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洞窟の地下にあるもの

※オウガ視点です

翌日、洞窟の地図と念の為の一週間分の食料×3を持ってあの隙間の元に訪れた俺たち。キールは『よるめ』という不思議な目らしく暗闇でも見えるらしいが、俺やガルマン様が全く暗闇に適応できていないのでガルマン様に火を灯してもらった。小さく、されど強く光を放つその火に、俺は少し興味を示した。なぜだろう、光には特に興味が湧く


そんなことを考えながらガルマン様の持つ地図を見て進んでいると、どこからとも無くカチカチというか、カタカタというか、そういった音が聞こえてきた。気配からして魔物であると分かり、俺の眉の間に力が入る。それを悟ったガルマン様とキールは戦闘態勢に入った


「カタカタカタカタカタカタ」

「ほぅ………魔物だったか」


ガルマン様はそう言うと火を手放した。消したわけではない。ただ宙へと灯したのだ。それはさながら、どこかで見た『ひとだま』に似ている


「火球!」


ガルマン様が骸骨兵士に掌を向けて呪文を唱える。その魔法を見て身体中にゾクゾクと得体の知れない高揚感を感じていると、気付けば呆気なくバトルは終了していた。なんだろう、この……胸の中が熱くなる感覚は。俺の竜人としての本能なのだろうか


「えっ、いつその魔法覚えたの!?僕知らないよ!?」

「魔獣狩りしてる時に火の粉使ってたらいい案が浮かんでな。火の粉の格段上の魔法ができたみたいだ。多分中級くらいには載ってるんじゃないか?」

「えぇ……僕も頑張らなきゃっ!」


キールはガルマン様から教わり、意気込むようにグッと拳を握るとナイフを取り出しそのまま進んでいく。俺もさっきの炎が気になったのでずっと服グイグイ引っ張って意思を示した。それが伝わったのか「帰ったら教えてやるから」と言われ、嬉しくってしっぽが言うことを聞かなくなった。単純だと笑われようと構わない。この人を俺は尊敬している、だからこそ教わる事に喜びを感じられるんだ。理解なんてされなくていい


なんてやっている間にもどんどん奥へと進んでいく。地図通りならば、今は亡き父母が教えてくれたかの竜人の聖地に行き着くはずである


……父母の事は、話は思い出せてももう親の顔は思い出せない。最初こそ悲しんだが、ディストピア(この場所)に来てそんな余裕もなく呆気なく消えていった


それに、今の俺には守るべき大切な人がいる。憧れて止まない人が、そばに居る。俺はこの人とずっと傍に居られればそれでいい、それだけで充分なんだ。だから、俺は強くならなければならない。弱くては足でまといになり、守ることなんて出来やしないと知ったから。俺の種族は子供のうちは自分の実力と共に成長も早くなる。俺の今の姿は実力が上がった証だが、油断はできない。ガルマン様より強くなければ、意味が無い


「ガルマン様」

「どうした」


俺は何かの気配に気づき足を止めさせて指を指した。暗くてよく見えず、ガルマン様が宙に浮かしていた火を向けようやくみえた。そこには重苦しく佇む巨大な扉があり、扉には古代の竜が彫られていてここ竜の聖地なのだとわかった。あぁ、俺はやっとここに来れた。竜人の誇る、我が先祖の聖地に


「これどうやって開けるんだ?」

「んーっ……はぁ…駄目、あかないよぉ……」


非力なキールでは無理だろうと少し思ってしまったが、ガルマン様がやっても無理そうだと扉の様子からして思う。所々色が赤より茶色に近い色に変色している部分があるが、それでも重々しい雰囲気は変わらない


俺は胸を高鳴らせながら扉に手を着いた。力任せに押してみるも、反応がない。少しばかり落ち込み手を離したが、ふと記憶の中からめぼしいものが蘇る。そうだ、ここは確かに竜人の聖地だ。でも、竜人の()()なのだから……


「オウガどうした?属性魔法散らして……」

「……気づいた。ここ、竜のみ、開けれる。父母、言ってた」


ガルマン様への言葉に返事とも呼べぬ言葉を紡ぎ、そのあとボソリと「試されてる」と呟いた俺は眩い光を放ち竜のへと姿を変えた。これは俺への試練だ。ここがどんな場所であるか知っているからこそ、俺はそう確信づいて言える。いや、正式には俺だけの試練ではない。竜人皆、ここを訪れれば試練が与えられるだろう。そう、ここはとあるものを得るための試練の場……その、最初だ


