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JKメイドは思いを告げたい。  作者: いなり寿司
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約束andメイの過去

「買い物に行来ましょう!」


この一言は私の中でデートに誘ってるつもりだった。デートにいきましょう!と、たった3文字違うだけなのにデートという単語は私にはハードルが高くかんじられる。


「買い物?なら、いいよ?」


その一言を聞いた瞬間、私は本当に、本当に嬉しかったのに……


私は、すぐに分かった。表情に恥ずかしがっている様子はないし、慌ててる様子もない。これは、勘違いしてるんじゃないの?と。


多分、シュウジ様は私の事は女として見てる!ただ、致命的なほどまでに鈍感なだけ、絶対そうに違いない!


そんな感じで、いろいろ考えていたらシュウジ様はいつのまにかカレーを食べてしまっていて、2階へ戻ってしまった。


「少しくらい、勘付いてくれてもいいのに」


そんな泣き言を言いながら、私は皿を洗い片付け終わったころには時刻は、10時過ぎになり全ての家事が終わるとお風呂を借りて湯船に浸かり、ボーッとしていた。


静かだ...。

初バイトで少し気合を入れすぎたせいか、足腰が筋肉痛だ。


「筋肉張っているなぁ...これボディービルダーみたいな筋肉の付き方しないよね?」

太ももを軽く揉んで確認するが、若干固くなっている。

メイはため息を吐き、肩を落とす。


「朝早く起きないといけないし、筋肉痛になるしで散々だなぁ。でも...楽しい。」


喋ると風呂の中に響いて徐々に小さくなり、そして消えていった。

前とは違った生活。話し相手がいる生活。好きな相手と一緒に暮らせる生活。

本当に幸せだ。


◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇


ここに働きに来るまで私は、一人で暮らしていた。

私が中学三年生になった頃、両親は私を置いてこの世から旅立った。


それからというものの、家に帰っても話す相手も居なかったし、一緒に食べる相手も居なかった。

コミュニケーションをとることが実が手だった為、友達と呼べる人はおらず、休日は読書をするか散歩の二択だった。

そして、何をするにも一人だった私は声を出す機会はなくなった。




ある冬の日、いつものように読書をしていると、玄関のチャイムが鳴った。

何かの勧誘だろうか?

私は、ドアのチェーンをしっかりとかけていることを確認して

少し開けたドアから訪問者に尋ねる。


「どちら様でしょうか?」


そう聞くと、その訪問者は顔を見せてこう答える。

「わたしは、羽山浩介というんだが江藤メイさん...で合ってるかな?」


ドアの向こうに立っていたのは中年のおじさんが立っていた。裏のない笑顔を見せ、私を怖がらせないように優しい声で言う人だった。

なんで私の名前を知っているんだろう?疑問をもった私は、少し怖くなってドアをゆっくりと閉めようとした。


「ちょ、ちょ、ちょ!私は、君のお母さん、そう江藤加奈さんの友人だったんだ。向こうがそう思ってたかは知らなけど...」


「お母さんの...?」

お母さんの本名を言い当てたその男は話を続ける。


「お母さんのことは本当に残念だったね...もし良かったら、バイトをしてみないかい?僕はもう少ししたら、海外に出張に行かなければならないんだ。出張は、1週間や2週間じゃ終わらなくてね。2ヶ月、いや1年になるかもしれないんだ。その間、息子がちゃんと生きていけるか心配でねぇ。」


「は、はぁ…」


なんて唐突なアルバイトの勧誘なのだろうか。


「そこでだ、息子の面倒を見てやって欲しいんだ。給料だって払うし、もし気に入ってくれたならそこで住んでくれても構わない。」


「でも、私。その息子さんについて何も知らないし…」


正直、怪しさ全開だった男性の話に私は戸惑った。

少し表情に出てしまっていた。


だが、男性はそんなことは全然気にせず、ポケットから一切れの紙と写真を取り出して私に言った。

「これ、うちの住所と息子の個人情報と顔写真。気が変わったりしたら、いつでも連絡してね。じゃあ、お邪魔しました。」


そう言い、男性は一礼すると家の前に止めた車で去って行った。


「怪しい。」


息子の情報を簡単に提供する親がいるのかと少し呆れた。


けれど、両親の遺産で暮らしていくには正直不安に思っていたし、自分である程度稼がないと両親に申し訳ない。

そんな気持ちから私は、一度男性の息子を見てみようと思った。


「今度の休み、見に行ってみようかな」

これが、事の全ての始まりだった。

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