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「ただいまぁ」
西園寺とのやりとりを終えて帰宅した。時刻は5時前といつも通りの帰宅時間だ。今日は西園寺との一件を除き充実した一日だった。
なんで握手なんかやりたいのだが。……多分
まぁ、西園寺との時間に関しても正直そこまで苦痛じゃない。むしろ少しだけ役得と思っている部分がある。
学校のマドンナと形を気にしなければ、唯一できた二人だけの関係……と、考えればだが。
内面は気にしないにしても、目の保養にもなる。
「お兄ちゃんおかえり!」
「おぉ、葵、ただいまぁ」
玄関で靴を脱いでいると小さな子供がトテトテと走ってくる、妹の葵だ。
今は幼稚園の年長、来年小学入学を控えている。
俺と葵は兄弟なのにあまり顔は似ていない。垂れ目、髪をポニーテイルに結んでいる。将来は美人になること間違いなしと両親のお墨付きである。
親バカだなと思うも、俺自身も将来楽しみだなと思うこともあるので評価はあながち間違いではない。
俺は葵を抱き上げ、リビングに向かう。
「今日もいい子にしてたかぁ?」
「うん!」
「そうかそうか、葵はえらいなぁ」
「えへへ」
葵はものすごくかわいい。
感情表現が豊かで褒めるとすぐな喜んでくれる。
葵を抱き抱えながらリビングへ移動する。
俺の住まいは高層マンションの3階。3LDKと個人の部屋もある。
両親二人で一室、俺一人部屋、あとは将来に葵が大きくなった時に使うため部屋で分けてある。
俺は連絡通路を使い広いリビングに移動する。
ソファーに座り葵を隣にすわらせる。
「おかえり司!」
「ただいま母さん」
キッチンから母さんの声がする。夕飯を作っているのだろう。
「今日はどうだったの?」
「どうって聞かれても……まぁ、普通だな。可もなく不可となく」
「ちゃんと優等生できたのね!えらいえらい」
「……お願いだからそれやめてくれない?」
「え?でも、司から言ったんじゃない?今でも覚えているわよ」
「いや、言わなくていいよ。ごめん、なんでもない」
大きくなっても親からしたら一生子供なのはわかる。別に子供扱いされることは人目がないのなら大丈夫なのだ。では、何を気にしていると言うと、「優等生〜」の部分だ。
俺は不良を辞めた次の日、両親の前で宣言をした。
「誰もが認められる優等生になる」と。
そうしたのは今までの区切りをつけるため、ケジメである。
だが、今となっては俺の言動は両親にとって褒め言葉らしい。やめてと言っても聞く耳持たず。今では咎めるもののどうでもいいやと思い始めてしまっている。
「おにいちゃん、あそぼ!」
「うふふふ。もうすぐで夜ご飯だからそれまで葵の相手お願いね」
「わかった」
隣に座る葵から遊ぶよう頼まれるので了承、葵を連れて自室に向かった。
「それでな、悪魔のようなやつなんだ」
「こわーい!」
葵の相手を始め、少し時間が経つ。
最初は絵本を読んでいたのだが、もっと他のお話を聞かせてほしいと言われた。
なので、俺の身近にいる悪魔の話をしてやった。
相当話を盛って怖い話に。
すぐに飽きるかと思ったのだが、思った以上に興味を持ってくれた。
「それでな、腹黒悪魔のお姉さんは俺をいじめるんだ」
「こわーい!」
話を進めるうちに葵はきゃっきゃと怖がりながら笑う。
葵が喜ぶたびに更に話を盛り続ける。現実の西園寺よりも数倍は怖い人間性になってしまったが、それはあくまで葵に話す時だけだ。
「ごはんよぉ!」
「「はーい!」」
だが、話はキリがいいタイミングで母さんに呼ばれる。
俺は葵を抱っこして台所へ向かうのだっだ。
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