01 まずは自己紹介を
少年の助力で俺の壮絶なループは呆気なく終わった訳だが、「サンキュー、それじゃ」で終われるはずないだろ?
なんで“俺が“ループしたのか。
俺には知る権利があるだろ?
「タクマ〜。おきゃくさんっ」
当然の権利を主張する為に、屋上で会った少年の元を訪ねた。そういえば名前聞かなかったな。時間なかったし。タクマが人違いだったらどーしよ。
小学生くらいの子供に背中を押されて階段を登った。
「よく来たね」
見覚えのある少年の姿にホッとする。
タクマさん、でいいのかな?
「違うけど、それでいいよ」
想定外。違うなら名乗ってくれてもいいのに。
「長いからな。タクマって呼んでる」
部屋にはもう一人、長身でサングラスの男がいた。
「タクマから聞いてる。よく頑張ったな」
あ、、泣きそう。
1日にも満たない時間を延々と繰り返していた。
独りで。
数時間で終わる世界で信頼関係を築けるはずもなく、頭の可笑しい奴止まり。
ずっと独りだった。
すごく…、
すごく久しぶりに“会話“をした気がする。
泣いてなんかいないけど、つい、目線が下がる。感謝とかが気まずいのも少し。
とりあえず、助けてもらったお礼を伝えないとだよな。
「違うけど、気にしなくていいから」
そこは気にするだろ。
そもそも、なんで俺がしたんだ?
法則とか事情とか、わかってるんだろ?
だから助けに来たんだし。
「必要か?」
サングラスのせいで表情が窺えないけれど、牽制ではなさそうだ。
もう二度とループなんかしたくない。あんなのはもう懲り懲りだ。原因の排除なり回避の方法くらいは知りたいと、拙いながらも訴えた。
「知らない方がいいよ」
今度はタクマだ。
守られているのか、蚊帳の外なのか計りかねる。
自分はもう知ってしまっている。“ループ”を。
なら、関係者として扱ってもいいだろう?
俺はそのつもりでここに来た。
「知らなくても、立っていられるだろう?」
立つだけなら知らなくても出来るだろう。なんの知識が必要なのかさっぱり分からない。
「星の引力に引かれているから君は立っていられる」
だから、それがなんなんだ。
立つだけに知識なんて必要ない。そんな分かりきった事を今更語られても困る。
「引力を発見したのはアイザック・ニュートン。万有引力はその名の示す通り全ての物質に作用する」
だからさぁ、もう…
「そして、質量が引力を発生させる謎を解明するのは、………誰だろうね」
誰って、………。
もしかして、解明されて、ない?
「知らなくても、君は立っていられるだろう?」
これは……不味い?
俺には何も教えて貰えない感じな流れだ。
「もしかしたら、星の中心にはドラゴンが住んでいて魔法で重力を発生させていたり、異世界人がループを使って地球を改変しようとしてたり。してるかもしれないね」
はぐらかされてる。
ループについて何も分かっていない?そんなはずない。だって、助けに来てくれたじゃないか。
知りたいんだ。自分に何が起こったのか。
「なら、手伝う?」
外された梯子からロープが降ろされた。勿論飛び付くんだけど、サングラスの男がタクマに声を掛けた。異議と受け取れる声音にもタクマは構う様子はなかった。
「大丈夫。問題はないよ」
その一言でサングラスの男は黙った。
自分は、あまり歓迎された存在ではないらしい。ここがどんな秘密結社なのかわからないけど、よろしくお願いします。
「よろしくだって。クグイ?」
タクマがサングラスの男をつつく。たぶん男の名前だろうか。久々井?九具伊?共食い?
「鵠の古名だとさ。クグイって呼ばれてる」
何やら不本意そうだけど、サングラスのせいで表情がつかめないんだよなぁ。
「はいっ、は〜いっ。わたし、こあっ」
悪の秘密結社に子供がいるとも思えないから、きっと大丈夫だろう。一応、助けてもらった訳けだし。でもループの謎も知りたい。むしろこっちメイン。
そして、タクマから活動内容を告げられた。
「“運命”を探してるんだ」