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 1日の授業も消費する様に終わり放課後に。 

 今日は特に朝の一件を除けば平和であった。

 だが、残念ながら俺の内心はビクビクしていた。

 

 授業や休み時間、俺は西園寺が気にチラ見することが多かった。そして、偶に目があった。見間違いではない。会うたびに西園寺は微笑んでくる。


 それを見るたびに恐怖を感じていた。


 昨日の初会話以降学校で話すことはなかったものの、流石に西園寺の反応は怖い。そのため一日中不安がよぎり続けた。


 本当に俺はこれからどうなるんだろう?もしかして優等生の立場から変人とジョブチェンジしてしまう可能性が、その不安が脳裏によぎる。


「はぁ……」


 ため息をしながらも目的地である体育館裏へ向かう。

 これが、異性に手紙で呼び出されて告白されるならどんなによかったことか。


 だが、実際は弱みを握られ脅されて呼び出された。

 もしもバックれたら絶対にバラされる。


 そしたら俺の優等生生活は終わりを告げるだろう。

 だから、行かねばならぬ。


「……いない」


 西園寺に指定された場所につくもそこには誰一人でいない。

 今は部活をしている時間なので、体育館からはボールをつく音、声援等が聞こえてくる。

 だが、完全に日向の影になっているので、人影はない。


 ホームルームが終わってから急ぎきたのでしょうがないのか?


 でも、西園寺が教室出たのは確認しているし、てっきり早くきているかと思ったけど。


「こんにちは片桐くん、来てくれて嬉しいわ」

「……おう」


 突然木の影から声をかけられる。

 隠れていたのか。


「一人で来たのね……てっきり水瀬くんも連れてくるかと思ったけど」

「水瀬を?……なぜ?」

「だって……昨日のことを話したのでしょう?」

「……さぁ?……なんのことだか?」


 バレてらぁ。

 当たり前の反応といえばそうだが。水瀬のあの言い訳は流石に無理があると思っていた。もしかして隠れていたのって俺が一人でくることを確認するためか?


 なんと用意周到な、警戒しすぎだろ。


「で?本当は?」

「だからなんのことだか」

「……で?」

「いやぁ……」


 圧力かけるのやめてほしい。

 なんで西園寺は器用に笑顔で威圧をかけられるのだろう?

 どうしようまじで。

 これ認めないといけないやつじゃん。


「本当のこと言ってくれれば怒らないわよ。嘘ついていることわかるもの……どうしようかしら?このままだとうっかりーー」

「すいませんでした」

 

 お願いだから、スマホを片手に脅すのやめてくれないだろうか?

 

「水瀬に話した。だが、昨日言った通り、あの本は水瀬のもので」

「……ふーん」

「信じてないな?」

「だって証拠がないじゃない?」

「それは」


 証拠がないのは確かだ。

 だが、西園寺の反応からして仮に水瀬に直接言ってもらったところで信用されないだろう、むしろ悪化するかもしれない。

 

 それに確かな証拠に写っているのは俺なんだから。


「何が目的だ?」


 とりあえずまずやらなければ行けないのは西園寺の目的。

 すると、ニンマリと笑い、一言告げる。


「……秘密かしら?……そうねぇ……これから何かお願いしたいことがあったら交渉材料にするかもね」


 こいつは悪魔か何かだろうか?

 普通の男児ならばその笑顔に惚れてしまうだろうが、俺は恐怖しか感じない。

 スマホを片手に彼女はそう発言した。


「片桐くん、ちょっとスマホ貸して?」

「……拒否したいのだが……せめて目的教えてくれ」

「そんなに警戒しなくても大丈夫よ。ただ連絡先交換するだけだから」

「なら、貸す必要はないだろうに」


 本来なら交換を拒否したいが、やったところで脅されるのが目に見えている。

 俺はポケットからスマホを取り出し、アプリを開く。


「WIREでいいか?」

「あ……随分と潔いのね」

「別に連絡先くらい交換するのは問題ないからな」

「そう……ありがと」


 西園寺と連絡アプリのアカウントを交換する。


「なんでそんなに嬉しそうなんだ?」

「え?……別に」


 西園寺はWIREを交換した後、嬉しそうにしていた。

 だが、指摘するとすぐに表情を改める。


「これから何かお願いしたいことあったら連絡するからそのつもりでね?」

「悪魔かお前は?」

「……なにか?」


 やべ、思わず思っていたことが口に出てしまった。

 西園寺は再び笑顔で圧力をかけてくる。

 もうやめてくれその笑顔。


「すまん、言葉のあやというやつだ」

「片桐くんは私のことそんなふうに思っていたのね……がっかりだわ」

「弱み握って笑顔で脅してくる奴を天使と思うかお前は?」

「それもそうね」

「納得するんかい!」


 思わずツッコミをしてしまう。

 そんな俺の発言に西園寺はくすくすと笑ってくる。


「うふふふ」

「何がそんなにおかしいんだ?」

「いや……ね。片桐くんって普段、真面目でお堅い人って印象持っていたけど、そんな一面もあったのね」

「普段は少し取り繕っているだけだ」

「ならなんで?」

「取り繕うのも馬鹿らしくなっただけだ」

「……そう」


 何故か嬉しそうにする西園寺。

 その笑顔に俺は再び恐怖を抱く。


 流れで西園寺にそんな態度をとったものの、俺は今彼女に脅されている身なのだ。

 俺は恐る恐る西園寺を見ると、彼女は少し思考しており、それから数秒後、考えがまとまったのか話しかけてくる。


「なら、これから私と接するときは今みたいに素でいること。……お願い……ではないわね。……命令ね」

「……わかった」


 もうどうにでもなれ。

 今は西園寺に従えば俺の平穏な生活が壊れることはない。

 その日は連絡を交換しただけで要件は終わった。

 

 その日を境に俺と西園寺の妙な関係が始まってしまったのだ。


 そして、現在に至るというわけだ。

 その日から数日、放課後に呼び出され、マッサージなり、ジュースじゃんけんなり、握手をしたり……。


 何が目的がわからないが、少し関わっただけだが、何故か西園寺からは俺とのやりとりを楽しんでいるように見える。


 だから俺はこう思った。西園寺美玲は本性を隠した腹黒ドS女だと。


 だが、従っていれば今の生活リズムが壊れるわけではないので、そんなドS悪魔との関係を続けた方が良いと判断した。


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