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異世界(あなた)と地球(わたし)は一蓮托生!?  作者: マノイ
第2章 王都騒乱

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24. 【異】王都創立記念祭 3日目 ライアーシープ

 クリスタルから現れたのは真っ白で小柄な羊。

 ただし角の部分の先端が前を向いており鋭く尖っている。

 ライアーシープと名前がつけられているのを、地球側では確認できる。


「あれで突かれたらひとたまりもないな」


 まともに攻撃を喰らってはならないとセネールは気を引き締める。


「セネール、普通に攻撃して感触を教えて」

「承知」


 短槍を手にライアーシープの側面へ回り込み、突いてみる


「メ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!」


 突いたところから血が噴き出て、真っ白な羊毛が真っ赤に染まった。

 攻撃は問題なく通じているようだ。


「それじゃあ私も行くよ!」


 セネールとは逆側に回り込んで剣を勢いよく振り下ろす。


「メ゛エ゛エ゛エ゛エ゛!」


 避けようとしたライアーシープを逃さず側面を斬り、こちら側の羊毛も赤く滲む。


「ケイ、念のため遅くして」

「ははは、はい!」


 ケイまで先制出来たので相手のスピードは遅めだが、ポトフに先制して回復してもらうためにも素早さの調整は重要だ。


「グラビティ!」


 これでライアーシープの動きは遅くなった。

 ゲーム的に差があるのかは分からないが、見た目的な感覚ではあの角をまともに食らってクリティカルという可能性が減ったはず。


 ここまでは順調だ。

 問題はライアーシープがどのような攻撃を仕掛けて来るか。


「みんな、来るよ!」


 鋭い角で串刺しにする気なのか、ライアーシープは怒り狂った目をキヨカ達に向けながらやや前傾姿勢になって唸っている。


 しかしライアーシープはその場から動かず、怒り心頭な雰囲気とは真逆の気の抜けた声を出す。


「メッメメメエ~メメメッメ~」

「え?」


 予想外の行動に唖然とするキヨカ達だったが、レオナが窘める。


『キヨちゃん、油断しちゃダメ!』


 レオナの言う通りに油断は厳禁。何故ならばその声こそがライアーシープの攻撃だからだ。

 独特のリズムを刻むその声を聞いていると、頭が重くなり瞼が閉じてゆく。


「気を付けるよ、レオナ、ちゃ……」

「なん……だ……これ……は……」

「うわああああ!」

「(ぶんっ!ぶんっ!)」


 ケイとポトフは頭を強く振って強力な眠気を振り払ったが、キヨカとセネールはその場に倒れてしまう。


『キヨちゃん!』

「お姉ちゃん!」

「セネールさん!」


 状態異常:睡眠


 羊だから睡眠攻撃が来るかもしれないとキヨカは想像していたが、来ると分かっていても対処出来るわけではない。


 辛うじて睡眠の誘惑を耐えきったのが後衛のポトフとケイであった。これがケイだけであったならばパニックを起こしていたかもしれないが、ポトフが無事だったのは運が良かったのだろう。キヨカが動けないときはポトフは勇敢かつ饒舌になるのだ。


