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 昼食を食べ終わり、クラスで水瀬との会話。


「なぁ、西園寺さんって可愛いよなぁ」

「あの容姿だ……誰だってそう思うだろうさ」

「それは世間一般視点の感想だろ?……司自身はどうよ」

「だから、俺も世間一般の感想と同じだからそう答えたんだ」

「つまり、お前も可愛いって思ってるんだな?」

「……いや、可愛いというより美しい…では?」

「ほう……」

「なんだよ?」

「あぁいや、なるほどな。芸能人で例えたらアイドルというより、女優って感じだもんな」

「……わからなくもないが……まぁ、そうだな」


 残りの休み時間も僅かになり、次の授業の移動教室もなく、することがない。

 授業の予習でもしようとしたら水瀬が話しかけてきたので、そのまま談笑をしていた。


 話の話題はクラスのマドンナ……西園寺美玲についてだ。

 

 誰とでも隔てなく接する彼女は今ではクラスで一番……いや、学年一人気がある。


 入学式以降、西園寺の噂はすぐに広まり一週間でその知名度を学年全員に轟かせた。このまま勢いでいけば全学年に知れ渡るのも時間の問題かもしれない。

 

 普通なら男に注目を集めると同じ女子生徒からは嫉妬され、嫌われるだろう。

 だが、西園寺は人柄の良さと誰とでも隔てなく接する……その手腕を見せいざこざを華麗に回避、今では全員からの憧れの存在という盤石の地位を手に入れていた。

 

 それも才能というべきか……素でやっているのかはわからない。だが、俺はそんな西園寺を恐ろしいと思った。

 ……まぁ、完全に嫉妬だが。

 

「おい、今西園寺さんこっち見たぞ?」

「……気のせいじゃないか?」


 ふと、西園寺の様子を窺うと一人で予習をしており、教科書片手にノートを取っているので、見ているはおかしい。

 そこまで会話の声は大きくないし、別に注目を集めるような内容を話しているわけじゃない。

 そんなことを考え導き出す答えで可能性があるとしたら。

 

「それか水瀬の妄想とか?」

「ちげぇよ。俺は確かに見た」

「……そうか、よかったな。マドンナ様はお前に気があるらしいな。よかったよかった。だが、妄想は大概にしろよ」

「いや、妄想じゃねぇって」

「なら仮に本当だったとして、なんでお前そんなこと知ってんだよ……ストーカー?……キモ」

「お前は俺をなんだと思ってんだ!」

「え?……なんでと聞かれると……うーん」


 ここはなんと答えるべきか。

 10秒ほど考える。


「……チャラ男?」

「さんざん悩んでチャラ男?!ひどくね?」

「だって……見た目そうじゃん」

「いや、確かにそうだけど!もっと他に言えることあるだろ」

「じゃーストーカーだな。一つ聞くがなんで西園寺のことがわかるんだ?……その回答次第でお前の印象を改めよう」

「はぁ」


 水瀬は頬をかきながらため息をする。

 すると、少し悩み、近づいて……は?近くね?


「おい、俺にはお前と違って男色の趣味はない!離れろ!」

「ちげぇよ。あまり人に聞かせたくないんだよ」

「……なんだ……それで……人に聞かせずらいその理由とは?」

「だからな……ゴニョゴニョ」

「……ほう」


 水瀬は耳元で周囲に聞こえないように話し始める。

 要約すると、気になるからついついみてしまうだとか。


「ふ……頑張れよ」

「おう」


 うんうんと首を上下に振りながら答える水瀬。だが、あくまでそれはそれ。これはこれだ。

 好意を持っているとは言ってもずっと特定の人物を見続けるのはやめた方がいいだろうに。嫌われたらどうするんだよ。


「高値の花狙いなんだな。……友人として応援してるぞ!」

「お……おう、ありがとな。……えっと他の人には」

「言わない。俺は自分で言うのは何だが口が硬いと自負している」

「そ…そうか」

「どうした?さっきから歯切れが悪いが?」

「いや、なんでもない。気にしないでくれ」


 水瀬は好きな人を言った後から様子がおかしい。話す時に視線を逸らしたり、先ほどまでハキハキと話していたのに。

 少し疑問を覚えるもこれは触れない方が良さそうだと思考した。


 人によってあまり触れてほしくない部分はあるし。


 ……授業を始まる時間だな。最後に言いたこと言って締めるかな。


「水瀬が言うならこれ以上は触れないさ……そうだな。最後に友人としてお前の恋愛にアドバイスしておこうかな」

「……なんだ?」

「好きだからって……特定の人物を見つめ続けるのはよした方がいいぞ?……嫌われるかもしれないし」

「………は?」


 こいつ、わかってないのか?キョトンとしてやがる。


「西園寺は確かに注目を集める。……だが、水瀬の場合は少し見つめるのを控えた方がいい。自分を見ていた……そう幻覚するのは重症だからな。恋は盲目と聞くし、妄想がどんどん膨れ上がっているのだろう」

「だから、妄想じゃ……いや、いいや。心に留めておくよ。……あ、最後に一つ聞いていい?」

「なんだ?」


 水瀬は時計を見ながら発言した。どうしたんだ?


「もし……仮にだが、西園寺さんがお前のこと見つめてたら……どうする?」

「妄想も大概な。……で、なぜ俺なんだ?」

「いいじゃねぇーか。仮にって言ってんだろ?」


 正直に言えば嬉しいだろうな。あんな美少女に見つめられると悪い気はしない。

 ……だが、何か裏がありそうで怖いし…うーんなんと答えるべきか。


「俺は何か思惑がありそうで恐怖を覚えるからやめてほしいかもな」

「あー……なるほど」

「まぁ、わーー」


 「悪い気はしないな」そう答えようとしたが前からパンッと何かが床に落ちる音がして発言を止める。

 前を気になり確認すると……西園寺が教科書を落としてしまったようだ。その後西園寺は慌てて教科書を拾っていた。


「……そうかそうか。……普通は喜ぶべきだけどな」

「普通?……普通はそうかもな」

「……もしかしてお前彼女いたりするのか?浮いた話一つもないけど」


 突然の話の転換……これはどう答えるべきか。

 まぁ、一度も彼女なんていたことはないが。


「今は……いないこともない」

「いやどっちーー」


 ガタン。


 少し見栄を張った発言に水瀬が反応したのだが、その直後にまた前方より今度は椅子が机と当たる音。


 再び前を見ると西園寺が椅子から勢いよく立ち上がり後ろを……いや、俺たちを見て口をぱくぱくとしていた。

 え?どうしたんだよ急に。教室のクラスメイトの視線は西園寺に集中する。


「どうしたんだ?」

「さ……さぁな?」


 そう答えた水瀬の表情は引き攣った笑みをしていた。

 その後西園寺は驚かせてしまったことを周りに謝罪して何事も中ごともなかったように席に着く……いや、少し元気がなかったか?



 まぁ、俺には関係ないことだが。

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