PHASE1 灰色の剣(改訂中)
こんにちは。初投稿です。へなちょこセンスです。
クソみたいな文法で各方面に失礼な作品ですが、
そういうもんです。ご覧下さい。
現代社会。この世界においてアストロクシアと言えば、魔物共が巣食う醜悪な島だ。それらを束ねる魔王『絶皇』を幾度となく、勇者たる存在『嵐勇』が征伐したというのが、読者の皆さん──すなわちヒトの歴史である。
無論そんな事はない。ここはアストロクシア。ヒトと魔物に留まらず様々な種の生命が手を取り合って繁栄してきた島国だ。その中心に建つ屋敷『泰永館』にこそ、正しい歴史の英雄達が住んでいるのだ。今日も、そんな英雄達に新しい一日の始まりを告げるべく太陽は昇る。
今回は、ある少女のある一日を追っていこう。
カーテンが柔らかくした陽光が少女の眼窩を刺激する。ゆっくりと体を起こした少女は、じっとりと汗をかいていた。巨大な毛虫と見紛うような、もっさりとした白髪が原因ではない。悪夢だ。顔色ひとつも変わらないこの少女は、ただ終わらない時の中で惨殺され続ける夢を見た。手足をもがれ、眼球を抉られ、純潔すらも……それは、少女の過去の記憶だった。
逃げる為に手を見る。肩とそれは繋がっていない、巨大で醜い獣の手。触れる全てを死に追いやるような、赤黒い血錆びた手。脚だって、股関節どころか膝すら無い。踝から膝下までのドス黒い棒切れだ。全てはヒトでなくなった証。
少女は惑うように起き上がり、救いを求める飢えた戦争孤児のような足取りで着替えに手を伸ばす。自分を繋ぎ止めてくれる何かを求めるように。自身が『鏖殺姫』である事を否定するように。
一話目からシャワーシーンである。汗を吸いきれなかった寝間着を洗濯カゴへ落とし、着替えを置いてから風呂へ。やたら広い浴槽には湯も水も張られていないが、少女は何もなく手近なシャワーの栓を赤色へ捻った。
ヘッドから放水される湯に、ただ顔を向ける。全身へ伝う湯は、汗を悪夢ごと排水溝へ押し込んでゆく。ネタが欲しいので溜め息でも良いので口を動かしてみてほしいものだが、悲しいかなこの少女はそのような事はしなかった。
「しゃあっ、朝風呂だ!」
「ちょいちょい、ドアはもっと静かに開けぇや!」
浴室のドアがマズイ音を立てて開いた。ハツラツとした声と共に、水色の髪を靡かせる少女と、それを追いかける茶髪の小娘が入ってきた。水色の少女は隣のシャワーを捻り、気持ちよさそうに汗を流す。茶髪の小娘はというと、先客の様子を気にしていた。
「ひゃー、やっぱりランニングした後のシャワーって気持ちいいよね……って、どしたのハカセ?」
「ん?ああ、定はんおったから落ち着かせとんねん。アンタがデカい声出した上にお風呂のドアエラい勢いで開けよったさかいな」
茶髪の小娘の視線の先、先客の少女──定が土下座をするように蹲り、巨大な手で頭を覆い息を荒げていた。まるで何かに謝罪をするかのように。時々啜り泣くような音が定から聞こえた。
「ああ……ごめんね、さっちゃん。さっちゃんって大きい音とか苦手だもんね、気をつけるよ」
「今回は、ウチが定はんに気づけたから良かったものの……気づかれへんかったら終わってたわ。とりあえず、髪乾かしたるから一緒に出よか」
「原因アタシだし、アタシも──」
「朝ごはんの唐揚げ、半分あげたり」
「そんなぁー!」
なんとか事なきを得た少女達は、髪を乾かし着替えを済ませ、食堂で飯を済ませた後だった。
「せや二人共、この後ヒマなら手伝ってほしい事があるんやけど、ええかな?」
茶髪の少女が口を開く。定は頷いて返したが、水色の少女は申し訳なさそうに返した。
