ライバル出現
「やってしまた!」
そう。この男、羽山 シュウジはやってしまった。
感情がこみ上げて、咲先輩の前で涙を流してしまうという失態を起こしてしまったのだ。
しかも、抱かれて慰められてしまった。
「咲さんは口が堅い人だから、他の人に知られる心配はないけど...男として恥ずかしいところを見せてしまった。」
学校から帰る途中、事故が起こった公園に立ち寄ってベンチに座り、一人ぶつぶつと後悔をつぶやいていた。
猫背で下を向き、視界に映るのは自分の影と、太陽によって暖められた地面。それらを見て独り言をつぶやく。他から見たら、この上ない人生負け組感を、かもし出していることだろう。
「こうしてると、現実逃避できてる気がする。でも、こんな怪しい格好でいたら通報されちゃったりして
。嫌々、まさかな。ここに来たのはメイさんの服をとりに来てるのに事情徴収とかされたら探す時間なくなるじゃないか。」
メイさんの服。それは、僕がプレゼントした服のことだ。メイさんが、子供を助けようとしたときにどこかへやってしまったようだった。
昨日の手術後、メイさんのもとに荷物を持っていく際、ないことに気づいて探しに来たのだが、見渡す限りそれらしきものはなかった。
「探すか...」
仕方がないこととはいえ、何気にショックだなぁ。
肩を落として落ち込んでいると、突如聞き覚えのない男の声が僕に向かって話しかけてきた。
「あの、少しいいかな?」
「すみませんでした!!」
僕は今、人生で最も綺麗な土下座をしたかもしれない。5本の指先は平行にして綺麗に伸ばし、さっきまで猫背だった背中をこれでもかという程まで伸ばした。ふっ、完璧だ。刮目してひれ伏せよ。
あっ、ひれ伏せてるのは僕か。
「ごめん、全然この状況に理解できないんだけど...。とりあえず顔をあげてくれないかい?」
いきなりの土下座に困惑する男は、顔を上げるように言う。
はっ、警察だと思って謝ってしまった。我に返り、伏せた顔を徐々に上げる。
おかしい。顔を上げるにつれて目が開けられなくなってくる。
なんなんだこの光は!
シュウジは、眩しく照りつける光に|抗いながら顔を上げていく。
そして、ようやく顔を見ることができたと思ったら、そこには僕の敵が立っていた。
「な、なんだと!?イ、イケメンだぁあとぅうー?」
僕を眩しく照りつけるのは、イケメンオーラだった。テレビで見るような俳優並みの顔は、なんだか僕を不愉快にさせる。
別に、嫉妬とかじゃないんだからね!
「ぼ、僕に何か用ですか?」
「うん、聞き間違いかもしれないんだけど、さっきメイさんって言った?もしかして、君。江藤 メイさんの知り合いかい?」
「は、はい...そうですけど」
南暗高校の制服を着たこのイケメン。
こいつは何者だ?