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13 変わったのは


この世界は悪意に満ちている。

やらなきゃやられる。

害悪とは戦わなくてはいけない。

生きとし生ける者として理不尽に屈する事はあってはならない。


敵の敵は味方とか、目の付け所の違う有能な奴も居たもんだ。

今回の事案に対してなら、クグイもタクマも大々的に俺の支援をしてくれる事だろう。

正義はこちらにある。


先輩面してられるのも今のうちだ。

必ずぎゃふんと言わせてやるっ。

どんな手を使ってもだ。




※所謂、『どら○も〜ん(ノД`)泣』をしました。





どんっ、


と机に証拠となる箱を置いて、これを見てくれとドヤってみたものの、さすがにこれだけではタクマも状況を飲み込めないだろうと丁寧な補足を心掛ける(俺、出来る男感)


クグイに今日のおやつを駅前のドーナツ屋で人数分買って来いってお使い頼まれてさ。行ってみたらびっくりだよ。同じ部活の先輩がいてさ。


で、この先輩が超いい加減な人なんだ。周りの奴らは面倒見が良いとか騙されてるけど振り回されてるこっちはいい迷惑でさ。小銭無いからって嘘ついてパシらされたり、彼女に永遠とか誓ってたり……。

そう!とにかく嘘付きなんだ。


で。

今日、決定的な詐欺にあって俺の我慢も限界になったんだ。


※回想―――――

『先輩ここでバイトしてるんすか?』

『試食いただきまーす。焼き立てうまっ』

『おまけ?あざーっす』

―――――――――


これだけ丁寧に説明すればどれだけ酷いことがあったか分かって貰えるはずと期待していたのだが、


「おかえり。ここの秋限定味食べてみたかったんだ」

「おやつ〜」

「…………(クグイ、無言でテーブルセット)」



お願いだから待って待って(汗)。

先に箱の中身を見てからもう少し話を聞いて欲しい。

箱の中には5つのドーナツが入っており、箱にも5個入りと書いてある。これで皆も気づいた事だろう。


そう、おまけが入っていなかったのだ。


おまけに関しては俺がもぎ取った戦果であり、配分に気を使わせまいと先に間引こうとしたのに……。

おまけが入ってなかったんだ。

詐欺だろ!


「アユムが食べたんじゃ、ないの?」


失敬な。

こっそりと食べようとしたら無かったという話をしているというのに。冤罪にも程がある。


「面白いでしょ」


「嘘ではないだろうが、どこが面白いんだ?」


「嘘をついていないとこ、だよ」


【嘘をついていない】【おまけ】【試食】とクグイがつぶやくと、なにやら納得したような顔をして俺を見ている。

当然だ、俺は嘘なんかついていない。

これでやっと対詐欺師の共同戦線を始められるぞ。


「アユム、試食を渡された時に何か言われなかった?」


タクマに言われて先輩との会話を思い出してみる。


※回想――――――

『やぁ、いらっしゃい』

『揚げたて食べてみる?不味かったらお代はいらないよ』

『お買い上げ有難う。1個おまけしとくね』

――――――――――


ほらな。

おまけしとくって確かに言ってるのにおまけが入ってない。これが詐欺以外のなんだと言うのだ。


「おまけ、アユムが食べてるね」


何故そうなる?


「試食、おいしかった?」


そうそう。揚げたてでカリカリで割るとホクッとしてさ。


「不味くなかったのに、お代払ってないよね?」


…?


………っ!

試食に金取んのっ?

やっぱあの先輩、詐欺だ。


「5個分のお金を払って5個のドーナツを買って、渡されたドーナツが5個。アユムは試食のドーナツを貰って得をしているはずなのに、何が不満なのかな」


そ、それは…、ええと…、あ、あれだ。

先輩の日頃の行いが悪いからであってだな。嘘ばかりついていると、信用をなくすという実例でわないだろうかという……うぐぐぐ。


「アユム」


タクマが向き直り、俺を真っ直ぐ見ている。


「嘘は嘘であり、嘘でなければ嘘ではないんだ」




………………。



みんな、どう思う?

俺は思ったね。

タクマが壊れたって。

知識の詰め込み過ぎって怖いな。勉強も程々にしよう、うん。


タクマのポンコツ発言で怒りやら焦りやらが落ち着いてきた。おまけ如きに熱くなるのは大人気ないよな、うん。



「天気予報が外れたら、気象予報士は嘘をついた事になるのかな?

手品師が種も仕掛けもございませんって言うのは嘘かな?