「ごめんハカセ、今日はクラスの子達とゲーセン行く約束してるんだ」
「さよか。ほなら定はん、ちょっとウチに着いてきて。琉瑠歌はんは気ぃつけてな」
水色の少女、琉瑠歌と別れた二人はエントランスを横切ってすぐの部屋へ入る。そこには既に誰かがいた。艶やかな黒髪のポニーテールをリボンと戦がせる少女。その視線の先には、鳥のような魔物のハーピーがいた。
「来たで、彩花はん。で、ウチらは何をすればええんや?」
「採集」
ハーピーは静かに呟き、草の写真が複数ある紙を三人に手渡した。それだけである。今更だが、流石に読者の皆さんに意味が伝わらない為、以降は意味を書き足しておく事にする。
「これは……薬草か。採りに行くのはいいが、勿論君も来るだろう?」
「危雄」
(そうだけど、最近エリア内が危険な状態みたいで、ボディガードとして来てほしいの)
「あー、噂話はホンマやったんやな。近頃裏山で妙な人間がうろつきだした言うてな」
「その調査も兼ねて、俺達をボディガードという体で連れて行きたいとそういう事か」
ハーピーの彩花は頷いて返す。黒髪リボンはソレに同じ動きで返すと、一行は裏山へ薬草摘みのついでで調査を行う事になった。
裏山というのは、その名の通り泰永館の裏手にそびえる大山。動物達が安心して暮らせる理想郷であるココに、不穏な影があるという商人達の噂を聞いていた茶髪の娘は、浅黄の瞳をオーバルレンズ越しに光らせていた。黒髪リボンは薬草よりも山菜を多く摘んではいるが、周囲の物音や匂い、微かな動きにも機敏に反応している。その様子に安心感を抱く彩花は手馴れた動きでお目当てを少しずつ残しながら摘み取っていく。一方定の眼窩には何も映らない。穏やかな気配が安心するのか、ウサギを醜い手で器用に抱きかかえて茶髪の娘の後ろにいた。
「近頃魂繋の値段が高騰しとるんはコレが理由か。全然見当たらへんやん」
「……ん?皆、ちょっと来てくれ」
黒髪リボンの視線には、明らかに引きちぎられたような痕跡のある植物があった。乱雑なその跡は、他にも多く見受けられたようで、黒髪リボンはその写真を全て見せた。どれも似たような痕跡の写真だった。
「醜悪」
(ひどい……これは全て魂繋の根よ。葉の部分だけ摘み取れば、自然に次が生えてくるのに……)
「この裏山だけじゃない。各地にある魂繋がこのような形で採取されているとしたら……」
「噂の人間がやったんやろか?」
「可能性は高い。だが、親魔派なら摘み方は知っているハズだ。となれば、違法入国してきた者……外様だろうね」
その時だった。ここまで無言だった定がひどく怯えた悲鳴をあげて後ろに振り返った。その様子にただ事ではないと感じた三人は、臨戦態勢をとりながら同じ方へ振り向いた。
「ああ、すみません。驚かせてしまいましたか?」
白をベースに、紫や黄色のカラーリングが印象的な制服を着た人間が四人程、少女達の目に映った。ただ一人を除いて。
「ああ、君達だったのか。見ない顔だけど……そうか、他の親魔派が話していた新人というのは君達か」
「ええ。そして今日が最初の任務なんです。この山で不審な外様が確認されたとの事で」
「へぇ……とりあえず味方で良かったわ。でも、流石にペーペー四人でこないな山奥来さすわけないやろ。他に誰か来てへんの?」
「勿論、先輩方もいらっしゃいますよ。合わせて中隊規模で捜索にあたっています」
ここまで見て下さる方がいたとは。
のんびり趣味の域であげる予定で
未定ですので、待っててやるよという
方はそのままお待ち下さい。
またこんど!