳥。


 それは魔王の物置きを守護する存在で、古くからオールドミネルバで親しまれている生き物だった。

 初めてここに来た時はちょうど蘇るために灰に戻っているタイミングで、その影響から辺りは雪に閉ざされていたけれど――その後に不死鳥が復活し、気温が徐々に戻っている、と報告は受けていた。


 ただし不死鳥は蘇った後もすぐに最盛期に入るわけではなく、数年間は成長を待ちながら静かに暮らしているらしく目撃例は少なかったらしい。


「この様子だと完全復活は本当らしいな」

「魔王の物置きに行ったら会えるかしら?」


 その可能性は高いとアズラニカが言うと、話を聞いていたアスターがアズラニカのマントをぐいぐい引っ張った。

 どうやら不死鳥を見てみたいらしい。


 私も壁画と逸話くらいで直接は見たことがないから、実際に目にできるなら見てみたいわ。――と、そう思っているとサヤツミが「ゼシカもアスターも同じ顔してるね!」と肩を揺らして笑った。


 ひとまず今日は宿で一泊してオールドミネルバ観光、そして明日は魔王の物置きへ出発よ!

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