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閑話 エリクソンの怒り

「ナラム王国から密偵が帰って来たそうだな」


 ラクスの暗殺を命じた密偵が戻って来た報告を受け、俺はユート家を訪ねた。

 本来ならば、ユート家から俺に報告があって然るべきなのに、黙っているとはどういうつもりなのか...


「...は」


 ユート家の当主サライムは大量の汗を掻きながら俺を見る。

 コイツもどうせ俺を無能勇者と侮っているのだな?

 冷酷無比と恐れられたサライムも80近いジジイではないか。舐めやがって。


「私にあの男を斡旋したのは誰だったかな?」


「わ...私でございます」


「そうだよな、で...何故(なにゆえ)失敗したのだ?」


 バカな密偵がナラム王国で捕まり、この国に護送されて来た事実は父上の知る所だ。

 命じた俺はまた父上から叱責を受けてしまった。

 『小国のナラム王国に密偵は不要であったのに』と、畜生め...


「は...ナラム王国ならば、あの密偵で充分かと」


「ふざけるな!!」


 まだ言い逃れをするつもりなのか、やはりユート家は俺を甘く見ているな?


「密偵は暗殺を人任せだったそうじゃないか!!」


 報告によればラクスの暗殺はナラム王国の奴等に任せ、失敗した。


「なぜ直接密偵が手を下さなかったのだ!」


 足元に置かれていた塩漬けの首が入っている容器を蹴り飛ばすと、くしゃくしゃに萎れた首が床に転がった。


「し...しかしラクスの暗殺は失敗しましたが、あの男を捕まえたのは」


「ナラム王国の人間では無いのか?」


「...まだ確認は取れておりませんが」


「ほう...」


 確かにナラム王国に密偵を捕らえられる程の人間がいるとは思えない。

 ラクスはあんな状態だしな。


「...ハハハ」


「エリクソン様?」


「何でもない」


 惨めなラクスの姿を思い出すだけで、笑いが込みあげる。


 「ナラム王国の書いた罪状では自国の人間が捕まえたとありましたが、どうも違う様で」


 ナラムの調書に不審な点があるというのか?

 それならば、


 「密偵から聞けばよかろうに」


 「それがナバーロに捕まったと呟くばかりでして」


「ナバーロ帝国は我が国と密かに同盟を結んだばかりでは無いか!!」


 そんな事、ある筈が無い。そこまで愚かな訳が。


「は...ですから現在密偵を尋問しております」


「全くユート家も落ちた物だな」


「...エリクソン様」


 「催眠術とかの類いでは無いのか?」


「催眠魔法ですか...」


「催眠魔法の存在を知らぬのか?」


 魔王討伐隊に参加していたアキシア聖教国のカールスが使っていた記憶がある。

 アキシアは我が国と近い、密偵が催眠魔法に掛けられていたなら、辻褄が合う。

 俺はなんて天才なのだ!!


「確かに、その可能性は否定できませんが...」


「早く解除すれば良かろう」


 下らない、さっさとすれば良い物を。


「それが...その」


 サライムの歯切れが悪い、なんだと言うのだ?


「解除する使い手が現在当家に居りませぬ...」


 居ないだと?


「そんな馬鹿な事があるか!」


陛下(アンゴラ国王)が次々と我が方の密偵を他国に遣わし、今は...」


「父上が?」


 糞親父め!

 これでは先に進まぬでは無いか!!


「仕方ない、俺が確かめてやる」


「エリクソン様が?」


「ああ」


 これでも一通りの魔法には自信がある。

 催眠魔法もだ、薬と併用すれば、いなかる女でも意のままに操れたのだ。


「いけませぬ!」


「何故だ?」


 サライムは驚きながら止める。

 俺が使う催眠魔法を知らない訳ではあるまい。


「あ...あれは...そうです、相手が女だったからです」


「間抜けな密偵等、女と変わるまい」


「いや...しかし」


「くどい!」


 時間の無駄では無いか、もし本当に密偵を捕まえたのがナバーロ帝国の者なら、大変な事になる。

 違っても、アキシア聖教国の関与を掴める。

 どちらにしても俺に損は無い。


 アキシアに匿われているミッシェルを奪い返すチャンスだ。

 今度は容赦せぬ、廃人になっても構わぬ、薬漬けにしてくれよう。


「この部屋に」


「分かった」


 サライムに案内され地下室に着いた。

 分厚い鉄の扉が開くと、身体をくの字に曲げられ、荒縄で固定された男と、それを取り囲む数人の人間。

 固定されたアイツは...間違いない、俺が雇った密偵だ。


「退け!」


 密偵を殴りつけていた男を蹴り飛ばす。

 制裁は後にしろ。


「...エリクソン」


「は?」


 なぜ呼び捨てるのだ、私を誰だと思っている?


「貴様のせいで俺は...」


「止めんか!!」


 焦るサライム、ひょっとしてユート家の密偵は俺を陰では呼び捨てにしているのか?


「この無能勇者が!貴様等廃嫡されれば良いのだ!!」


「なんだと!!」


「お止めを!


 我慢出来ないない俺は、持っていた剣を男の胸に突き刺す。

 確かな手応え、男の心臓を一突きした。


「....ウゴゴゴ...」


 何だ...男が突然膨れあがって?


「逃げろ!!」


「は?」


「エリクソン様も早く!」


 我先に部屋を飛び出す男達、これは一体?


「うわ!!」


 耳をつんざく爆発音と、激しい衝撃が部屋を襲う。

 男が突撃爆発したのだ。


「畜生め、血だらけでは無いか」


 部屋の外まで飛び散る男の血。

 俺だけではなく、外に逃げた全員にまで男の血が掛かって...


「な...何だ?」


 目の前に立ち上がるのは...煙?


「ギャアアア!」


 熱い!!身体が焼けそうだ!!


「な...何とかしろ!!」


「アアア!」


「目が!!前が見えない!」


 糞!不様な叫び声を!!


「ああ!」


 俺の指が爛れ、これではまるで、


「ラクスと同じ状態では無いか!!」


 ここで、記憶が途切れた。


 気づけば、俺は王宮の一室で身体を横たえていた。


「...アアァ?」


 どうしたのだ?声が...いや目も見えぬ。

 僅に音だけが聞こえるだけではないか!!


「気づかれましたか、エリクソン様」


 ア...?(どうなったのだ?)


 必死で声を出し、身体を捩る。

 手足の感覚も無い...まさか?


「呪いです...もう治る事はありません」


「ブァ?」(まさか?)


「エリクソン様は廃嫡と決まりました...ユート家の断絶も」


 ...畜生...許さぬぞ...

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― 新着の感想 ―
[一言] 意外とあっさりだったw キャサリンも報われてほしいけどサラが幸せになる未来も検討していただけると幸いです。
[良い点] ついにエリ糞ンに鉄槌が 糞にクズ爆弾(笑) いいねいいね [一言] 更新ありがとうございます やっぱり殺っちまうのは勿体ないですな 目には目を、復讐の基本 ざまぁもですがラクスへの救…
[良い点] ふむふむ まずはちょっとしたオードブルと言ったところかな [一言] 当然肉がっつりばりのメインディッシュも 有るのであろう? 無いとは言わせへんで!
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