#80脱出
「どうする?」
まず僕はみんなを集めた。
「どうするって言ってもなぁ」
「あの、もう出ちゃっていいんじゃないー?」
その時、ジョーさんが思いついたように言った。
「おい待て、これ、同率だったらどうなるんだ?」
ここでポイントを調節できるってことは、もしかすると…?
「あ~っ、同率だったらどっちも落ちるわよ~っ」
「ダメかぁ」
「だから、もう行こうってー、みんな出ちゃってるし」
いつの間にか僕らが話してる間にほとんどの人が出ていった。
「んー、もう出るかぁ」
「先行っちゃうよー?」
京君と砕はゲートに向かった。
「じゃあ僕らも…」
前を向こうとした時、日向ちゃんが見えた。
「…!」
目が合った瞬間に日向ちゃんは目を逸らした。
「ん、どうした稗田っち」
「ちょっと先行ってて」
「いや、どうしたんだって」
「大丈夫」
「…絶対こっちに来いよ」
ジョーさんは理解してくれたようだ。
僕が日向ちゃんに近づいてる間、僕と日向ちゃん以外がゲートを出た。
「あの、本当に大丈夫だから…」
思えば日向ちゃんはここに来てから1人だった。
1人になりたかったのかもしれないが、それを助けてあげれなかったのは僕の方だ。
「ねえ、ピンキック、どうやってポイントあげれるの」
「あ、全員出ると思って言ってなかった~アプリ送ってあるからそれ開け~」
僕はスマホを開いた。
「あの、私行くから…」
「待って」
僕は片手で日向ちゃんの腕を掴んだ。
「それで?」
「ポイントをあげるってとこ押してあげるポイントを入力しろ~最大で全部だ~」
僕は、全部を選択した。
「決定したらスマホを相手のスマホと重ねろ~」
「日向ちゃん、スマホはどこ?」
僕は何も考えないようにしながら聞いた。
「教えないよ…」
「ピンキック、日向ちゃんのスマホを出して」
「無理やり~…まあいいけど~」
「…」
日向ちゃんもやっと抵抗を辞めてくれた。
「はい~」
僕は日向ちゃんのポケットから出したスマホに重ねた。
…僕のポイントは0になった。
僕はすぐ、ゲートに向かって走った。
そして通った。
「あと1人だからポイントの変動は無いね~、さあ早く出て~」
日向ちゃんはダイダイックに抱えられ、こっちに来た。
「なぁ、稗田っちぃ…おいぃ…」
「…」
「…」
砕は目元を抑えていた。
ジョーさんと京君は顔を合わせてくれない。
「さあ~、この先は真っ暗だけど大丈夫だよ~」
「進んでるうちに最下位の人は落ちてるから~っ、気にせずに進んでね~っ」
遊園地の明かりもだんだん消え、辺りは本当に暗闇だ。
怖い。
怖いな。
でもこれでいいんだろう。
楽しかった。
そうだ、楽しかった。
楽しかった…
「…うっ…」
…僕は泣いてるんだろう。
悔いは無い、そう信じるしかない。
「稗田っちぃ…」
僕の肩に大きい手が乗っかった。
「離れて」
「それは無理だなぁ…」
「…ありがとう…」
「…」
「それじゃ…」
僕は砕から離れた。
パカッ……
あれ…?