エピローグ
「……マジかよ」
「申し訳ありません」
西園寺とコンビニまで来たのだが……傘は売り切れていた。
念のため店員さんに在庫あるか聞いたが、ダメであった。
「西園寺さん、家は近くか?」
「少し遠いわね」
俺が走ったとしてもここからだと10分でつく。……しょうがない……か。
「これ使っていいから」
「え?でも、それだと片桐くんが」
「俺はいいから。また明日返せばいいよ」
「ちょっとまって!」
俺は傘を西園寺に手渡し大雨のなか走り始める。西園寺は俺を呼び止めようとしていたが、気にせずにいた。
男ならやはりこうするべきだと思って、
それから走ること5分ほどで家に辿り着いた。
「ざぶい」
次の日俺は……風邪をひいて決まった。
そんなに長時間外にいなかったから平気かなと思っていたが、運悪く風邪を引いてしまった。
「38度6部……昨日雨の中帰ってきたのが原因ね」
「すまん母さん」
「いいのよ。今日は学校休みなさい」
「……いや、でも」
「ダメよ。無理するのは良くないわ。倒れたらどうするの?」
「う……わかった」
ああ、さようなら俺の皆勤賞。
これでその夢絶える。
「今お薬と飲み物持ってくるから。それ飲んだらしばらく寝なさい」
「うん」
母さんはすぐに戻ってきてくれ、薬を飲んで少し気分が良くなった後、少しだけ寝た。
「ん?」
インターホンの音で目が覚める。
母さん今いないのか?
俺は少し起き上がり、そばにあるスマホを取り出し、時間を見る。
「母さんと……西園寺から?」
スマホ画面にはいくつか通知が表示あった。母さんからは葵の迎えと買い物に行くという内容、そして西園寺からは……俺が欠席したことに対する心配であった。
水瀬からのメッセージは「頑張れよ!」の一言だけだったので無視してアプリを開きそれぞれ返信する。
母さんにそして……水瀬に西園寺に。
大丈夫の一言だけだ別にいいだろう。
「…あれ?」
だが、思っていた以上に西園寺に送ったメッセージにはすぐに既読がつく。そして再びインターホンがなる。
「……なんだよ」
少しだるい体を動かし入口へ向かう。重い足取りで進み、ドアを開ける。
「こんにちわ片桐くん……体調はどう?親御さんはいるかしら?」
「……大丈夫だ。明日にはまた学校に行く予定だ。……親は今出かけている」
「…そう」
「それにしてもよくうちがわかったな」
そこには制服姿の西園寺がいた。
意味がわからなくて動揺していると西園寺が話しかけてくる。
「水瀬くんにわけを説明して家を教えてもらったの」
「……なるほど」
水瀬のやろう、あの謎メッセージといい……そういうことか。
余計なことしやがって。
「あの……これありがとう」
「……ああ、わざわざ返しに来なくていいのに」
「いえ、こういうのはちゃんとすべきだと思って……後これ……本当に昨日はありがとう」
西園寺は傘を届けにきたらしく、一緒に紙袋を手渡していた。
中を見るとマーケットに売っている箱のお菓子が入っていた。
「傘貸しただけでもらえない」
「いえ、片桐くんが欠席してしまったのは私が原因だもの……お詫び受け取って」
律儀なやつだ。
人のご好意を無碍にしてはいけないだろう。ありがたくもらっておこう。
「なら遠慮なく」
「ええ」
西園寺は少し笑みを浮かべる。
これで用件は終わった。だから、お互いにまた明日と言おうとする。
「司、お友達?」
だが、その前に声がかかる。……出かけていた母さんであった。
タイミングが悪く居合わせてしまったようだ。
「か…母さんおかえり……葵」
「ええ、ただいま……あら、もしかして邪魔しちゃったかしら……ごめんなさいねぇ」
何か勘違いされてるな。葵は人見知りで母さんの背に隠れている。
……面倒ごとになる前に早く終わらせよう。
「西園寺さん、今日はお見舞いありがとう。また明日」
「ええ」
「え、もう帰るの?少しゆっくりしていけばいいのに」
「さいおんじ?」
話を流れを無理やり断ち切ろうとするもの母さんがお節介をやく。
葵も何故か西園寺の名前に反応していたが、気にしなくてもいいだろう。
ちなみに母さんは絶対に俺たちを恋人と思っているかもしれない。それは後でただしておこう。
「いえ、長居してはご迷惑をかけると思いますし、実は急ぎの用がありまして」
西園寺は俺の意図を汲み取ってくれたのか不明だが、そのまま帰ってくれるようだ。
後は西園寺が帰った後、母さんの勘違いを正すだけ。少し安心した。
「あ!あくまのお姉ちゃん!」
だが、その安心も束の間、何故か別方向からの攻撃が。
それは葵であった。俺は慌てて葵を見ると、西園寺を指差していた。
「あ、…あくま?」
「何言ってんだよ葵、ダメじゃないか」
西園寺は突然の行動に動揺している。おそらく葵が言っているのはこの前の話した一件だろう。
すぐに止めにかかると純粋な子供というのは怖いもので、葵の口は止まらない。
「お兄ちゃんいってたじゃん!はらぐろあくまのさいおんじって……お姉ちゃんのことでしょ?」
「……へぇ」
俺は西園寺の冷めた声を初めて聞いたかもしれない。恐る恐る西園寺を見ると……俺を見ている目は笑っていなかった。
「片桐くん?」
「な……なんだ」
「また……ね」
西園寺は最後に失礼しますと母さんに挨拶をしてから行ってしまった。母さんを見ると何故かニヤニヤしているだけで助ける気はないようだ。
ああ……明日から俺はどうなるんだ?
西園寺は怒っていた。何されるんだ?
明日学校行きたくねぇ。
「ね、ねぇ母さん。まだ少し風邪があったして寒気が」
「やすんじゃダメよ」
「……はい」
母さんの言葉に従うことにしたのだった。
だが次の日、恐る恐る学校に行くも、西園寺はいつも通りに過ごしていた。
放課後になっても連絡は来ず……。なので、その日は水瀬と適当に寄り道して過ごした。
だが、その意味はすぐにわかることになった。
それは数日後であった。
ホームルームの時、担任から体育祭の準備のボランティアの募集について話があった時のこと。
最終日なので、念のため声をかけたらしい。
だが、そんなとき俺のスマホからブーと音がした。
気になりスマホを見ると西園寺からのメッセージが。
「……え?」
メッセージを見て俺は戸惑い、西園寺に視線を向けると……笑っていた。
このやろう……仕返しかよ。
メッセージには『体育祭ボランティアに立候補しなさい』と書かれていた。
だからこそ、俺は立候補をした。「やります」と。
西園寺を見ると……笑っていた。
だが、その光景を見るも、何故か嫌だと思わなかった俺がいた。……今後どんなことになるかわからないが、少なくとも俺は西園寺の言いなりなのだ。
最後まで読んでくださりありがとうございます。
これで物語は完結扱いにしたいと思います。
ここで一区切りをつけました。
ーーーーーー
短編投稿しました。
暇つぶしによろしければよろしくお願いします。
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