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「はよぉ、つかさぁ」

「……相変わらず朝が弱いな」


 水瀬は朝が弱い。

 毎日眠そうに欠伸をしながら挨拶をしてくる。登校時間はいつもバラバラで俺よりも早くいることもあれば、チャイムギリギリで来ることもある。

 だが、一度も遅刻することがない。


「起きてから時間経っているだろうに、なんでそんなに眠そうなんだ?」

「さぁね」

「はぁぁ……まぁいい、それで、眠そうに登校してきたが、天気予報くらい見たんだろうな?今日雨だぞ?」

「え?マジかよ」

「……おい、傘に入れないぞ?」

「その心配はいらないぜ」


 水瀬は何故か得意げにし、鞄に手を入れガサゴソと黒い物を取り出す。


「俺は常に折りたたみ傘を常備してるんだ」

「用意がいいんだな」

「まな。もしもの時の備えだ」

「……ちなみにどんな時だ?」

「んなもん決まってんだろ?」


 何を得意げにしているのだか。そんな疑問を思いつつ、耳を傾ける。どうせ水瀬の考えだーー。


「女の子が傘忘れて困っていたら助けるためだ」


 ほらやっぱりくだらないことだ。


「バカらし」

「んだと?」

「そんなこと起きなずらいだろうし、まず前提として傘忘れたら友達に頼むだろ?そんなシチュエーションは永遠に来ないよ」

「……あー確かに」


 俺の説明に納得する水瀬。……ま、すぐに引き下がる時点で冗談のつもりだったのだろうな。

 

「あ、そろそろチャイムなるじゃん。じゃ後でな」

「後でな」


 水瀬は時計を見ながら言って自分の席に移動した。

 ホームルームが始まる約1分前。


「……まだきてないのか」


 俺は西園寺の机を見る。いつもなら30分前には学校に到着しているはずの人物が来ないと気になるものだ。

 クラスのみんなもちょくちょく出入り口を見たりする。クラスメイトの会話も西園寺の名前が何回か聞こえていたから心配しているのだろう?

 俺と毎日くるように連絡が来るのに朝の時間に来るのだが……もしかして今日休みなのか?


「おーい、全員座れー」


 ついに西園寺は間に合うことがなく、先生が入ってきた。

 先生は入るなり教卓に移動して教室を見渡す。


「あれ?西園寺がいないか……何か聞いてるやついるか?……反応なしか。珍しいな、あの西園寺が音信不通なんてな」


 先生は少し驚くも何かにメモを始めた。

 が、そのとき。


「すいません!寝坊してしまって」


 息を切らした西園寺が教室に入ってきた。

 クラス全体は安堵の表情が広がり安心したようだ。


「気をつけろよ、次は遅刻扱いにするからな」

「はい。今後はないようにします」


 西園寺は先生に言われそのまま自分の席に移動した。いつもはしっかりと整っている長い綺麗な髪は少しボサボサとしていた。


 あの、西園寺も失敗があるのだと思うのと、普段の行いが悪いんだばーかと内心思いながらもどうせ今日もスマホの通知来るんだろうなと身構えるのだった。













 授業も無事終わり放課後に。

 今日は西園寺が遅刻寸前でくるというハプニングもあったこと以外はとくに変わりのない日常が迎える。


 だが、もう一つ変わったことがあるとすれば西園寺からの連絡がないこと。

 別にショックを受けた訳じゃなく、少し意外だった。連絡先を交換してから連日呼び出しメッセージがあったのに今日はない。

 そんな西園寺はホームルームが終わった後、慌てて教室を出て行った。


 まぁ、どのみち今日は図書委員会があったので行けなかったからちょうどいい。


 俺は身支度を済ませる。


「水瀬、すまないが今日委員会あるから」

「りょーかい。大変だね優等生くんは。じゃ、また明日な。流石にこんなに大雨になるとは思わなかったわ」

「気をつけろよ」

「おう!」


 とりあえず一言挨拶してから図書室に向かった。

 

 

 

 










「雨ひどいな」


 図書室から窓越しの景色に呟く。

 時間が経てば少しくらい雨が弱まると思っていたが、ひどくなる一方だ。

 図書室には俺一人だけ。


 放課後は基本人は少ない。

 テスト期間ならば人が多くいるのだが、それ以外は誰一人来ることはない。天候が悪い日なんかは特に。


「もうすぐ時間……か」


 放課後の本貸出時間は決められている。

 他の高校は知らないが、うちは午後6時までとなっている。


 利用者がいなければ図書室の扉を閉め、その日は帰宅しても良いことになっている。


「……今日は運がいいのか悪いのか」


 利用者がいないから早く帰れるものの、天候は最悪。

 

「靴はびしょびしょになりそうだな。……はぁ」


 とりあえず今日は店じまいだ。

 俺は居残りの生徒がいないかを確認のため図書室を一通り周り、誰もいないことを確認し施錠。鍵を職員室に返却した。


 そのまま、下駄箱に向かうのだった。

 ……だが、靴をとりだし昇降口を出た。


「……片桐くん?」


 だが、そんな俺に声をかけてくる人物が一人いた。

 

「……西園寺?」


 昇降口でポツンと経っていた西園寺であった。


 

 

読んでいただきありがとうございます。

更新は不定期です。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


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