#36 4階
このまま見落としが無ければ、絶対に4階にいる。
でもずっと不安に残っているのが制限時間だ、制限時間が切れたらその瞬間に封鎖だ。もし僕が砕を見つけれても、1階から3階までを探してた時点で、制限時間が残り少なくなってるかもしれない。
砕を見つけれても、そこで封鎖は全然ありえる。
絶対に砕を連れて学校を出るぞ。
僕は4階へ上がり、まず教室から見ていった。
1階から3階までと構造は変わらないが、ロッカーとかカーテンの中とか、隠れれそうなところはいくつもある。
…あれ、カーテンが膨らんでる、しかも明らかに大きい、この感じ…砕か?
僕はカーテンへ近づき、バッと開いた、そこには…
「おお、稗田っちか、ここに隠れてるの京には言わないでくれよ」
ジョーさんがいた。
シルエットが砕とそっくりだったから、絶対そうだと思ったのに…
「あ、京だ、くっそ見つかっちまった」
ジョーさんがそう言うと、後ろから足音が聞こえた。
京君だ、すごい涙目の。
「おい京どうした、もしかして見つからなくて怖かったのか?大丈夫だよ、これ遊びなんだろ?」
そうだ、隠れる側はそう思ってるんだった。
「おい、どうして黙ってるんだ?」
僕と京君はミドリックのルールによって口封じされている。
「ん、なんだよ急に引っぱって」
京君はジョーさんを引っぱり、教室を出ていった。
僕はふと学校の外を見た、もう数人が集まってきていた、何人か相方を見つけたらしい。
安心と焦りが同時に押し寄せてきた。
人の安全もそうだけど、僕と砕の心配もしないと。
教室を出て、廊下を歩いていると階段から相方を連れて降りてきた人がいた。
途中で何人かすれ違ったことがあったけど、大体みんなグッドサインでお互いを応援し合っていた。
でもこの人はグッドサインではあるけど、上下にすっごい勢いで振っている。
とにかく頑張れ!ってことだろう、僕もグッドサインをした、まあその人は相方見つけてるんだけどね。
4階の教室を全部見終わり、怪しいと思っていた図書室へ。
図書室へ入ると、1回ミドリック達と見た時より本棚の配置がちょっと変わっている、1つの部屋の隅を隠すように。
僕は真っ先にそこへ向かい、本の隙間から中を覗いた。
「きゃぁ!!あ、稗田君じゃない」
響子さんがいた、あと僕は知らない女の人が2人いる。
「初めてここに人が来たわね、でも貴方の探してる人はここじゃないわ」
響子さんは僕に向かって小さく喋った。
「でも、私たちを隠してくれたのはあなたの探してる人よ、探すの頑張ってね、ってことで早く行って!他の人にバレちゃうから!」
僕は急いでその場を離れ、図書室の中を探した、砕はいなかった。
次は校長室を探索する、でも校長室は狭く、細かく探しても隠れれるようなスペースは無い。
そのまま校長室を出て、次は放送室。
放送室は機材が沢山あり、隠れるにはちょうどいい、でも、砕が隠れれるような大きさの機材は無い、とりあえず部屋の外へ出よう。
探せる場所は全部探した…なのに居ない。
しかも砕は体が大きいから絶対隠れれる場所は少ないはず。
一体どこに隠れてるんだ、砕。
「ジジジ……え~っと~、聞こえるかな~?ミドリックだよ~」
校内放送が流れた、僕達に偽物のルールを説明していたときの喋り方だ。
本当のルールを喋った時とは違う、化けの皮を被ったミドリック。
「隠れる側のみんなにわ~言い忘れてたんだけど~制限時間っていうのがあったんだよね~」
言い忘れてた、か…言わなかった、なのに。
「その制限時間なんだけど、あと10分で終わるよ~だから、隠れる側わ、あとちょっと!頑張ってね~」
嘘だろ、まずいまずいまずい、あと10分?やばい、焦るな、僕、落ち着け。
砕を置いて逃げるか?いや、そんなことは出来ない。
どこか探してない場所…探してない場所は……




