#59理由
中は広く綺麗で…なんて物色してる暇はない。
「ありがとう、これでミッションが…」
「ミッションはもうクリアしてるんでしょ?」
「えっ…」
「何人かで集まって歩いてたのを見たから」
「じゃあ…なんで家に入れてくれたの?」
「私も避けてばっかだったからね」
ぎこちない会話が続くが、ここはいっその事聞くしかない。
「あの、なんで僕達を避けてたの?」
「話すね…さっきの場所で起きた時はね、嫌な記憶と、ちょっと嬉しい記憶が戻ったの」
日向ちゃんは少し笑顔になり、話を続けた。
「嫌な記憶はまあ…色々あるけど、嬉しい記憶はお姉ちゃんのこと、毎回あの状態から目が覚める時に、お姉ちゃんのことをだんだん思い出してた」
「でも、お姉ちゃんはもういないから…どうすればいいか分からなくなって、おかしくなっちゃって、2人からも逃げちゃったんだ」
日向ちゃんの表情が暗くなっていく。
「それでね、家に入った瞬間に全部思い出したんだ、家で起きたこと全部、お姉ちゃんの優しさもね…」
日向ちゃんの目からだんだん涙が溢れてきた。
「家に入る前と後で避けた理由は違うけど、お姉ちゃんの優しさを思い出したら…これ以上2人に迷惑かけたくなかった…2人に申し訳なくなっちゃって……」
日向ちゃんの言葉を聞いて、咄嗟に口から言葉が溢れた。
「もしそれを優しさで言ってくれてるなら、それは必要ないよ、優しさを受け取ることも優しさって思ったら遠慮もしなくなる」
自分でも一瞬分からなかったが、これはお母さんが僕に言ってくれた言葉だった。
ずっと遠慮しがちだった僕にお母さんが言ってくれた、僕のお気に入りの言葉だ。
日向ちゃんを見ると驚いた様子だった。
砕もポカーンとした顔でこっちを見ているし、なんだか恥ずかしくもなってきた。
「じゃ、じゃあ行くね、またね!」
僕は逃げるようにして家を出た。
砕も一緒に出てくると思ったが出てこない。
「聞こえますか~、集合で~す」
放送が流れた。
僕はもう1回家に入ることは恥ずかしくてできず、砕を待っていた。
「ごめんなぁ、ちょっと話し込んじまったぜぇ、ちなみに日向ちゃんは家にいたいみたいだぁ」
砕が出てきた、放送が流れたことを伝えると僕と砕は急いで向かった。
「みんな集まった~っ?」
「これから、今日最後のミッションを伝える~」
ミッションを伝えるために集めるのは初めてだ、前まで携帯に直にミッションが届いたから。
「そろそろ夕日も沈んできたからね~っ」
いや、全然明るいけど…
と思っていたら急に空が変わった。
まあ薄々気づいていたが、映像のようだ。
「これから30分後にテストを行う~、場所はチャレンジゾーンだ~、それまでは自由時間~」
「ちなみにテストの内容は言わないが、少しだけヒント、最初から今まで起きたことを振り返ってみればいいかもな~」
そう言うと、ピンキックとダイダイックは本部に戻っていった。
僕もとりあえず離れようとした時 「ごめ~ん、もう1回集まって~」と放送が流れた。
放送が終わると、ピンキックとダイダイックは本部から空を飛んで広場に着地した。
空を飛んで来てるのか…
「まだ集まってない〜っ?」
すぐ呼び出されたのに離れた人もいるんだな。
「まあ、いない人には後で伝えておいて〜、今あなたたちのスマホに新しい機能を追加した、電話だ」
ピンキックが喋り終わった瞬間に携帯が鳴った。
開くとミッションアプリの横に電話のマークがあった。
「今アプリがいったと思うけど、そこには今まで家に入ったことのある人の名前が書かれてある、名前がある人にはいつでも電話がかけられるし、まだ家に行ったことないでも家に入れば連絡先は増えていく〜」
「説明はこんな感じよ〜っ」
「じゃあ次こそ、またね〜」
ピンキックとダイダイックはまた本部へ戻っていった。