死
「おーい、黒い男。どこにいるんだ!殺してやるから出て来いよ。はあ、やっぱりいないか」
僕は森の奥まで来ていた。黒い男は見つからず、適当に探しているのが現状だ。
「明日にするか」
今日はやめとくが、明日は見つけて、殺してやる。僕は諦めの悪い人間なのだ。
⦅するべき償いをしろ⦆
「どこだ!」
見つけることのできなかった黒い男の声が聞こえ、僕は思わず大声を出す。
「あっち、か?」
僕は、黒い男がいるかもしれない方向へ走る。
⦅するべき償いをしろ⦆
「やっぱりあっちか!」
僕は走った。獲物を狙うチーターのように。
「え?」
足元に感覚がない。下は……崖だった。
「うわああああー!」
僕は落ちてゆく。
―グシャリッ―
そんな鈍い音がして、僕は、死んだ。
**********
「ハッ!ここは……」
ここは、僕と黒い男と出会った場所か。
さっきのは、夢?
「グフッ、グヘェ、グエェェェ」
僕は吐いた。汚物を。
「夢にしちゃ。現実感がすげえな」
あれが死、なのか。ったく。吐いたのは久しぶりだな。血や臓物を見て吐かなかったてのに。
「まあいい。黒い男を探すか」
**********
「グフッ、グヘェ、グエェェェ」
また死んだ。これで、36回目か。
僕は何回も死んだ。あれは夢なんかじゃなかった。死ぬたびに、黒い男会った場所に戻ってくる。黒い男を追いかけず、生きおうと思ったが、食事がのどに通らなくて餓死した。
僕はいろんな死に方をした。崖から落ちたり、水中でおぼれたり、餓死だったり、自殺だってした。
でも、死んでも死ぬことはできなかった。
これが、黒い男な言っていた償いなのか。僕にはわからない。
でも、一つ分かった。死は何よりも恐ろしいと。
慣れない。いくら死んでも慣れない。慣れていいものではない。
僕は、黒い男の言っていた、「するべき償い」をしないといけないと、悟った。
⦅するべき償いをしろ⦆
その声が、頭に響き続けた。