#35ルール
ミドリックはさっきまでと違い、適当な口調で喋り始めた。
「でね~?あいつらは本気で隠れに行ったけど、本当はルールは違うわけ~」
ルールが違う、嘘を付いた訳か。
「探す時には時間制限があるんだわ~、でな~?制限時間を過ぎると、学校は閉鎖される~要するに、死ぬまで学校の中って訳なんだわ~」
本気で隠れろって言ったのは、なるべく不利にするためか、なんて卑怯な…
「制限時間が切れた瞬間、窓とか扉とか、全部がロックぅ~もちろんお前らも学校の中にいたらロックぅ~」
僕らも閉じ込められるのか。
あと最悪なパターンとして考えられるのが、相方を残して逃げるパターン、1番心にくるし、きついだろう。
「で、お前たちには特殊ルールがあるんだわ~、それはな~?学校内に入ったら声出すの禁止~あと、他の人に隠れる側のいる場所を教えるのも禁止~自分のペアは自分で探してもらうよ~」
例えば僕が砕を探してる時に、別の隠れる側の人を見つけても、その人の相方に教えることが出来ない、しかもこれで見つからずに閉じ込められたら辛すぎる…急にきつい内容になってきたな…
「こんな感じなんだわ~、あ、ちなみに嘘は付いてないことが一つだけあるんだわ~」
嘘を付いてない?
「それは、落とさないってところなんだわ~死ぬまで閉じ込めるってことだからね~」
ほぼ同じことだ、なんならこっちは閉じ込めるって知らないで隠れてる人達がいる、こっちの方が悪質だ。
「じゃあ~そろそろ始めるんだわ~」
「もうウコイックには校内放送で、見つかっても他の人の居場所を言わないように伝えたから~、あとはスタートするだけなんだわ~」
ウコイックもこの事に加担してると考えると、なんだかガッカリした、元から優しいと思っていたこと自体おかしかったんだろう。
「じゃ、隠れる側の準備がいいっぽいから~スタートするわ~、俺がせーのって言ったら、「もういいかい~」で頼むわ~で、そっからスタート~」
絶対に砕を見つける…いや、救うぞ。
「「もういいかい~!!」」
僕達がこう叫ぶと、スタートを知らせる効果音が鳴った。
「じゃ、頑張ってな~」
ミドリックはだるそうに手を振った。
正直1階から虱潰しに探していけば必ず見つかるはずなんだ。
…ていうか、制限時間が何分かとか、教えられてないんだけど……
僕は急いで校庭に向かったが、ミドリックの姿は無かった、わざとなのか伝え忘れなのか、多分わざとだろうけど。
うーん、いないなぁ。
1階には僕が隠れやすそうだと思った体育倉庫があったが、そこにはいなかった。
別の部屋も隅から隅まで探したが、まあいなかった。
砕は体が大きいから、部屋に居たらすぐ分かりそうだし、多分1階にはもういないだろう。
2階にもいない、2階は僕が目をつけていた職員室があったけど、そこにもいなかった。
保健室を調べている時、別の人の相方を見つけた、その人は僕を見た瞬間ビクッとしてたが、僕と確認した後に、「うおお、なんだあいつじゃないのかぁ」なんて言葉を漏らしていた。
早く見つかることを願うことしか出来ないのがほんとに辛い、何も声をかけることなく僕は去った。
他のとこにも数人いたけど、変な空気になったりしてた。
3階へ続く階段を上がっていた時、別の人が相方を連れて下へ行くのを見た。
何より僕は安心したが、相方を連れてる人は申し訳なさそうにしていた、僕がまだ見つけてないからだろう。
3階にも砕はいない、でも3階にはまとまって隠れている人達がいた、音楽室のカーテンの中に4人。
砕もどこかで一緒に隠れてたりするんだろうか。
そして4階へ上がる階段、僕は櫻さんとすれ違った、日向ちゃんを連れていた、無事に見つかったらしい。
櫻さんは僕の方を向き、真剣な目で頷いた。
がんばれって意味だと思う。
僕はそのまま4階へ上がった。