残香
貴方が私のもとから去った後
いつも、空気がぐんと下がる
貴方が座っていた席、寝転んでいた床、笑いあった廊下
普段はただの空間であるのに
貴方が去った後だと、まるで貴方が居るように幻想を見る
何気なく目を向けると、貴方はそこで笑っている
私が笑いかけようとすると、すぐに幻覚は霧となる
何も感じない日常が、貴方が去った後だと、
物足りない気持ちになる
嗚呼
貴方は、残された私がこんな気持ちになっていると知らないでしょうね
だって、私はこの気持ちを胸の奥に隠しているから
貴方が私との別れを寂しそうにしているときも
私は何も感じないように振る舞う
「そうしないと、泣いてしまいそうだから…」
なんて理由だったらいいけど、そんなかわいい理由じゃない
ただ、弱い自分を貴方に晒したくない
貴方がいないと生きていけない自分を認めたくないだけ、なんだから
早く、早く、
また貴方に、会いたいな