『試されてる……想い、力、全て……』

「……キール、ちょっと退くぞ」

「えっ、でも……」

「ここは竜人に関するなにかだ。他種族が関わるものじゃないかもしれん」

「わ、わかった……」


ガルマン様がこの場所のことを少しばかり理解してくれたのかキールを下がらせてくれた。やはり俺はこの人についてきて良かったと、拾われてよかったと思いながら目の前の扉を睨みつける。今度も力任せに扉を押すが、残念ながらビクともしない。どれだけ押してもどれだけ想いをぶつけても、何も変化はない。ここは、どんな試練なんだ?それさえ、それさえ分かれば……


『開けっ…!開いてくれ……!』


俺に余裕がなくなっているのは分かっていた。でも、ここを突破しないことには中に入れない。中には竜人の先祖である()()について描かれた壁画があると聞いているが、それ以外にも何かあると俺は分かっている。分かるのだ、ここに来たからこそ。ここで試されていることを俺が全てこなせば、何かが手に入る。それがなにかはまだ分からないのに、俺はそれが俺にとって必要なものだと思っている。俺は、力が欲しいんだ。彼をも超える力が……それが異端と呼ばれるものでも構いはしない。守る力として、俺は欲しい


「……すまんオウガ、ちょっといいか」

『?』


ガルマン様が話しかけてくれて少し嬉しく思いながら大きな体を動かした。ガルマン様は掌くらいの大きさで、俺の成長具合がうかがえる


「……オウガ、魔法の書を読んでいたよな?」

『読んだ』

「魔法の書には魔法以外にも魔法を使う器具の事も少なからず載っていたはずだ。思い出せ」


ガルマン様の言葉に昨日や今日見た本の内容を記憶内で辿る。最初は属性の事だった。下級の魔物には持ちえない、その体の宿す魔力の属性の事や質、その魔力を用いて魔法や魔法器具を使うことなど。だが、これがなんのヒントになるのだろう


『……!』


扉を見ながら考えていると、俺はとある模様を見つけた。それは驚く事に魔法の書に載っていた、属性を表す紋章だった。模様を辿ると全属性が描かれていることが見てわかる


俺はそっと両掌に魔力を集めた。そして、そのまま扉に手を着く。力を込めずとも扉は重々しい音を立てて開いていき、俺の喜びは最高に達した


『ガルマン様……!』

「やはり魔法で動くシステムだったか……ただの竜では開けんだろう代物だ。ここはなんだ?」

『俺、詳しく知らない。でも、多分、竜神、関連してる』

「竜神?ふむ……」


考え込む仕草を見せたガルマン様は扉を奥を見つめた。そして一言、驚きの言葉を放つ


「よし、オウガ一人で行ってこい」

『!?!?』


言われた事が少し理解出来ず、ガルマン様にずいっと鼻先を突きつける。ポンポンと叩かれるとGOサインが出された。この人は俺一人で行けと言うのか?俺は、この人とずっと居たいのに


「魔眼で見たが、扉の間に変な魔法陣がある。これは多分竜のみが入ることの出来る場所だろう。それも、竜人ではく竜の姿でだ。試しにやっても構わんぞ」


そう言ってガルマン様は俺の足をすり抜け扉に近づく。そっと腕を伸ばした彼の周りに、一瞬で細かな魔法陣が現れた


「やっぱり私は入れない!オウガ!ここはお前の踏ん張りどころだ!」


そう言いつつ魔法陣から出現する無数の属性を纏った数々の槍を躱していくガルマン様。その動きに隙は無く、追尾する槍を尽く天敵魔法で潰して行った


『……頑張る。いいもの、持って帰る……!』

「よしその意気だ!頑張れ!ちゃんと帰って来るんだぞ!」

『……!』


勢いよく頷き、竜の姿でガルマン様に近づいた鼻先で口付けた。舌を出しベロりと彼を舐めた後、少し名残惜しく感じて途中振り返りつつも、中へと入る。この中のことは、地図でも載っていないけれど……なんとか攻略してみせる。それに、ここに壁画しかないと言うならば帰って来れる筈だ。……それだけとは、考えにくいが

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