#26舞台
軽く道具たちを整理して、気づけば1時過ぎ。
軽くお腹が空いてきた。
「ちょっとアオイックに色々話をしてきま~す」
ウコイックがひょいっと椅子から飛び上がり、部屋を出た。
「おまたせ~」
ウコイックは大きめの木のボウルを持ってきた、中にはクッキーやらビスケットやらが入っている。
「とりあえずこれお昼ってことで許して~」
みんなそれぞれボウルから取っていった。
「んんーー」
みんな美味しそうに食べている、少し温かかったし手作りなのだろう。
「あと、もうみんな準備万端にしておいて~さっきアオイックと打ち合わせてて、すぐ出来るようにしとこうってなったの~」
「道具班は舞台の設置に取り掛かっていいよ~敗者側は僕らの後にやるから、気にせず準備しといてOK~」
僕ら道具班はすぐに道具を持って部屋を出て、まだ何も付いてない舞台に向かった、舞台は僕らの部屋を出てすぐ左にある。
「じゃあ、設置していきましょうか」
「お、稗田っちだっけ?見えないとこでいいから、俺たちの背景置かせてくれないか?」
振り向くと北条さんと他に6人ぐらいが色々物を抱えて立っていた、その中には対抗戦で日向ちゃんと戦った人もいた、表情は明るくはなかった。
「稗田っちで合ってます!ここからは見えないと思うんで、ここの裏とかに置いてください、北条さん」
「ジョーでいいよ、あいつみたいに呼んでくれてよ」
北条さんは少し照れたように言った。
「わ、分かりました、じゃあジョーさん、ここにどうぞ」
「なんか友達の友達みたいな感じで距離がややこしかったからよ、これからは俺らも仲良くしようぜ」
ジョーさんは抱えてた物を置きながら言った。
たしかに砕といる時しか話さなかったし微妙な距離感だったから、仲良くなりたいな。
「よし、じゃ、設置頑張れよ、稗田っち」
「ありがとうジョーさん」
ジョーさん達は敗者側の部屋に戻っていった。
僕らも設置が完了した。
自分で言うのは恥ずかしいけど、上出来だと思う、僕の描いた背景。
南島さんは背景の全体図を担当、僕と緋彩ちゃんは背景の絵を担当して、響子さんは背景の飾りを担当。
「終わったわね、みんなお疲れ様、後は演技を見るだけね」
響子さんが言った。
「部屋に戻りましょうか」
僕達は部屋に戻った。
「お、道具班はこれでお仕事おしまいかな~?お疲れ~」
ウコイックは演技班と一緒にいた、演技班はみんな着替えていた。
「今何してるの?」
一応聞いてみた。
「今はね~最終チェック~、昨日のリハーサルは砕が止めまくってたからほぼ意味ないしね~」
砕は少し悲しそうな顔をした。
今は2時半か…あと3時間半何しようかな。
櫻さんは演技で忙しそうだから話せなさそうだし、うーん。
「ちょっと物入れでも見ないかしら?暇だし、もしアオイック来ても「他に使えそうな道具あるか探してましたー」なんて言えばいいから、ね?」
響子さんは暇そうにしている。
「何か探しますか」
南島さんも乗り気らしい。
「あの、じゃあ私も…」
緋彩ちゃんも…なら「僕も行きます」ってなっちゃう。
僕達は物入れに入った。
僕自身、物入れに入るのは初日ぶりだ。
物入れにちょくちょく出入りしてたのは響子さん、蒼さん、南島さんだったかな。
必要なものはこの3人が取りに行ってて、残った人達はずっと机で作業、それでもうこれ以上いらないってなってから誰も物入れに入ってない。
「あら、これ遊べそうじゃない?」
櫻さんは1枚のコインを手にした、柄は笑顔と真顔の絵。
「じゃあ、この笑顔が表面だとして、今からコイントスするからどっちか当ててみて、行くわよ」
ピンッ
コインは宙を舞い、響子さんの手の甲に乗った、それをすかさず響子さんは片方の手で覆う。
「さあどっちでしょう」
「「表」」
「裏」
あれ、僕だけ裏だ。
「正解は…表!稗田君の1人負けね」
「まじかぁ」
僕は肩を落とした。
みんなは和やかなムードになった。
「他にも遊べるのあるかしらね」
僕達は物入れを探索した。




