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入学して1月が経過した。
何か変わった事があるかと聞かれれば特に何もない。
一つあげるとしたら図書委員会には所属したくらいだろう。
優等生として何か委員会に所属しておいた方がいいと思い、図書委員会を選んだ。
優等生なら学級委員になるべきかと思うが、この学校だと放課後の時間を結構取られてしまう。
特待生なので、勉強の成績が悪いと権利を剥奪させられてしまう。あまりリスクは負いたくないので、図書委員会に入った。
仕事はそこまで多くなく、あるとしたら本貸出の当番のみ。
あとは、新規図書の購入と新着本紹介くらいだろう。そこそこの労働力で真面目の印象を与えられるのでもってこいである。
入学式から1月経てば大体クラスの立ち位置やグループ決まってくる。
クラスをまとめるいわゆる陽キャ、クラスの端で一人で過ごす陰キャ。
大雑把すぎる分け方になるが、それが全てだ。
陽キャならクラスでグループを作り群れを作り、その対極にあたる陰キャは一匹狼のように過ごす。
もともと中高一貫の学校だったので、ほとんどが知り合い同士、自己紹介の次の日にはグループが既にできていた。それからしばらく経って外部入学生が加わり新しい輪ができ始める。
そのまま知り合い同士で過ごす人、意気投合し新たな友人と過ごす人……さまざまいた。
ちなみに俺はというと、持ちつ持たれつという感じだ。クラスメイトの全員とまではいかないが大体の人とは話せる仲だ。
だが、全員が友達……というわけではない。
まぁ、少なくとも中の良い友達は一人できたが。
昼食はいつもそいつと食べている。
もちろん今日もだ。
「よう司!学食いこーぜ!」
「少し待ってくれ、教科書片付けるから」
「また勉強かよ。真面目だねぇ……流石は特待生は違うねぇ」
「うるせーぞ。……てか、もうすぐ中間考査だろ?勉強しなくていいのかよ?」
「いやいや、そんなことないよ」
「……授業中寝ていたやつはどこのどいつだ?」
「さぁ?」
「お前な……」
こいつはいわゆるチャラ男の一言に限る。
茶色の髪にパーマをかけている、制服少し着崩しており、マイペースな性格をしている。
容姿はまぁ、イケメンだろうな。ホストにいそうだ。
「大丈夫だ。俺には秘策があるからねぇ」
「……まさか俺とか言わないよな?」
「あったりぃ!わかってんなら聞かない!」
「……俺お前に教えるの嫌だけど?」
「……あーれれぇ?入学式の日いつでも頼ってくれと言ったのはどこの何桐君だってけ
ぇ?」
「……うぜぇ」
悪い奴ではない。
コミュ力は高く、ラインをしっかりと見極めて話している。
「……わかった。だが、せめてテスト前日や期間中はやめてくれよ」
「おー。流石は片桐様様!」
「はいはい。……片付け終わったし、行こうか食堂」
「おけ!」
とりあえず俺は水瀬と話しながら教科書を片付け食堂に向かった。
「だからさぁ、行こうぜ!」
「……ナンパ……ね」
水瀬と談笑しながら食事する。会話内容は水瀬自身についてだ。
基本俺と水瀬の会話は水瀬が話をふり、俺が相槌する流れだ。
今はナンパについての話。正直面倒くさいと言えば嘘になる。
俺は今は、時間をかけてクラスの立ち位置を築き上げた。もしも、ナンパするチャラい人……そういう印象がついたら真面目な優等生という印象が崩れてしまう。
「せっかくだが、やめておくよ」
「えー?付き合い悪いなぁ。お前なら行けると思ったんだけどなぁ」
「……むしろ恐れられると思うが?」
「いやいや!司は自己紹介の時言ってたじゃん!強面イケメンって」
「なんだよ強面イケメンって」
思っていたが、口には出していない。
後、水瀬お前興奮しすぎか、声がデカくなってきてるぞ。そのせいで何人かの人が俺たちを見始めてるじゃん。
「俺は自分が強面だが性格は正反対……と話した時に記憶してるが?」
「いやいや、誤差っしょ」
「全然ちゃうわ!」
「おっと……いきなり大声出すなよ」
やばい……こいつと話しているとペースが崩される。
深呼吸して落ち着かないとな。
どうにか話を切り替えなきゃ。
「何度もいうが、俺はナンパはしない。カラオケとかなら付き合うけどな。だが、今の時期は無理だ。……もうすぐテストあるしな」
「あーあー。付き合い悪いなぁ優等生君は……テストは3日前が勝負だってのに」
「それ……赤点取るやつがいうやつだろ?まぁ、容量良くやれば大丈夫かもだけどな」
「そうそう、だから俺は大丈夫!」
「……入学後の課題テストで赤点ギリギリ、小テストも三割しか取れてないやつの言葉とは思えないな」
「……あはは。……まぁ、そこは司様の……ね!……おなしゃす!ジュース奢っから!」
「………わかった」
「ッシ!」
水瀬はガッツポーズをして喜ぶ。
大袈裟すぎだが、全身で感情表現するのはこいつらしさと言えるだろう。
クラスのようキャの人気者、誰とでも気兼ねなく話せる彼は俺の心許せる数少ない友人と言える存在だ。
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