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JKメイドは思いを告げたい。  作者: いなり寿司
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事故後

自己犠牲。それをすること自体は、僕は悪いとは思わない。

自分の感情よりも相手を優先する。まるで、アニメに出てくるような主人公のようでかっこいいじゃないか。


だけど、それには限度というものがあるだろう。


その限度を超えてしまえば、それはもう人間の奴隷だ。


彼女は、まさにそれだ。自分よりも幼い子が命の危機にさらされていたら、助けようとするのは共感できる。でも、自身を犠牲にっていうのはどうしても僕には理解することができなかった。。


「メイさんのバカ野郎。」


その言葉を救急車の中で、他の人に聞こえない程度で呟いた。




事故発生後、市内の総合病院に運ばれたメイさんは約4時間半という長時間の手術が行われ、なんとか命を取り留めることができた。


「安心してください。もう大丈夫です。」


メイさんが轢かれ、医者の言葉を聞くまでずっと緊張感に見舞われる時間を過ごしていた。そのせいか、緊張から解かれると全身に軽い痙攣が起きる。


ずっと全身に力を入れていたから筋肉が強張ったのか、睡眠不足なのか。それとも両方なのか、はっきりとわからない。


僕は、手術後にメイさんが運ばれたという個室へと向かう。

まだ、数日は目を覚まさないと伝えられたのに一目見ておきたいと思い、向かった。





室内には、包帯が体のあちこちに巻かれたメイさんが寝ていた。

顔色は若干紫になっていて、血の気がない。

こんなメイさんは見たくなかった。冗談を言ったり、無邪気に笑う姿。そういう姿をいつも見ていただけに、今のメイさんの様子は見るに堪えなかった。


これが夢だったらどれほどよかっただろうか。傷がない健康な彼女を見ることがもう一度できる。こんなつらい思いもしなくて済む。


そう強く思うが、時間は刻々と過ぎていくだけだった。


ボーっとしていても何も変わらない。天気も、場所も、気温も、そして彼女も僕も。

「帰ろう」

僕は、おとなしく帰ることにした。



◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇



「聞いたよシュウくん。昨日会った子が君の身の回りの世話をしていることと...その...事故にあったことも。大変だったね。」


昼休みの放課後、咲先輩に呼び出され屋上に来ていた。


「咲さん、あの...用件って。」


僕は、用件を聞くことを急いでいた。いや、誰かと話すことを極力避けていたのかもしれない。

目の前で、起こった事故。目の前で血まみれの状態で倒れる人の姿が思いのほか、僕の精神にダメージを与えていたのかもしれない。

今は、一人でいたい気分だった。


「すまない、そうだったね。じゃあ、単刀直入に聞くよ。君は、江藤さんがとった行為をどう思っている?」


「僕は...」


間違っていると思っているとは言い切れなかった。昨日は、何をバカなことしてるんだよなんて思っていた。けど、考えるたびに思ってしまうんだ。


メイさんの行為は本当にバカなことだったのだろうかと。


自分の命を軽く見ているような行動はバカなことだ。だけど、メイさんが助けなかったら、助けた子は死んでいたんじゃないか?メイさんが動いたことで2人助かったんだし、結果だけを見れば正しい行為だったんじゃないかと。


だから僕は...


「分からない...です。最初はバカなことをするんじゃないと、メイさんの行為を否定しました。でもそれは、メイさんに元気な姿で隣に居続けてほしかった、一緒にいると居心地がよかったから、否定したんだと思います。でも、その行為が正しいとも思えない。」


目から出そうになる雫を必死に抑えながら、僕は青空を見上げる。


「何が正しかったんですかね。」


否定することも肯定することも選ぶことができない。

そんな迷い、悲しむシュウジを咲は見て動き出す。


「あの子には敵わないな...でも、私も負けるわけにはいかないんだ。」


つぶやく咲は相馬に近づき、強く抱きしめる。

シュウジを一人で悩ませない、私がいる。そう主張するように。


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