始まり
この物語はフィクションです。
ある日、僕の目の前に黒い男が現れた。
その男は黒い面を顔につけていて、黒い帽子をつけており、黒いコートを着ていて、黒い靴を履いていた。
手は、ポケットに入れられており、見えない。
僕はそこから立ち去ろうとしたが、黒い男が僕の肩を掴んできた。その手には黒いビニール手袋がはめられていた。
「何か、用ですか?」
「……」
僕は尋ねた。だが返ってきたのは沈黙だけだった。
すると、黒い男はビニール手袋を外し、僕の顔に手を開いて近づける。その手は、手と言えるか怪しいほど、酷かった。
僕はその影響か、頭がくらくらして意識がなくなったが、一瞬で覚醒した。
「するべき償いをしろ」
黒い男はそう言った。
「何のことを言ってるんだ?」
僕は疑問を持った。
「快楽殺人者、するべき償いをしろ」
「快楽殺人者?それは僕のことを言ってるの?初めて会ったのに、ひどいな」
「拷問126回、殺人未遂0回、殺人126回。するべき償いをしろ」
「クッ。クックック。クアッハッハッハ」
その言葉に僕は思わず笑みをこぼしてしまう。
「よく調べたね。でも少し違うよ。拷問130回、殺人129回だよ」
「するべきを償いをしろ」
「うるさいなあ、まあいいか。殺人129回っていうのは切りが悪かったんだよね。警察だか何だか知らないけど、君が、130人目だ!」
ここは田舎。ほとんど森。見られる心配はない。拷問したい気もするけどそれじゃあ数がちょうどにならない。
ああ、わくわくする。こいつを殺したら、血が出るのかな。内臓はあるのかな。あれ?何で僕当たり前のこと言ってるんだろ。人間だったら血は出るし、内臓もあるににきまってるじゃん。
僕は隠し持っていたナイフを黒い男の心臓に突き刺した、はずだった。
刺されたはずの黒い男は、消えていた。
「消えた?人間じゃないのか?」
⦅するべき償いをしろ⦆
「どこだ!」
僕は黒い男の声が聞こえたので周囲を見渡す。
「いない」
しかし、どこにもいなかった。
「どこに隠れやがった」
その後、もう一回念入りに周囲を見渡すが、やはり誰もいない。
「まあいい。僕が見つけ出して、殺してやるよ」
「人間じゃない相手。殺したらどうなるのか、楽しみだなあ。血、出るのかな。内臓はあるのかな。そもそも殺せるのかな」
「ああ、わくわくする。これだから、殺しは、やめられない」
僕は森に駆け出した。快楽殺人者として。でも僕は知らなかった。これから、僕のするべき償いの始まるということを。