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 懐からスマホ取り出してみると水瀬と表示されていた。


「……すいません、ちょっと失礼。あと、少し中身とか確認してみますので紙袋一回預かります」

「はい。わかりました」


 俺は店員さんに許可をとり、電話をでた。


「どうしたんだ?」

『お、司か!繋がってよかった!実は忘れ物しちゃって。本が入った茶色の紙袋なかった?』

「紙袋って……今手元にあるが」

『あーよかった!』


 電話越しでもわかるような深呼吸。

 だが、どこかわざとらしい反応に少し疑問が残るも、どうやら持ち主は水瀬らしい。


『ちょっと中身確認してくれ』

「ああ、ちょっと待って……おい、なんだよこれ……おまえ、一回この本のタイトル言ってみろ、多分違うかもしれないから」


 俺は紙袋の中身を見て驚く。これはヌード写真集だったのだが、そのタイトルに問題があった。


『なにって……確か「人妻熟女のカーニバル」……だったか?それがなんだ?』

「お前はなんつうもん持ち歩いてるんだ!引くぞマジで!」


 こいつにそんな趣味があったなんて……意外だった。

 え?もしかしてさっきの女定員さんが顔を赤くしてたのってこれが原因なのか?

 

『人の性癖なんて人それぞれだろ?』

「そんなことを言ってるんじゃない!こんなものを持ち込むなと言ってるんだ!」

『そんな怒るなって……それで、悪いんだけど、預かっておいてくれないか?今度司の家に行った時に取りに行くから』

「……自分で取りに来い。俺はこんな本を家に置きたくない」

『そこをなんとか!……本誰かに見られたくないし。おいておいたら絶対そこの店員さん見るだろ?俺行きづらくなるんだけど』


 もうすでに見られるぞ、とは言わないでおく。俺もその恥の一端を背負わされたんだ。


「……わかった。一つ仮だぞ」

『おお!さんきゅ!……じゃ、よろしく!』

「おい……切りやがった」


 水瀬には今度学食で一番高いものを買わせてやろう。

 心の中でそう決意するのだった。

 俺は紙袋を手に持つとため息をしながら帰ろうと思った。


「あの、大丈夫でしたか?」

「……あぁ、はい。大丈夫です」


 後ろから様子を窺っていたであろう、店員さんが心配そうに声をかけてきた。

 まぁ、大声出しちゃったし仕方ないか。謝っておくか。


「お騒がせしてしまってすいません。この荷物、友人のだったみたいで」

「そうだったんですか」

「もしかして中身見ました?」

「……はい、すいません」


 店員さんは顔を赤らめ謝罪してきた。謝る必要ないだろうに。

 一応謝罪をしておこう。


「お見苦しいものをお見せしてすいません。友人にはきつく言っておきますので」

「いえ、大丈夫です。でも、安心しました」

「……何がですか?」

「三組の片桐くんですよね?」

「まぁ、そうですが」


 はて?どこかで会ったことあるだろうか?

 ……でも、どこかで。……あ、もしかして。


「四組の……えーと」

「西野です」


 西野渚……隣のクラスの人だ。

 容姿も優れているが、普通より身長が低く、守りたいと思わせることから四組でも立ち位置はクラスで学級委員もしているアイドル的存在の人だ。

 

「西野渚さんでしたね。こうやって話すのは初めてですかね」

「ええ。……初めましてですね。あ、敬語はいいですよ。同級生ですし」

「そうか……なら普通に話させてもらおうかな」

「はい!よろしくお願いします!」

「西野さんも敬語いいよ」

「いえ、これが普段の私の口調なので、お気になさらず」

「そうか」


 それにしても西野よ。かなりやばいのではないだろうか?

 

「……あー俺がいうのもなんだが、一応、このことは黙っておいてあげてほしい。水瀬のためにも」

「あ、それはわかってます。さすがにいえませんよ。水瀬さんって女子から結構人気あるので。むしろ言ったところで信用されないかもですね」

「すまないな」


 お互い苦笑いを浮かべる。……それにしても水瀬は人気あるのか。

 あの容姿に性格だからな。

 だからこそまさかの熟女好きなのが残念だ。

 ……あ、そういえば西野さん安心したって言ってたけど何がだろう?


「あ、さっき安心したって言ってたけど、どう言った意味なんだ?」

「ああ、あの片桐さんにあんな趣味があったなんて……って少しショックを受けてただけなので」

「あのってなんだよ」

「いえ、そういう意味では……ここだけの話、片桐さんってファン多いんですよ?あの本見た時、まさか……て思いまして」

「ああ、なるほど。……まぁ、誤解だとわかってよかったよ」


 あっぶねぇ!

 これで誤解解けないまま過ごしてたらやばかったわ。

 それにしても俺にファンがいたのか。こういう話はあまり表立たないし、聞けてよかったわ!


 大変気分がいい。


「あ、仕事中すまん。あまり長居するのは申し訳ないから帰るよ」

「はい!お話しできてよかったです!また学校で」

「ああ」


 俺は西野さんと別れ、店を出たのだった。

 


 




 


 


 

 




「あははは、司マジ最高!」


 カラオケ店内、2階から様子を窺い一人笑いをながら身を隠す雄二。

 店は二階建てで、入り口近くにオープンの階段があり、下を除けば一階の様子を見る事ができる。

 妹を迎えに行くと言って別れたはずの雄二が何故ここにいるかと言われれば、ドッキリを仕掛けたのだ。


 題して「エロ本ドッキリ」

 もしも友人が変な本を持っていたらどんな反応を示すか……という、普通じゃない悪戯を仕掛けた。

 父親から拝借したエロ本を使った。

 普通では司の良いリアクションは引き出せない。普通じゃ思いつかなそうなドッキリじゃなければ普段は冷静な司の面白い反応しない。

 そう思ってのことだった。結果は成功であった。

 

 ネタバラシも本の中に「ドッキリ大成功、このメモ見たら電話してね!」と手紙を入れており、もしも読まなかったとしたら次の日にネタバレをしようとそんな軽いノリだった。


「まぁ、西野さんに見られたのは計算外だったけど、……まぁ、別にいいかな。どう思われようと関係ないし、西野さんって人の秘密守るタイプの人だし、大丈夫っしょ」


 雄二はどうにでもなるかと考える。

 今は目的を達成したことに満足したのだった。



 だが、この時の雄二は思いもしないだろう。

 まさかあのようなことになるなんて。


 

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