『ポトフちゃん、キヨちゃんを攻撃すれば起きるかも』

「分かった。ケイ、セネールを殴って起こして」

「ええええ!?」

「私達の攻撃なら威力が弱いから大丈夫」


 眠っている人物を起こすには殴るのが定番だ。

 この世界でもその設定が有効かどうかは分からないが、通常攻撃が激弱なポトフとケイならば試しても問題ないだろう。


「お姉ちゃん、起きて」


 ポカリと杖でキヨカの頭を殴る。


「ううーん痛ーい」


 するとキヨカは目が覚めた。

 どうやら睡眠は攻撃によって解除される予想は正しかったようだ。


「セネールさん、ごめんなさい!」


 一方ケイはセネールのお腹を思いっきり殴った。

 ひ弱とはいえ、力を入れていないお腹にパンチを食らわせたらかなり痛いだろう。


 しかし、セネールは変わらず睡眠を続けていた。


「ふわああ、どうやらダメージ量と睡眠解除は関係ないみたいだね」


 キヨカはまだ少しふらつく頭を抑えながらケイの起こし方を見て、自分を起こしてくれたのがポトフで良かったと思った。


 しかしこのターン、キヨカとセネールの行動はスキップされ、ポトフとケイの行動は味方への攻撃で終了した。


 残るはライアーシープの攻撃。

 今度こそ角による攻撃が来るのかもしれないと身構える。

 寝ているセネールに向かった場合は、そのダメージで起きることを祈るしかない。いざという時はリヴァイブの石を使うことも考える。


 ライアーシープは先ほどと同じように突進の態勢に移行する。

 しかしまたしても突撃してくることは無かった。


「ブフォオオオオオオ!」


 その代わりに口から大量の緑色の息を吐き、キヨカ達に浴びせてくる。


「ケホッケホッ何これっ!」


 明らかに吸い込んではダメなのだが、ずっと息を止め続けているわけにもいかない。

 息を振り払いきることが出来なかったキヨカ達はそれを吸い込んでしまう。


「ぎぼぢわるいー」

「う゛う゛う゛う゛」

「な゛んでずがごでー」


 三人は毒の状態異常にかかってしまった。

 眠っているセネールの顔色も悪い。


 全体攻撃:毒の息


 パーティー全体を高確率で毒の状態異常に犯す技である。


「どうしよう、セネールはまだ起きないし、私が攻撃してポトフちゃんにセネール起こしてもらってケイで誰かの毒を回復?」


 次のターンの行動が悩ましく、レオナに相談する。

 レオナは掲示板やコメントを見てすぐに判断する。


『キヨちゃん、毒の回復は緊急時以外は止めよう。何回も攻撃されたら回復手段が尽きちゃう』


 毒消しアイテムの個数もポトフのMPも限りがある。

 四人全員の毒を毎回治していたら攻撃するタイミングが減る上に回復手段もすぐに尽きてしまう。


 幸いにもこの世界での毒のダメージはかなり小さい。

 HP管理もレオナがいれば万全なので、注意して戦えば毒のままでもなんとかなるだろう。


「それじゃあ私は全力でぶった斬るから、ケイも攻撃。ポトフちゃんはセネールを起こして」

「うん(コクコク)」

「分かりました!」


 WP節約のため雑魚邪獣相手ではなるべく使わないようにしていた技を放つ。


「全力で行くよ!断!」


 上段からの全力での振り下ろし。

 今の剣は叩き斬るタイプの剣であるため、力任せの攻撃で問題ない。


 避けようとしたライアーシープの臀部に当たり、ぐしゃりと肉がひしゃげる感覚が伝わって来る。残念ながら真っ二つというわけにはいかなかったが、かなりのダメージを負わせることが出来ただろう。


「ボクも行きます!グラビティインパクト!」


 ライアーシープの頭上から三つの鉄の球が落ちて来て、顔の付近に当たり陥没する。

 着実にダメージを積み重ねられている。


「むぅ……なんだこの気持ち悪さは」

「起きるのおっそーい!」


 ポトフの攻撃によりようやくセネールが目覚めた。

 仕方ない事とはいえ、ずっと寝てたセネールに文句も言いたくなる。


「これは毒……?」


 寝起きのセネールにキヨカが状況を説明する。


「なるほど、眠らせて行動不能にしてから毒攻撃で徐々にダメージを与えるのか。なんという嫌らしい相手だ」

「ホントだよ。ポトフとケイが居てくれて助かったね」


 もしこれが脳筋だらけのパーティーだったならば、味方を殴り起こすときに大ダメージを与えてしまう。起こすのに適した攻撃が弱い仲間がいたことはキヨカの言う通りラッキーだったのである。


