表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

12

「はぁ……」


 司が屋上からいなくなり美玲は一人残り深呼吸をする。

 その深呼吸は大きく、空気と一緒に緊張も吐き出すかのような勢いであった。


「緊張したな……それにしても片桐くん……中学のとき野球やってたのね」


 美玲は司のことを新しく一つ知れて心の底から嬉しさが込み上げる。

 いけないことだとはわかっている。人の弱みにつけ込む……いけないことだと理解をしているのに。

 美玲はそれをやめられないでいた。


「片桐……司くん」


 司の名前を呟く。

 好意を抱いている。だが、なかなか行動に移せずにいた。

 だが、そんなある日偶然にも司と接点ができた。

 

 それは脅し脅されの奇妙な関係。


 本来ならこんな関係すぐにやめるべきだ。特に好意を抱いているなら尚更。

 だが、美玲はそれをやめられないでいた。


 一度美玲は司に会ったことがある。



 出会いは中学時代まで遡る。


 ある日玲奈は学校帰りに高校生の不良に絡まれていた。

 もともと玲奈の容姿が優れており、注目を集めることは多い。

 ナンパで絡まれることは多いものの、一言断ればこのなきを得ていた。

 いつもは人気の多い場所を通り、絡まれても助けを求めれば大丈夫なようにしていた。だが、その日だけは不運が重なった。

 たまたま通った道は人気がなく、絡んできた連中もただのナンパだけで終わらず絡みがしつこい不良、しかも人数も複数人いることから囲まれてしまい、逃げることもできない。


 恐怖で助けを求めようとしたが、それをしてしまえば何をされるかわからない、恐怖で体が震えてしまっていた。


 だが、そんな絶望下で彼は現れた。

 金髪で高身長……制服を着崩しており、この付近では見かけない制服であったが、声をかけてくれた。


『俺をしらんとはお前も田舎もんだな。荒川第二校の剛田様をな!』

『お前は知らん!俺は片桐司だ!』


 片桐司と名乗った救世主は複数人の不良相手に怯むことなく、倒した。

 玲奈はその光景を見て少し怖くなって警察に通報した。

 

 その後警察が来て喧嘩をしていた人たちを拘束し、警察署に連行。


 玲奈は事情聴取をされ、親が迎えに来てくれてその出来事は終わった。


 玲奈は助けてくれた彼に一言お礼を言いたかったのだが、残念ながら会うことは出来ず……警察に司について教えてほしいと頼むも個人情報なので教えてもらえなかった。

 


 玲奈はその日以降、心の中がぽっかりと空いている感覚に襲われる。

 それがなんだが、わからない。お礼を言えなかった後悔なのかはわからない。


 だが、司に助けられた一言を思い出すと、何故か胸が温かくなった。

 もう二度と会うことができない……そう考えると何故か悲しくなり……時が経つにつれ悲しくなってきた。


 そんな日々を過ごす中で、こう考えるようになった。

 私は恋をしているのかも知れない……と。


 だから、入学式で見かけた時、もしかしたらと思った。

 雰囲気が変わっていたので気のせいかと思ったが、クラスの自己紹介で名前を聞いて確信をもった。


 美玲はそんな運命的な出会いに驚いた。


 だが、美玲は心に留めていた想いが急に湧き出るような感覚に戸惑ってしまい、話しかけようとしても緊張してしまい行動に移せなかった。

 

 思いきった行動ができない自分が嫌になるも、また明日は話しかけよう、と決めてもいざ行動しようとしても躊躇してしまう。


 チラチラと偶に後ろの席の司を除いたり、雄二との会話に耳を傾けたりと、自然にそのような行動をしていた。


 だが、会話の中での発言で焦り出す。


『俺は何か思惑がありそうで恐怖を覚えるからやめてほしいかもな』


 この会話が耳に入った時、思わず教科書を落としてしまった。

 チラ見していたのがバレたら嫌われてしまうかも……そう思ってしまった。


 そして、次の会話が聞こえた。

 その内容を聞いて……美玲は同様してしまった。


『……もしかしてお前彼女いたりするのか?浮いた話一つもないけど』

『今は……いないこともない』


 もしかしていたことがあったのか!今恋人がいるのか。

 そんな考えがよぎりつい同様で立ち上がったしまった。


 恥ずかしさのあまり顔を少し赤くしてしまった。

 その後驚かせてしまったことをみんなに謝罪をした。


 この時期から焦りを覚え始めた。


 だから、美玲はその場の思いつきでついつい弱みを理由に司に高圧的に行動してしまった。


 言葉を発言した時やってしまったと後悔した。嫌われてしまうと悲観した。


 だが、驚くことに司は自分を拒絶するどころか、お願いに従ってくれた。それに対して美玲は後先考えず勢いで行動してしまい、結果今のような関係に。


 せっかくできた接点。

 残念ながら美玲はそれを手放せずいた。


 きっかけはどうあれ美玲は素で自分に接してくれる司を知れた。まだみんなが知らない司を知ることができた。


 ただ、辺なタイトルの本を持っていたことにショックは受けたものの、友達から預かった物だという発言していたことから司のものではないとわかった……いや、信じたいと思った。


 二人だけの秘密。

 二人だけの空間

 二人だけの……不思議な時間。


 だから、美玲はそんな司との日常を手放させずにいた。


読んでいただきありがとうございます。

更新は不定期です。


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントはモチベーションになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