スポーツ選手が、実現できるかも分からないメダルを約束したら嘘になるのかな?」



くっ。

タクマのやつ、グレーゾーンばっかり持ち出しやがって。


「嘘は嘘と認識して発せられた言葉の事だよ。事実と違っていたとしても嘘と認識していないなら嘘ではないと思うよ」


けど、けどけど。

それなら彼女に永遠を誓ってたりとかはどうなんだよ。

永遠なんて達成不可能だって事分かりきってるんだから、嘘って事だろ?


「嘘ではないから、面白いんだよ」


そう言ってタクマは引き出しから何かを探してテーブルに置いた。


「これが何か知ってる?」


テーブルに置かれた2つの黒い石。

ご丁寧にカチカチと石を近づけてくっつけるヒント付。

磁石だろと答えると、惜しいと言いなおされた。


「永久磁石」


言い直す必要、あるか?


「あるよ。だって永久じゃないから」


ん?わざわざ永久磁石と言い直しておいて永久じゃないって、マッチポンプにしては雑過ぎないか?


「減磁といって、微量だけれども磁力は減ってるんだ。磁力を帯びなくなる日はいつかくるだろうね。永遠ではないよ」


マジか。

家にある磁石も石に戻ってたりするのかな。こんな身近に詐欺商品があるなんて油断し過ぎにもほどがあるな。


「あと、これも」


そういって取り出したのは、またしても磁石だった。

正確には、コンパス。


「残念」


残念ってなんだよ。惜しいでも言い直すでもなく残念って。

で、方位磁針か?方位磁石か?

どれも違うらしく、タクマは無言でコンパスの針を磁石でクルクルと回していた。


「地球、か?」


クグイの答えが突飛過ぎて驚いたが、タクマが正解と言ったから驚きを通り越して呆れてしまった。

タクマは、地球も磁力を帯びてくるくると廻る永久独楽のようだと言うのだ。


「永久では、ないけれど」


星にも寿命があって、大爆発した後にブラックホールになるらしいことくらいはなんとなく知ってる。気が遠くなるなる位、先の話だろうけど。


「76億年くらい先、かな」


ほらな。

孫とか玄孫なんて話じゃない。人類が存続してるかも怪しい位、先の話しだ。

そんな先の話よりも幼稚園時代に愛用していた磁石がどこに保管されているか気になって仕方がない。

どこかの引き出しか押入れかで、昔磁石だったはずの石が眠っているはずだ。早く確認しなければ。


「減磁は200年で1%くらい、らしいよ」


あ?

ええと……。


石になるまで約2万年?

ということは家にある磁石はまだ磁石である可能性が高い……訳だが。

いやいや、問題はそこではない。今さえ良ければなんて考えは良くないぞ。


減磁が起こるということは終わりが来るという事だ。

磁力が弱くなったと気付くまで最短数千年はかかるだろうが、そうなった時にどう責任を取るつもりなのか………。


責任?

そうか、そういうことか。


千年後なんて絶対生きてないんだ。

騙して逃げきれてしまえればいいという考えか、なるほどなるほど。

やっぱ、彼奴等詐欺だ。


無責任にもほどがある。絶対に責任を取らせなければ。


「責任を取れればいいんだ?」


それはそうさ。責任が取れないからこそ嘘をついちゃいけないって結論になる訳だし。


「彼は、責任を取るつもりでいるよ」


だからさ、永遠に生きるなんて無理なのに責任をどうやって取るのかとさぁ。


「永遠に生きるつもりも、騙す気もない。彼は永遠を約束した相手に対して永遠であろうとしているよ。

永遠は半分でも一部でも永遠だよ。ならこれは永遠の欠片だ。

永遠を約束した相手の生ある間愛し続けられれば。永遠は成されるんじゃないかな、その相手にとっては」


え、なに。

嘘じゃないってこと?嘘でしょ。

永遠の愛ってそんな重い物がマジであんの?


「知り合いか?」


「僕は会ったことないけれど、知ってはいるよ」


嘘つきの先輩が嘘をついていないことの衝撃を受け止めきれずにいる俺は、タクマの『その先輩に会ってみたいなぁ』という要望に追い打ちをかけられつつも、かろうじてスルーに成功した。


この場所のいじられ率をこれ以上上げてなるものか。



小銭ないからって嘘付いてパシらされた、いつかの話。


3年『おい1年、焼きそばパン買ってこいよ(奢りな)』

2年『可哀想に。まぁ、俺らも通ってきた道だから強く生きろよ(涙)』

嘘つき先輩『あ、僕のもついでにいいかな。小銭無いからこれで(お札ぱらり)』

3年共からは後で回収してます。

2年『(面倒見いいなぁ)』



アユム『買ってきました(おつりです)』

嘘つき先輩『さんきゅ。(財布じゃらり)』

アユム『、、、、(小銭あるじゃん、嘘つき)』


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