 そしてこのターンのライアーシープの攻撃。


「ブッフォオオオオ!」


 ライアーシープは両足を地面に打ち鳴らした。

 するとその衝撃が地面を伝わってキヨカ達の足元へと到達し、よろめいてしまった。

 ケイは倒れてしまったが、スタンというほどでもなくすぐに立ち上がる。


「何今の?」

『ちょっとだけダメージ受けてるよ』


 足元が痺れるような感覚はあるが、雑魚邪獣の攻撃よりも遥かに弱くケイですら問題なく耐えられる威力だ。


 何か特別な効果があるのかと思ったが、特に変わったことも無さそうだ。


『ちょっと相談してみる』


 レオナ達が考えている間、キヨカは自分の判断で行動内容を選択する。

 選択と言っても、全員が起きている間は全力攻撃か体力が減って来た仲間の回復で、寝ている人がいる場合はポトフかケイが殴り起こすだけのこと。


 そうしてしばらく戦闘を続けていたが、ポトフとケイが同時に寝てしまった。


「どうしよう……」


 可愛らしいポトフとケイを殴るなどキヨカに出来るわけが無い!

 という意味もあるが、攻撃力の意味でも殴るのは危険が高かった。

 殴っても起きずに毒によるダメージが積み重なったら一気に体力が危険ゾーンへと突入するからだ。


『キヨちゃん、二人は放置で攻撃すれば良いと思う』

「そうなの?」

『うん』


 とある理由により、体力が半分を切らなければ放置で良いというのが地球側の考えであった。


 ポトフが起きていた時にヒールはこまめにかけているので、残り体力に不安は無い。

 怖いのはあの角による突撃だが、ライアーシープはまだ一度もそれを使ってこない。


「メッメメメエ~メメメッメ~」


 レオナの言葉を信じて攻撃を選択したキヨカとセネールだが、攻撃後に次のライアーシープの眠りの歌で寝てしまう。これで四人全員が眠りに落ちてしまった。後はライアーシープが好き放題。キヨカ達の大ピンチだ!


「ブッフォオオオオ!」


 地団太による全体極小ダメージ。

 これによりケイを除く三人が目を覚ました。


 ライアーシープは中ボスではあるがハードモードのボス戦では無い。

 もしライアーシープに地団太攻撃が無い場合、運が悪いと全員が睡眠状態のまま毒で体力を永遠に削られ続けてしまう可能性がある。

 そうなると睡眠に耐えられるかどうかの単なる運ゲーとなってしまう。


 このバランス調整のために用意されたのが地団太攻撃ではないかというのが地球側の見解であった。この攻撃により起きる可能性が高くなり、理不尽な詰みの可能性を減らしているのである。


 おかげでというべきか、このまま余裕で倒せそうな流れで戦闘を継続していたキヨカ達であったが、ライアーシープが瀕死になると状況が一変する。


「メ゛エエエエエエエエ!」


 ライアーシープが大鳴きすると、血で赤く染まっていた羊毛がシルバーに変化する。

 その効果は、防御力の大幅アップ。


「かったーーーい!」


 その硬さはキヨカの最大威力の断を使っても傷一つつかないほどだ。


「セネール、サンダーお願い」


 それならばと魔法で攻撃を試みる。


「これでトドメだ、サンダー!」


 バチバチと電撃がライアーシープを纏うが弾かれる。


「ええ、どうしろっていうの?」


 ケイのグラビティインパクトも、その他の技も一通り試してみたが効果が無い。

 時間経過で解除されるのかと思い耐えてみたが、そういうわけでもない。


 こちらの攻撃手段がまったく通じず、余裕だった戦闘が一気にピンチに追い込まれてしまった。


『うう、解決案が見つからないよぅ』


 レオナも掲示板で必死に相談するが、解決案が見つからない。

 このままでは毒のダメージで負けてしまう。


 キヨカは長く続く毒の気持ち悪さが限界に達しようとしていた。


「早くこの毒を治したいのにーーーー!」


 その叫びに呼応したのかどうかは分からないが、羊の後ろから巨大な甲冑が出現する。


「ちぇええええい!」


 それは二メートル近い高さの全身鎧の人物であり、手に持つ巨大な戦斧をライアーシープの胴体に叩きつけて両断した。


 結局、ライアーシープは一度も突進攻撃を使うことなく倒されたのだった。


隠し設定

 ライアーシープはどれだけ強い攻撃を受けても必ずHPが1残ります

 その間に主人公側のHPが規定値を下回ると甲冑が現れるイベント扱い


 また、突進攻撃はフリだけで設定されてません。ライアーという名前の由来はここ。


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