#46朝
「じゃあ、話し合いスタート~」
2日目の話し合いがスタート、まだ1人も減っていないが、このまま永遠と続くのだろうか。
「えっと…えっとね…とりあえず意見のある人、どうぞ…」
櫻さんが話を振り始めた、でも何故か少し焦りが見えている。
「じゃあ俺話すぜぇ!えーっとぉ……」
砕が話し始めるも、すぐ止まった。
この人狼は特に話すことが無い。
自分が狙われるか心配で誰も仕掛けにいけないのもあるが、何よりこれは知識量の勝負。
知識のある人が有利、その有利な状況をみんなと共有する訳にはどうしてもできない。
「お姉ちゃん?」
日向ちゃんが櫻さんの様子を見て声をかけた、日向ちゃんから櫻さんに話しかけるのは少し珍しかった。
「私は大丈夫よ…日向、絶対にあなたは生きるのよ」
…急にどうしたんだろう。
「はぁ…もう言うわね…」
櫻さんが机に手をドンと置くと、みんなが一斉に櫻さんを見た。
「私はサーチャーよ」
櫻さんはサーチャー、ということは敵……
「でも安心して、これは私の推測通りであれば、絶対にみんなは生き残れる」
頭が追いつかない、急なカミングアウトに櫻さんが敵。
「これは…私だけ一般陣営よ、そしてあなたは嘘つき陣営よね」
櫻さんは一般陣営と言っていた人に向かってそう言った。
「私も同じことを考えたわ、どっちか分からなくなるから身を守れるってね」
「でも、アカムラが「それは豆知識じゃないよね、やり直し」って囁いてきたの、きっと嘘つき陣営は嘘をつけばいいから許されたのよ」
「それで昨日の夜、能力を使って砕君の豆知識を調べたの、砕君が分かりにくい嘘をつくものだから」
えっと…どうにか頭を整理しようとしてるけど、追いつかない、いや、追いつかないというより認めたくない。
「ということで、今回は私に投票して」
櫻さんはそう言うと椅子に座った、目線を横にすると日向ちゃんは机に顔をうずめていた、肩が細かく揺れている。
砕は何かを発することも無くぼーっとしている。
「日向、これはしょうがないわ、ここはそういうステージだったの、誰かが犠牲にならないと救われない」
櫻さんは日向ちゃんの頭を撫でながら言った。
「砕君と稗田君、日向は任せたわ、急だけど私はここで…」
「待てよ、急なんだよ、何言ってんだよ」
砕が表情も目線も一切変えずに言った、こんな感情の無い砕は見たことがない。
「私もまだ動揺してるわ、でも、仕方ないの…」
「救えなかった……」
砕は苦しそうな表情で下を向いた。
「えっと…重い空気だけど~投票開始しちゃっていいかな~?」
アカムラが割り込んできた。
「みんな、私を投票して、絶対ね、その後に勝利宣言をするのよ」
「嫌だ、お姉ちゃん…」
日向ちゃんは櫻さんの服を掴むとゆっくり立ち上がり、背中にくっついた。
「落ち着く…落ち着くよぉ……」
日向ちゃんは震えた声で言った、その2人の姿はまるで、最初に会った時の様だった。
「そうね…私から最後に一つだけ言いたいことがあるわ」
櫻さんは反対を向き、日向ちゃんの肩を持った。
「あなたは何があっても自信を持ちなさい、自分を保ちなさい、あなたは強い子よ」
「じゃあ~投票の結果を…」
「ちょっとだけいいかしら」
「はいはい~少しならどうぞ~」
櫻さんは砕に近づくと、耳元で何かを囁いた、内容は聞こえないけれど少し長めだった。
「じゃあ、稗田君、あなたには私の過去を少しね」
「私とあの子は双子、それで小さい頃から2人で子役として活動していたの、でも何故か私が注目されることが多かった、理由はあの子は人見知りだから現場だと思うように喋れないから演技に向いていなかった、私といれば大丈夫だったんだけどね」
「それで私達は大きくなって、親は私ばっかり甘やかしてた、だからあの子は自信を失ってしまったのよ、日向のことを見て!って私も親に言ったけれど、「そんなことない」の一点張り」
「だからね、あなたにはあの子を見守ってあげて欲しいの、私がしてたみたいにね、慣れてくればまたあの時みたいに元気になるわ」
そう言うと、櫻さんは自分の席に戻った。
「では改めまして~発表しま~す」
みんななんとも言えない表情、今まさに自分たちで1人を落とそうとしてるのだから。
「…ということで、全員一致で、落とされるのは櫻~」
他の人もみんな投票したのか……と少しイラッときたけれど、みんなの表情を見ると、全員申し訳なさそうにしていて、責める気にはならない…僕も投票してるしね…
「じゃあ、私はこれで…」
「いかないで…!いや…うん…絶対生きるから、私…」
日向ちゃんは無理やり笑顔を作る。
「心配だわ私、でもみんなが助けてくれるわよね」
「おうぅ!」
砕は少しだけどいつもの調子に戻っていた。
「櫻さん、絶対守りますから」
「ありがとう稗田君、じゃあ、今度こそこれで」
「じゃあ、椅子に座ったまんまで大丈夫~しっかり捕まってね~」
アカムラは櫻さんの椅子を軽く叩いた。
すると櫻さんの下の床が開いた。
櫻さんは笑顔で落ちていった。