〜恋を縛る権利、あなたにあるの?〜
…いつからだっただろうか、俺はいつからこんなに危ない道を選んでしまったのだろうか。
先生と一緒に逃げてきて、こんなボロアパートに落ち着いて、もう2年も経つ。
「ねぇ、先生?」
「ん?どうしたの?」
「先生は今、幸せですか?」
「…ええ、とっても。」
高校生活というのは本当に退屈なものである。
漫画やアニメにあるようなラブコメ展開は実のところほとんど起きないし、入学早々童貞を捨てるなんてもう論外。
そんな退屈な高校生活を上手く自分を誤魔化して、楽しんでいるように見せかけること早2年。
俺はいつの間にか高校3年生になっていた。
本当に毎日があまりに退屈だと、楽しい時と同じように時間の過ぎるのが早く感じてしまうらしい。
俺が高校生活で得た知識なんて授業を除けば本当にこの程度だった。
高3にもなれば悩むことなんてひとつしかない。
「はぁ…進路どうしようかな…」
「ワイはもちろん岩代先生と結婚するんご!」
「お前には無理だろ…」
「なんでそんなこと言うんご!?試してみなきゃわからんご!!」
さっきからんごんごとうるさいこいつは俺の数少ない友達の恵田んご丸。
かなりのキラキラネームだと思うのだが本人は気に入っているらしく、語尾にいちいち『んご』をつけてくる。
どんなキラキラネームでも本人が気に入ってるとなると呆れて馬鹿にするやつも居らず、平和に過ごしているようだった。
「綾翔は好きな人とかいないんご?」
「うちの学校の顔面偏差値低すぎて話にならん」
「確かにあるんごね。面がよくても中身はスカスカ、みたいなやつしかいないんご。そりゃワイみたいに先生を好きになる人しかいないわけんご!」
「まあ全てのやつがお前みたいな価値観とは限らんけどな」
先生。多くの学生にとって、先生ほど疎ましい存在は無いだろう。
やれ課題をやってこいだの授業は寝るなだの赤点は取るなだの…とにかく先生という生き物は見たくない現実ばかり見せてくる。
だが見たくないものに蓋をし続けるのもダメだということは皆分かっているので結局従うしかない。
ここら辺が先生が嫌われる理由なのだろうな。
ただ、世の中には沢山の種類の人間がいることも忘れてはならない事である。
いくら嫌われがちな先生という人間の中でも、生徒に好かれる先生というのはいるものだ。好かれる、というのは『人間的に』とかそういう意味ではなく、『異性として』である。
実際、クラスの女子がイケメンなのに独身であると噂の葛城先生に告白したという話を聞いた事がある。
しかしながら、先生という立場は厳しいもので、そういった生徒との恋愛の類は全面的に禁止されているのである。
そう、それは『禁忌の恋路』なのである。